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最近、慢性疼痛への介入について考えている事~その場でできる最高を提供する~

1.はじめに

先日、IASP(国際疼痛学会)において、「疼痛の定義」が改訂されたことを受けて、現在、セラピスト界隈では、様々な議論が活発化している状況ですね。慢性疼痛のガイドラインを見ても、セラピストが持つ手技の多くは「弱く推奨する」ですし、運動療法に関しても、「強く推奨する」とされているものは多くないのが現状です。さらに言えば、今まで「慢性疼痛の原因」として挙げられていた多くのものが、「慢性疼痛」との関連性が低い事が示唆されているレビューも出ています。さあ、私たちはこれから何に立ち向かって、どこに行けばいいのか。それを今回考えてみましょう。

2.どのようにアプローチをすればいいのか?

例えば慢性疼痛のガイドラインにおいて強く推奨されているものの一つに「集学的リハビリテーション」というものがあります。私はそれを、慢性疼痛を訴える対象者について、生物心理社会モデルとして捉えて、関わる様々な職種や分野の「知見」を統合し、多角的に「ヒト」にアプローチするものであると理解しています。現在のところ、効果的であるらしい、という事が分かっています。

しかし、実際に臨床の場で、「集学的リハビリテーション」を展開する為には、どうすればよいのか。その答えの1つが以下に挙げるスタイルだと思っております。それは「その現場における、疼痛に対する戦術(アプローチ)を持つ者(物)、全ての中から、対象者の慢性疼痛を改善するために、適切な者(物)を複数個選択して戦略(プラン)を練る」というスタイルです。

3.そのスタイルって結局どういうこと?

これについて説明させていただくと、例えば私の関わっている施設の1つは、整形外科、内科の医師がいます。消炎鎮痛剤が処方できます。漢方も処方できます。療養計画を立てられる看護師がいます。食事指導が出来る管理栄養士がいます。ゆっくりとお話を聞き不安を適切な診療へ導く受付スタッフがいます。徒手、運動療法を行える理学療法士がいます。適切なトレーニングプログラムを組み、その指導ができるトレーナーがいます。有酸素運動やウェイトマシン、スタジオレッスンができるフロアがあります。この中から、その対象者について具体的なプランを練る為に選択しチームを組んでアプローチを行い、経過をみていくというスタイルですね。
ちなみに、もう1つ関わっている施設があるのですが、そこには管理栄養士がいません。しかし近隣の薬局と提携し、適宜、管理栄養士に出張していただき、栄養指導を行うという仕組みを持っております。

4.利用できるものは適切に利用する!!

私の関わっている施設では、幸運なことにクリニックにしては多くの職種、多くのスキル、多くの物がそろっています。(さらにもっと多くの知見が得られるような仕組みづくりも、検討していく予定であります)ここまで色々なものがあるクリニックは、あまりないのでは?と考えています。

多くの職種がそろっていない現場もあるでしょう。その場合は外注先を探す、自分達で学ぶ、という方針で進めるとよいでしょう。管理栄養士がいなければ、栄養について学んだり、時に講師としてアドバイスをいただく機会を作ったり。トレーナーがいなければ、フリーのパーソナルトレーナーと提携したり連携したり。医師や看護師がいなければ医療施設との連携を密に行ったり。あなたが考え、周りを巻き込んで動いて行けば、いろいろな可能性が見えてきます。自身が動けない時は、動ける人を仲間に入れましょう。

多くのスキルがない場合は、必要なスキルを学びましょう。一人でできることは限られますが、それでも限界突破してやるくらいの気持ちで研鑽すれば、より高いレベルのチームを作ることも可能となるかもしれません。

多くの物がそろっていない場合は、ご自身の現場で導入できる余地があれば、その必要性を訴えて、費用やそれに対する効果も計算した上で上申し、導入を目指しましょう。導入が極めて困難か、不可能であれば、それがあるところと提携したり、連携をとっていきましょう。

集学的リハビリテーションは決して多職種のいる環境だけのものでは無いという事を強く伝えたいのです。ただ、1人で行うことは推奨できません。苦手なものは人を頼りましょう。

このようにして、その場でできる最高のアプローチ作っていけば良いのだと考えています。

4.チームの連携がうまく取れないよ!!

恥ずかしながら、私の関わっている施設でも、このような声をよく耳にします。その都度、以下の文章のような趣旨の事を伝えています。「チームのスタッフとの連携が上手く取れないなら、まずは日常的に積極的なコミュニケーションをとっていきましょう。普段からのコミュニケーションなくして高度な連携が取れるほど、空気を読んで自分から動ける人は多くないです。また、あなただけ、それができたとしても相手、チーム全体でそれができなければ意味がありません。チームの意図と、あなたの意図、他のスタッフの意図、これらにズレが生じてしまうと、それは集学的なものではなく、ただ個別の知見で介入しているだけのものになってしまいます。多くの知見が関わっているのに、好き勝手に介入する。そうすると戦術ごとにギャップが生まれます。対象者もまとまりのないプログラムに困惑するでしょう。チーム全体で、それぞれの背景や個性などをある程度把握できると、高いレベルでの連携ができるようになります。相手を知る為にもまずは、普段から積極的にコミュニケーション取っていきましょう。」


私はこれを非常に重要なものであると捉えていて、これがないと、相手との良い距離間というものを掴めないと考えています。その人のコミュ力や、考え方、動き方、仕事の捉え方、介入に対する意識なども分かりません。始めから関わりを持とうとしないと、その人とどのようにコミュニケーションをとっていいのか、という事も分かりません。そのためにも、「まずは日常から積極的にコミュニケーションをとる」なのです。(※念のため注意書き:ここでいう積極的なコミュニケーションとは、集学的リハビリテーションを高いレベルで実現するためにコミュニケーションであり「井戸端会議」的なものとは若干異なるものであります。)

5.終わりに

今まで綴ってきたように、集学的リハビリテーションを高いレベルで行うことができる場所や施設が増えていけば、慢性疼痛に悩む多くの人たちの人生がより良いものになるかもしれません。そのためには、まず自分と自分が関わる現場の状況を把握しましょう。自分自身には、自分の職場には何があり、何ができるのか。無いものに関しては、これから導入する事は可能か、学べば使えるようになるのか、考えて検討していきましょう。その次に「近隣、地域の社会資源」を探してみましょう。ある対象者において、どんな社会資源が使えるのか考えて話し合いましょう。ある程度の戦術がそろったら、「ある1つの目的」に対して、そこから何をどうすれば、どのように使っていけば、より良い介入ができるのか検討し、戦略を練りましょう。そうして練られた戦略を遂行するために、適宜、関連スタッフで連携をとっていきます。時に「ある1つの目的」の為に、方針を変える必要があるかもしれません。その時にも、普段からコミュニケーションをとっていく事により、円滑に方針の検討が行う事が可能になります。

勘の良い方は、お気づきかもしれませんが、このスタイルって、いわゆる一般的なリハビリテーションの展開と同様のものなんですよね。巻き込む範囲こそ広いですが、いわゆる一般的なリハビリテーションと集学的リハビリテーションって、ほとんど同じである場合が多いと思います。

さらにいえば、職場の業務改善、課題解決にも転用できる考え方でもあります。戦術、戦略が変わるだけで、流れは同じ。このスタイルをどのように活用するかは、まさにあなた次第なのです。
今回の記事は以上となります。お読みいただきありがとうございました。

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