小さなきのこ農家が新商品「仁久郎」を発売するまでの道のり
田村きのこ園2代目の川島です。
2024年9月20日に発売する福王しいたけ「仁久郎(じんくろう)」を発表してから3週間がたちました。大変ありがたいことに、知り合いの方、以前から福王しいたけをご愛顧いただいているお客様、また飲食店の方からも反響やお問い合わせをいただいております。
今回は、福王しいたけ「仁久郎」が生まれるまでのお話をしたいと思います。
あるのは最高に美味しい椎茸だけ。ゼロから始まった商品開発。
福王しいたけ「仁久郎」が生まれる種は、2022年4月に田村きのこ園を事業継承した時からありました。自分の人生を変えた福王しいたけの価値はまだまだこんなものではないと継承前から考えていたためです。
田村きのこ園は私と妻(半会社員)、当時はそれにパートが3名の小さい農園です。HPやネットショップ、SNSなどは妻と二人で何とかやってきましたが、商品開発のノウハウはなく、事業継承直後でそれを進める時間もない。あるのは目の前に次々と生えてくる素晴らしい福王しいたけだけでした。
家業イノベーションアイデアソンとの出会い
目の前の椎茸栽培と収穫した椎茸を売り切ることに追われている中、私たちの背中を押してくれたのが、家業イノベーションアイデアソンです。
家業イノベーションアイデアソンとは、経営にイノベーションを起こそうと奮闘する家業後継者が、一般参加者からアイデアを募り、経営課題の解決や経営の改革に取り組むプログラムです。
私は第三者継承なので、家業後継者ではありませんでしたが、幸運にもお声がけいただき、参加することになりました。
全5回のプログラムの中で、我々は「秋の収穫最盛期の椎茸を直売で売り切るには?」というテーマで参加者の方々からたくさんのアイデアをいただきました。
普段はほとんどのことを妻と2人で考えている中で、たくさんの方と田村きのこ園の今後について考える経験はとても新鮮で、その中で秋限定の商品を作るアイデアもいただきました。
思わぬ形で心に秘めていた新商品開発に向けて背中を押していただき、一歩目を踏み出すことができました。
株式会社TUMMYによるブランディング
様々なアイデアをいただき、初めはこれまでと同様にまずは妻と2人で新商品について考え始めました。しかし箱のサイズと中に入れる椎茸の規格を決めたところで、大切なことに気が付きました。自分たちが信じている福王しいたけの価値を正確に伝えるには、プロの仕事が必要であるということです。
ブランディングに必要な価値の深堀り
まず初めに行ったのが、田村きのこ園、そして福王しいたけの価値の深堀り。ブランドを作る際に最も大切な核となる部分です。まずは私自身がインタビュー形式で福王しいたけの良さや想いを聞いてもらい、整理してもらいました。
そして、福王しいたけをすでに何度も買ってくださっているお客様にもヒアリングを行いました。
お客様への詳しい聞き取りはこれまでやったことがなく、どうして数ある食品の中から福王しいたけを何度も購入してくれているのか、今回で初めて知ることになりました。じっくり時間をかけて田村きのこ園や福王しいたけの良さをお聞きし、言語化することができました。
両想いになりたい相手を考える
次に今回の商品をどのような人に届けたいかを考えました。TUMMYのブランディングでは、「ターゲット」や商品を「買わせる」といった表現しません。福王しいたけに価値を感じ、共感してくれる「両想いになりたい相手」の姿を思い描いていきます。もちろんこちらから購入者を限定するわけではありませんが、届けたい相手が決まらないと、そこに届くメッセージを発することもできません。ここでも新商品を作りたいと思った理由や福王しいたけに対しての想いをお話ししながら、その姿を思い描いていきました。
それをもとに、商品の世界観や方向性、価格などが決まっていきました。
私一人では思い付きや「なんとなくこれがいい」という感覚だけで決めてしまいそうですが、綿密な価値の深堀りと届けたい相手を鮮明にすることにより、理論に基づいたよりよいデザイン作成の基となる商品コンセプトが出来上がりました。
プロの技が光る。大興奮の写真撮影
大きい椎茸があるうちに写真は撮らねばと、昨年12月に 東京代々木にある食品撮影キッチンスタジオ 「PUNAフォトキッチンさん」に撮影いただきました。
デザイナーたまさん(紹介記事:https://aiyueyo.jp/12095)が撮影ディレクションに入り、フードスタイリングには、昨年福王しいたけでフルコース料理を作ってくれた みーるちゃん(紹介記事:https://aiyueyo.jp/9460)が入ってくれました。 たまさんに事前に作成いただいた写真イメージに沿って撮影が進みます。 まずは食器や野菜を置いた状態で何枚も写真を撮り、 実物でもモニターでも確認して調整を重ね、位置や小物を確定。 そうしてようやく福王しいたけを調理し、 ひだの綺麗さ微妙な焼き加減まで丁寧に調整しながら何枚も撮影。 3カットで何枚写真を撮っていただいたのだろう... 「これは本当にうちの福王しいたけなのであろうか...」と 思ってしまう程素敵な写真を撮影いただきました。
デザイン完成!商品名には師匠の名を
商品コンセプトが決まり、ついに箱のデザインも始まりました。商品名は当初別案もありましたが、私の強い思いから師匠の名である「仁久郎(じんくろう)」に決まりました。「仁久郎」の文字は書道家の藤井花香さんに書いていただきました。師匠の堂々と自身にあふれる匠の姿をイメージして、納得がいくまで何度も書き直していただきました。
スリーブには、茨城県常陸大宮市で伝統的な手すきによる和紙を作られている「西ノ内紙 紙のさと」さんに箔の入った和紙をお願いしました。
専用のリーフレットは、たくさんのヒアリングにより言語化された福王しいたけの価値をもとに、ライターの方に言葉を紡いでいただきました。
たくさんのプロの技が合わさり、ついに福王しいたけ「仁久郎」が完成しました。
2024年9月20日。福王しいたけ「仁久郎」ついに発売!
そうして先日8月19日、構想から2年以上かけ、たくさんの方々のご協力のおかげで新商品を発表することができました。
この場を借りて、福王しいたけ「仁久郎」を生み出す手助けをしていただいた皆様には心からの感謝申し上げます。
発売まであと一週間。師匠が遺してくれたこの素晴らしい椎茸をたくさんの人に届けていきます。
ご協力いただいた皆様ありがとうございました!
・家業イノベーションラボ https://kagyoinnovationlabo.com/
・株式会社しびっくぱわー https://civicpower.jp/
・株式会社TUMMY https://www.tummy-inc.com/
ブランディング 成美さん https://aiyueyo.jp/10584
全体ディレクション あっこさん https://aiyueyo.jp/9985
デザイン いくえさん https://aiyueyo.jp/12095
世界観規定・撮影ディレクション たまさん https://aiyueyo.jp/12095
フードスタイリスト みーるさん https://aiyueyo.jp/9460
ライティング なんしゅさん
プレスリリース ももえさん
「仁久郎」字 藤井花香さん