テレ東ドラマシナリオ案その3の3
パスワードがわからない話のこれまでの話
黒歴史を消すべく久しぶりにログインしようとしたミクシのパスワードがわからない。手がかりは篠田先輩。が、篠田先輩は異国で事故死していた。そのメールを掘ってみると、そこには動画へのリンクがある。アクセスすると、篠田先輩の電脳体と自称する篠田先輩がしゃべりだす。
〇沢サキ(33)会社員
篠田康生(34)サキの高校の先輩
〇自室(夕)
パソコン画面に出ている篠田先輩の電脳体と会話をしているサキ。
サキ「よくわかんないんですけど、本題にいっていいですか?」
篠田「どうぞ」
サキ「ミクシへ入るパスワードがわかんないんです! 篠田先輩が設定してくれましたよね。確かペットの生年月日とかだったと思うんですけど」
篠田「もしかして……そのために俺を呼び出したの?」
サキ「むしろそれ以外に何が?」
篠田「…………。いや、いいんだけど……俺、ペット飼ったことないよ」
サキ「えええーっ!! で、でも、記憶は電脳体さんとしては先輩と共有してるんですよね。思い出してください」
篠田「記憶は共有してるけど、さすがにそこまで細かいことは本人も覚えてないし、俺も覚えてない」
サキ「どうしてくれるんですか? 私の黒歴史が!」
篠田「黒歴史?」
サキ「……いえ、いいんです。どうにかして思い出してくださいよー。どうしたら思い出してくれますか?」
篠田「刺激を与えれば……もしかしたら……」
サキ「私にキリマンジャロまで電脳壊しに行けっていうんですか?」
篠田「誰も壊せとは言ってない。刺激だよ。そうだなあ。一緒に通っていた高校とかふたりの思い出の場所を巡れば、それが刺激になって当時のことを思い出すかもしれない」
サキ「パソコンもってまわるの重いです」
篠田「アクセスはスマホからでもできるぞ」
サキ「わかりました。お持ちします!」
〇高校
落ち葉が舞う高校の敷地内をスマホ片手に歩くサキ。スマホ画面には篠田。
篠田「懐かしいなあ。あの大イチョウ、まだあるんだ」
サキ「まだ思い出せませんか?」
篠田「そんなにせかすなよ。久しぶりなんだから、感慨深いんだ」
サキ「電脳に感慨深いなんてあるんですね」
篠田「よくできてるだろ? それにしても、うちの高校はとうとう大正、昭和、平成、令和って4つの時代を生き抜いたことになるんだな」
サキ「校舎、古いですよね。赤レンガ作りは好きだけど……え! どうして令和になったこと知ってるんですか?」
篠田「え……」
サキ「だって、先輩が死んだ後ですよ。令和になったの」
篠田「それは……この電脳体はアップデートがあるから」
サキ「凄い……ですね」
篠田「一応、最先端の研究結果を詰め込んだ」
サキ「へー」
篠田「相変わらず、サキは素直だね」
サキ「パスワードはまだ思い出さないんですか?」
篠田「それなんだけど、ほらデートした場所あっただろ? そこに行ったら思い出せる気がするんだけど」
サキ「私、先輩とデートなんてしましたっけ?」
篠田「俺はそのつもりだった」
サキ「そ、そうだったんですね。えっと、先輩と行った場所って……」
そのとき、サキの前に黒服グラサンの男が数人現れて、行く手を塞ぐ。
サキ「な、なんなんですか?」
篠田「やばい。サキ、逃げろ!」
サキ「はあ?」
黒服「沢サキ、お前のミクシのデータを開示してもらおうか?」
サキ「はあああ?」
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