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品質保証概論⑤ 源流管理による品質の作り込み

品質を決める3つの段階

商品の品質について、お客様の要求事項を実現するための活動は次の3段階に分けることができます。

設計品質

商品に対してお客様から期待されている性質のことを「品質特性」と言いますが、これを具体的な数値で表したものは「代用特性」と呼ばれています。また、代用特性は最終的には「規格値」(寸法、重量、出力)に落とし込まれ、実際の図面、部品、商品になっていきます。また、商品に要求される仕様や規格値を総称して要求事項と言います。

例)持ち運びに便利な薄いノートPC(品質特性)
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  最大高さ20mm以下(代用特性)

設計段階で要求される条件は、商品の仕様、性能、外観などについて、お客様が何を望んでいるか、品質特性はどのようなものか、それを代用特性としてどのように設計すればよいかということで、これらを「設計品質」といいます。この品質ならばお客様に喜んで買ってもらえるだろうという「ねらいの品質」という言い方もあります。設計品質は、マーケティング情報に基づいて、企画、開発、設計、技術部門で検討します。

製造品質

設計図面通りに製造した場合でも、材料、部品、組み立て誤差の違いにより、完全に同じ商品を製造することは困難です。実際には、寸法が違う、色味が異なる、などのバラツキが生じます。この製造でのバラツキを管理し、一定範囲内に収めることが「製造品質」であり、「出来栄えの品質」とも呼ばれます。

市場品質(サービス品質)

お客様に商品を買っていただいても、すぐに故障する、故障しても修理できない、修理代が高価である、という状態では、商品の持つ価値を十分に提供していないことになりますし、何よりお客様に満足いただくことは難しいでしょう。商品購入後も所定の期間、商品の機能を維持することも品質のひとつと考え、これを「市場品質」もしくは「サービス品質」といいます。
市場品質を高く保つには、商品の信頼性を上げるだけでなく、アフターサービスの体制も含めて考えなければいけません。

商品をお客様に買っていただき、喜んで使っていただくためには、「設計品質」、「製造品質」、「市場品質」の3つの段階の品質が、高いレベルで保証されていることが必要です。つまり、企業の中では、設計部門や製造部門だけではなく、それぞれの部門が「お客様に満足いただける品質」を考えて、お互いに協力して業務を行う必要があります。

源流管理とは?

源流管理とは、検査で不良品を排除することにより品質保証を行うのではなく、源流段階(商品設計や生産準備段階)から品質を作り込み、後工程での品質不具合を未然に防ぐという考え方です。
また、もし品質問題が発生してしまったら、その要因を前工程(問題の発生工程)にさかのぼって掘り下げ、真の原因に手を打ち、品質問題の再発を徹底して防止していく活動でもあります。

源流管理は、下記の3つの段階で展開されます。
- 設計段階
- 生産準備段階
- 製造段階
特に製造段階の源流管理は、工場の品質改善を進めるために重要になってきます。

例えば、作業の仕方や扱いにくい材料に起因して品質不具合が発生するような場合、単に作業標準を厳しくして対処するのではなく、扱いにくい材料そのものの仕様見直しを検討するなど、製造現場だけの改善視点にとどまることのない根本的な解決を行うことが必要です。

また、現場で設定した基準そのものに問題があるようなケースでは、基準を修正することは当然として、さらに基準を検討した段階に立ち返って見直しを行い、なぜ適正な基準が設定されなかったのかという根本原因について対処し、常に正しい基準が設定されるような管理方式を実現することも必要です。

検査では品質は良くならない

検査を二重にしたり、検査員を複数配置して不良品の流出を防ごうという考え方では品質は良くなりません。検査で見つけた不良品が、どの工程で発生したのか、どんな原因で発生したのか、その発生原因をなくすためにはどのようにしたらよいのかを徹底して考え、根本原因をなくすことが源流管理の考え方ですし、そのように行動して初めて品質を良くしていくことができます。

源流管理を積極的に進めるためには、製造現場における4M(Man:人、Machine:設備・機械、Material:材料・原料、Method:作業方法)の条件と製造品質との関連を理解し、日常的な取り組みとして以下を現場に定着させなければなりません。
 ・4Mを適切に管理し製造工程で品質をつくりこむこと
 ・品質不具合が発生した場合、その発生源対策を徹底すること
 ・設計・生産準備段階から品質不具合の未然防止を講じること

品質の学校miniロゴ(note用)


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