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百物語51話目「ゲシュタルト療法」(実話怪談)

私はパートを辞めてフリーランスになった年に、産業カウンセラーの学校へ通った。無事に資格も取得し、上級カウンセラーのためのワークショップを受けてるときに「ゲシュタルト療法」も受講する。

二日間にわたるワークショップは大変貴重な体験だった。

エンプティチェアという方法を使うんだけど、問題を抱えてる人を椅子に座らせた態で話を進めるわけ。

それで誰が悪いと思うのか、悪いと思う人の数だけ椅子を並べてみてってやつで、たくさん並べる人もいるって話になって。最終的にはそれが「世間が悪い」と思う人もいるらしい。

でも、それって突き詰めていくと「両親に対する不満なことが多い」って言ってて、妙に納得した。

で、ワークショップ二日目は「繰り返し見る夢」を持ってる人って手をあげさせられる。実は私、いくつかの繰り返し見る夢を持っているんですよ。んで、勢いよく立候補したら採用された。

ゲシュタルト療法の先生は「このワークショップをやったら、二度とその夢を見なくなりますよ」と言う。

さて、まずは私の繰り返し見る夢をご紹介~。

夢の中で、私は「通り過ぎていく者」のひとりだ。

何人かの仲間と常に世界を放浪している。ある夜、いい水場を見つけて、そこでみんなと水浴びをした。

ところが、暗くてわからなかったけど、そこには石碑とか地蔵とかがあって、その地域の聖域だったらしい。しかも、その聖域を荒らしてしまったがために、私たちは呪いを受けてしまう。

仲間のひとりがすでに高熱を出して、やばい感じになり、私たちは仲間を助けるために、近所の家を訪ね歩く。でも、呪いを恐れて村人たちは出てきてくれさえしない。

そんな中、一軒だけ、煌々と灯りのもれている家があった。お寺か神社の社務所みたいなところ。格子窓からの明かりが地面に落ちている映像をくっきり覚えている。

そこには親子が住んでおり、子である青年が私たちを助けてくれる。もともとそういうお祓いをする仕事をしてたと思う。かろうじて、それで私たちは死なずに済んだ。

しかし、私たちを助けるために、その青年は呪いを受けてしまう。恐らく、もうまともには働けないだろうくらいの呪いだ。助けてくれる中で、私は青年と心を通わせていた。

けれど、私たちは「通り過ぎ行く者」だ。決して一か所に留まってはいられない。だから、行かなくはいけない。

出発の朝、私は寸前まで「ここに残る」と口に出そうになりながらも、青年と別れる。自分でも行かなくてはいけないとわかっているから。

別れるときに青年が呪いを受けたことを隠していたから、そのことに触れられなかった。そして、何も告げないまま、別れていく――。

というパターンの夢を中学くらいから繰り返しみていた。

そのことをまずはみんなの前で説明する。

で、ここからエンプティチェアの出番だ。

先生が「では、その別れの場面を再現しましょう。

その青年はどこにいますか? ここですか?」

と示された青年の位置が、私の中では違った。

「もっと遠くです」

「では、青年の位置を教えてください」

そう言われて、私は夢の中の距離に合わせて、青年の位置を示す。

これ、びっくりするくらい距離感がはっきりしてるのよ。

前日は実際に椅子で距離を測ってたんだけど、椅子を置いた後に、生徒の人が、

「近すぎます。もっと遠くです」

と、ぐいーーーーーっと椅子を遠ざけた場面があったの。それを見ながら

「まっさかーテキトーだよね」

と思っていた私のバカバカバカ!

完全に自分の中で定めた距離があります。そしてエンプティチェアではこの距離感がとても大事。

距離設定が終わった後、先生が

「では、その青年に夢の中では言えなかったことを言ってください」

と言うわけね。

で、私は残りたい気持ちがないわけじゃないけど、どうしても行かなければいけない、助けてもらって感謝している、呪いを受けさせてしまって申し訳ないって伝える。

すると、先生が

「では、次は青年の位置に立って、青年の気持ちになって答えてください」

って言うわけよ。

で、青年になった私は

「こうなったのは自分で決めた。覚悟していたことだから、全然恨んでいないし、納得している」

と答えるのだ。

そういう会話を何度かやって終わると、先生が

「では、後ろを向いてください」

と言うから、仮想青年に背を向けた。

先生「次に振り返ってみてください」

言われて振り返ったら、

なにが起こったと思う!!!!

その青年の距離が近づいていたの!!!

いや、びっくりよ! 自分の中の距離なのにさ!

それが近づいているのがハッキリ自覚できて、私、思わず吹き出してしまいました。

「どうなりました?」

「距離が近づいています」

「では、また話してください」

そう言われて、私はまた同じシーンを演じるわけ。言い足りないことがないくらい伝えたいことを伝える。青年になっても会話する。

そしてまた背中を向けると、また距離が近づいている。

これ繰り返すとどうなると思う?

青年は私と同化するのだよ!

めっちゃびっくりして、「先生、青年が私と同化しましたあっ!」って告げると、もっと続けてくださいって言うわけ。

するとどうなると思う!!!!

光になるの。

イメージとしては、ナウシカのオープニングで飛んでる羽根の生えたお姉さんが光を持って飛んでる感じ。

そこでゲシュタルト療法は終了~~。

先生から「最初で、ここまでできる人は珍しい」と褒められた。

ってことは、たぶん同化と光の段階は誰しもにあることなんだと思う。

この療法が終わってから、私はこの繰り返し見ていた夢を見ていない。

ゲシュタルト療法って凄い。ちょっとした白昼夢体験だった。

オカルトっぽいけど、ちゃんとした療法だから!!

でも怪談に入れちゃうよ。それくらい凄い体験だった。

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