僕の愛した君はいない⑭

布団に入ろうとすると、頭痛がした。彼女はすでに布団で寝ているのだろう。電気を消している部屋が映り、天井が見えた。僕も電気を消し布団に入り、眼を瞑った。


「ねぇ、清水君もう寝た?」
「……いいや、まだ起きているよ」
「そっか、最後になるかもしれないから私の相談にのってくれない?」
「…………僕は、答えを出せないよ。君の話を聞くだけならできるけど、それでもいいなら聞くよ」
「そう、ありがとう。…………でもやっぱりいいや。最後だとしたら楽しい話でもした方がいいしね」
「大空さんが話したいことを話せばいいさ。はたから見れば君はただ独り言を言っているようにしか見えないんだから、僕なんて存在しないように話したらいいさ。相槌くらいは打つからさ。それに最後だと思えば、もう会わないんだし、何を話しても気楽でいいんじゃないかな? もし、そのまま明日が来ても、忘れて欲しいと君が望むなら今日話したことを僕は忘れるからさ」


「そう、清水君は優しいんだね」
「そうじゃないよ。傷つけるのも傷つくのも嫌で逃げでいるだけさ」
「それでも、ありがとう。それから、ごめん。私話しながら清水君に質問をすると思うけど、答えたくなかったら無視してくれて構わないから」
「……まぁ、いつもこんな時間に寝たりしないから、答えられる質問なら答えるよ。ただ、僕は他の人より答えを出すのに時間がかかるから、返答がなかったら先に大空さんが話したいことを話していいよ。僕もすぐに答えが見つかったら話すから」


「そっか、ありがとう。友達が中学の頃の話なんだけどね」
 そう、大空さんは言葉を紡いできた。
「うん」
「……あっ、その前に清水君に聞きたいんだけどさ、清水君にとって友達ってどういう人たちのことを指すの?」
「…………えーっと、友達の定義のことが聞きたいの?」
「うん、まぁそんな感じかな?」
「……ごめん、すぐに答えが出そうにはないから先に話をしてもらってもいいかな? 答えが出たら、話してるときにそう言うから」
「分かったよ。昔中学の頃、人気者の友達がいたんだ。クラスや学年問わず人気で、男子や女子からも人気があったんだ」
「そう」
「その子は、見るもの、触れるもの全てが大好きで、ほとんど例外なく、人間が好きだったんだ。例外があるとすれば、意味もなく敵意を向けてくる人達だけだったんだよ」
「へぇ、僕とは違って人生楽しそうだ」


 僕は、この話を大空さん自身の話と思って聞いている。この手の話の本当の主語は、私のことが多い。それに人物像としても大空さんに近いように感じた。今のクラスでの様子や僕に話しかける彼女と、今話す友達のイメージと似ているなと思った。


「……そっか、そう思うんだね。私もそう思う。彼女は幸せだったと思う。きっと今も幸せなんだと思うよ」
 含ませるような言い回しが、妙に引っかかった。
「その友達に何かあったの?」
「高校入試の半年前くらいだったかな。その友達は、とある男子生徒に告白されたんだけどね、その告白を断ってしまったんだって」
「…………何で?」
「正直、受験のことで精一杯で誰かと付き合う余裕がないって断ったらしいんだ。その男子生徒はサッカー部の元キャプテンでとてもモテていたらしんだ」
「うん」


「だからね、彼を慕う人や好きな人が随分多くいたんだ。本当に多くね……。その中に私が苦手な女子生徒がいたんだ。いつも、誰かを蔑むことで自分を満たしているような人だった」
 やっぱり、この話は大空さん自身の話らしい。


「……その友達に何があったんだい?」
「へっ、あっ友達、そう、その友達はね……、彼の告白を断ったことで、彼女に目をつけられてしまったんだ。告白を断った翌日には、彼女が入っているグループの人間をはじめ、色々な人たちが友達を無視するようになったんだ。きっと、自分が好きな彼を振ったのが許せなかったんじゃないかな? 私にもその友達にも分からないけど……」
「そう」
「うん、それでも友達は気にしなかった。別に彼女にはクラスだけではなく、色々な友人がいたからね。別に女子だけでなく、男子にもいたから気にはならなかったんだ」
「そう」


「だけど、それから二週間もすると、段々わた……友達から離れていく人たちが増えたの。その友達は訳が分からなくなって、今まで話してくれていた人たちに訳を聞いたそうなの。そうしたら、告白を断った男子に命令されて、無視をしていることが分かったんだ。最初は皆、馬鹿らしいって断っていたんだけど、一人男の子がそれでリンチにあったって聞いて、それから、脅しではないことを知って、皆友達から離れていった」


「そう」
「それを聞いた友達は、自分のせいで誰かが傷つくのは嫌だって言って、自分から孤独になっていたみたいなの。当然その中には、最後まで私を守ろうとしてくれている人達もいた。でも、そうやって私を守ることで、その人たちが傷つくのは、私が傷つく以上に嫌だった。リンチにあった彼は、笑って私を許してくれたけど、そうじゃない。私と関わったが為に、誰かが傷つくのは本当に嫌だった。それからわた……友達は、高校をその中学から少し離れた場所に選んだ。その友達は同じ中学の人たちがいないところに行きたかったみたい」


「そう」
「その子は、それから友達を作るのが怖くなったみたいなんだ。深く関わって、自分のせいでまた誰かを傷つけてしまうくらいなら、一人でいた方がいいんじゃないかって……。でも、その子は、とても寂しがり屋ですぐに友達を作ろうとしてしまうんだ」
「そう」


「でも、どうしても昔のことが気になって、前ほど相手の心に踏み出せずにいるんだってさ……。それに仲良くしていても、いつか裏切られるかもって怯えてもいるみたいなんだ。だから、クラスの人たちともどこか上辺で話しているような気がするみたいってさ。……おかしいよね。とても弱くてさ……」


「……そんなことないよ。そんなことはない」
 僕は気の利いたことも言えず、そう繰り返すことしか出来なかった。
「ねぇ、清水君、もう一度聞くよ。友達って何かなぁ」
「……………………ごめん、僕にも分からないよ」
 僕自身も大地君と今も友達でいるのか分からないのだ。そう簡単に答えられなかった。


「そっか、そうだよね。私もこんなこと急に聞かれたら答えられないかも。ありがとう聞いてくれて。少し楽になったよ。それにごめんね、こんな話して。気分が悪くなったのなら謝るよ」
「いいや、いいよ。それにごめん、聞くだけしか出来なくて……」
「ううん、それだけで十分だよ。清水君が悩むことじゃないよ。それは、その子の問題なんだから。もう、夜も遅いね。そろそろ通信も切れるかもしれないし、寝ようか。お互いに今日が最後の夜になるといいね」


 こんな話を聞いて、単純にそういう風には思えなかった。かといって、僕が大空さんを楽にしてあげられる何かも思いつかなかった。どうすればいいかなんてわからなかった。


「……そうだね。……その友達が、心から友人だと思える人が出来て、この人たちが友達だって笑って言えるようになるのを願うよ。……それじゃあ、おやすみなさい」
「…………ありがとう。その友達にも言っておくよ。きっと喜ぶと思う。おやすみ」
 僕は、複雑な心境のまま寝付くことになった。僕は寝る前に何も願わなかった。当然夢を見ることもなかった……。


 ほいな、こんばんみ!!

今日も楽しんで書いていくぜよ。俺の夜明けも近いぜよ。まぁ、気にせんとガンガン書いていきます。物語の人物とひたすらにゴールを目指します。

今日も僕は楽しく過ごせました。補足アイディアも浮かびご満悦です。僕にとって、楽しい一日になったように貴方にとっても最高の日になってくれたらいいなと思います。お互いに夢の為に楽しんで生きていきましょう。



いつも読んでくださってありがとうにゃ。 ゆうきみたいに本を読みたいけど、実際は読めていない人の為に記事を書いているにゃ。今後も皆が楽しめるようにシナリオ形式で書いていきたいにゃ。 みにゃさんが支援してくれたら、最新の書籍に関してもシナリオにできるにゃ。是非頼むにゃ。