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人材紹介会社が海外人材ニーズに応える

特定技能制度の業種拡大

「深刻な人手不足を、外国人の労働力によって補おう」という国の施策については、議論を呼んでいますが、今年3月に、特定技能外国人を受け入れできる対象分野の拡大などが閣議決定され、4月には「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針に係る運用要領」が一部制定されました。

特定技能は、人材の確保が困難な分野に限定して、専門性・技能性を持った即戦力となる外国人を受け入れる制度として、在留資格「特定技能1種」「特定技能2種」が2019年に創設されました。

2019年に設定した5年間の受入見込数が、今年3月末に期限を迎えるのにあたり、今後5年間の見込み数を見直し制度が再設定されたようです。2024年から5年間の受け入れ上限は、82万人で設定されました。

ちなみに、2024年6月末現在の特定技能の在留者数は約24万人です。
出入国在留管理庁「外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」

対象分野の拡大については、既存の12分野に「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」4分野が追加され、既存の3分野「工業製品製造業分野」「製造・造船工業分野」「飲食業製造業分野」については、新たな業務が追加されました。

例えば、「自動車運送業」「鉄道」分野が追加されたことで、試験に合格し、実務技能などの研修を経て要件を満たせば、バスやタクシーの運転手電車の運転士や車掌などに就くことが可能となり、また、「飲職業製造業分野」では、スーパーマーケットで惣菜などの製造業務も行えるようになります。

制度の変更について詳しく確認されたい方は、入出国在留管理庁の
「特定技能の受入れ見込数の再設定及び対象分野等の追加について(令和6年3月29日閣議決定)」
をご確認ください。

円安に終わりが見えず、そもそも外国人が日本での就業を希望しているのかの懸念もありますが、各国それぞれの国内情勢などもあり、まだまだ日本での就業を希望する人材も多く、送り出し機関の視察来日などは積極的にされているようです。

今回の制度の見直しが話題になったことにより、人手不足の問題と対峙している人材紹介会社は、これまで以上に外国人人材の動向に注視していると伺っています。

特定技能外国人等を国内企業へ紹介する

これまで国内でのあっせんのみしてきた人材紹介会社が、海外の人材を日本で紹介する、いわゆる「国外にわたる職業紹介」を始めようとする場合には、注意すべき点があります。

外国人人材の紹介と言っても、日本国内に居住している特定技能外国人などが、在留資格の範囲内で転職する場合などについては、「国外にわたる職業紹介」にはあたらず、既にある職業紹介事業の許可で国内企業にあっせんすることが可能です。

ここでいう「国外にわたる職業紹介」は、海外に所在する人材を日本国内の企業にあっせんすることを指します。逆に日本に所在する人材を海外の企業へ紹介するケースもあるのですが、今回は省略します。

「国外にわたる職業紹介」を行おうとする人材紹介会社は、先ず、自社の許可の内容を確認する必要があります。
職業紹介事業許可証の「取扱職種の範囲等」の部分を確認し、ここが「国内」とのみ記載されている場合には、ここに(人材が所在する)相手国を追加する旨を届け出る手続きを労働局にて行います。

職業紹介の許可は、職業安定法の規制のもと、国内で行われるあっせん行為について適用されます。そして、一連のあっせん行為のうち、国外にかかる部分については、該当国の法規制に基づいて行わなければならない、と言うことが前提となっています。

この前提を満たす為に、現地での活動を認められた取次機関と業務提携の契約などを締結し、その協定の中で「人材の募集」や「求職の受付」など現地で行われる業務と「求人の受付」や「企業へ人材の紹介」など国内で行われる業務などの分担について明確にします。

注意が必要なのが、職業紹介事業者が、自社のホームページ上で日本国内の求人を掲載していて、海外にいる外国人が直接そのサイトに応募して来るケースです。

この場合も、国外に所在する人材に対する、求職の受付や職業の紹介などのあっせん行為を行えば「国外にわたる職業紹介」に該当しますので、同様の手続きを行わなければなりません。

取次機関を通さない方法があるのかについては、職業紹介事業者が日本国内と同様に、現地の法令により認められたライセンスを取得し、申請書類にライセンス証等を添付することになどよって、取次機関を通さずに「国外にわたる職業紹介」を行うことが可能ですが、これらのケースはあまり多くないかと思います。

余談ですが、留学などで海外に所在している日本人に対して、日本帰国後の就職支援を目的とした職業紹介を行なう場合についても、「取扱職種の範囲等の変更」の届出は必要です。

国外にわたる職業紹介に必要な手続き

取次機関の申告をする場合の手続きについて、具体的にまとめます。

すでに職業紹介の許可が出ている場合、職業紹介事業取扱職種範囲等届出書を提出して、職業紹介地域(相手国)を追加し、合わせて、取次機関を申告することになります。

届出には、以下の様式と添付書類の提出が必要です。

【様式第6号】 職業紹介事業取扱職種範囲等届出書 
【通達様式第10号】取次機関に関する申告書
【添付書類】
 ①現地の職業紹介を行うための根拠となる法条文(原文・日本語訳)
 ②取次期間と締結した協定書(契約書等)(原本コピー・日本語訳)
  ※取次機関との業務分担についての記載等が必要
 ③取次機関の現地における職業紹介等の許可証(原本コピー・日本語訳)

こちらの届出は、一部例外を除いて、変更があった日の翌日から10日以内に行なう必要があります。
②については、定めるべき項目などがありますので、十分確認しておく必要があります。

なお、よく混同される方がありますが、技能実習制度は、特定技能制度とは主旨が異なり、実習生を職業紹介の対象とすることはできません。
また、「技能実習」の廃止と、新たな制度の創設を盛り込んだ「入出国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」が6月に公布されています。

職業紹介事業の許可申請に必要な手続き

最後にこれから人材紹介を行おうという場合の、許可申請の手続きについても簡単にまとめておきます。

【様式第1号】有料職業紹介事業許可申請書
【様式第2号】有料職業紹介事業計画書
【様式第3号】届出制手数料届出書
【様式第6号】有料職業紹介事業取扱職種範囲等届出書
【添付書類】
 1 定款または寄付行為
 2 登記簿謄本
 3 代表者・役員・職業紹介責任者の住民票
 4 代表者・役員・職業紹介責任者の履歴書
   (一定の要件を満たした内容のもの)
 5 職業紹介責任者講習会の受講証明書
 6 直近事業年度の決算書類
 7  〃   納税申告書
 8      〃   納税証明書 
 9 事務所の登記事項証明書または賃貸契約書等
  10 個人情報適正管理規程
  11 業務の運営に関する規程
  12 手数料表
  13 事務所レイアウト図
【手数料】
 1 収入印紙 50,000円+18,000円(事業所一つの場合)
 2 登録免許税 90,000円(納付後の領収書)

書類提出後、許可が下りるまで、最短で中2ヶ月かかります。
通常、書類受理の翌月に事業所において実地調査が行われます。

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