『AZKi 5th LIVE R.I.P AZHOOD』レポート またここから創る彼女の世界

2020/07/25（土）、イノナカミュージック所属のアーティスト・AZKiのライブ「AZKi 5th LIVE R.I.P AZHOOD」がニコニコ生放送、およびbilibili動画にて開催された。

この公演は、本来2020/5/16（土）、新宿BLAZEにて開催予定であった「AZKi 5th LiVE [three for the hood]」が、新型コロナウイルスなどの社会的情勢によって中止になったことによる代替公演。

このような状況においても、出来うるであろう”今の最高”を魅せた公演について記していこうと思う。

「さあ、始めましょう！」と高らかに宣言し、始まったライブの一曲目はAZKi自身が作詞した「ちいさな心が決めたこと」。

自身が綴った歌詞を最初に歌い上げ、その場に集った開拓者（※AZKiファンたちの愛称）をライブの空気感へと一気に引き込んでいった。

そのままの勢いで「虹を駆け抜けて」「さよならヒーロー」とさわやかな曲調が続き、空気や雰囲気を創り上げていったように感じた。

一度目のMCの中で、「画面を越えるつもりで精一杯歌う」ことを伝え、これからの時間に対する意気込みが伝わってくるようだった。

そして、先ほどまでとはまた雰囲気が変わり、「フェリシア」から始まり、かわいく歌うような曲調が続くような形に。

同じくかわいくもアップテンポな「猫ならばいける」ではニコニコ生放送の画面上も「にゃー！」とコールで埋め尽くされていた。

再びMCを挟んで、次はオシャレめの曲たちが続いていくような形に。

「Midnight Song」「Take me to Heaven」としっとりとした曲調と歌声が身体に染み入るよう。続けて「Reflection」へと繋がっていき、背面モニターや照明などの演出も含めまさしく”ダンスミュージックゾーン”といった軽やかな時間だった。

「今日は何曜日ですか？」の問いかけから始まる「のんびりと、」「リアルメランコリー」と、曲中や間奏での合いの手などが楽しい曲を広々と歌い上げる時間へ。そこからさめのぽき作詞作曲の「mirror」を披露。ここで一瞬でAZKiさんの衣装が旧衣装へとチェンジし、”さめのぽきらしさ”あふれる曲をしっかりと、おもく歌い上げた。

「前回のAZ輪廻が最後のライブだったかもしれない」「それまで当たりまえにできていたことが変わって、当たり前にできなくなってしまった」と語り、「ひとつひとつのライブに全力でぶつかって、その時思うことを歌にぶつけたい」と開拓者に伝えた。

息が止まるまで、いのち尽きるまで歌い続けていたいとの言葉から紡がれる「いのち」という歌には、今までよりも増した”なにか”がたくさん込められているように感じた。「いのち Acoustic ver.」の披露、しかも頭から大サビをアカペラで歌い、アコースティックの音が乗っていく様は、美しくて、胸を打たれるような光景だった。

”AZKiのキラーチューン”として有名なこの「いのち」だけれど、この時は現状などもふくめて「今この時の最大の命の灯火を込める」くらいの感情が伝わってきて、会場全体が息をのむ音が聞こえてくるかのようだった。

畳みかけるように”ユメ”というもの対して、”リアル”を投げかけ考えさせられるような曲、「青い夢」へと続き、「いのち」で引き込んだ会場をさらに深い場所へと連れて行った。「…守れないよ」の感情を込めた嘆きのような歌声は、まるで心臓をつかまれたかのように感じた。

先ほどまで張りつめているかのような空気をまとっていた会場の空気を、やさしく塗り替えていったのが「世界は巡り、やがて君のものになる」だった。先ほどまでと同じように感情を込めて歌い上げているような様に引き込まれ、力強く表現する姿に魅入られていた。

「ここからが後半戦！」の言葉とともに、今までの雰囲気を拭い去るかのような怒涛のアッパーチューンが容赦なく降り注ぐ。「Eternity Bright」「Intersection」と曲調と画面で殴りつけるような時間が続き、見ている側の感覚を目まぐるしく刺激していく。”エモーショナルもアグレッシブも存分にこなすのがAZKiだ！”と言わんばかりのステージパフォーマンスに眩暈がしそうになるほどだった。

アッパーチューンの勢いのまま、会場を飲み込まんばかりのバンドサウンドが鳴り響き、AZKiのダークな曲たちが走り出してくる。「ERROR」を皮切りに、「I can’t control myself」「ひかりのまち」が荒々しく感情と身体を揺さぶってくる。勢いに振り落とされそうになりながらも、その勢いについていこうとする姿勢さえも心地よく感じるのはAZKiのライブの味の一つだろう。

「こうやって歌っていることが誰かの心に響いて、なにかになっていたらいいなと思います。」と自身の歌について語り歩き出したラストスパート。自分の辿ったものを歌った「フロンティアローカス」、曲中でAZKiの衣装がチェンジする演出が入り、そのまま「from A to Z」へと続いた。打ち込まれた開拓者とのシンガロング「今までもこれからもずっと」の言葉は、様々な意味をもって会場へと流れていったように思う。

アンコールでは開拓者からのAZKiコールが流れるサプライズもあり、驚きながらも「Fake.Fake.Fake」「嘘嘘嘘嘘」「自己アレルギー」の三曲を流れるように歌い上げる。ここまで時点で長時間歌い続けているにも関わらず、勢いの衰えを感じさせないままに、怒涛の勢いで叩きつけるように会場を圧倒する様はまさに”歌で制圧する”という言葉が思い浮かぶようだった。

「残り二曲」の言葉とともに、ライブの終わりに向かって駆けていく時間を惜しみつつ、「without U」のイントロが流れる。聞いてくれる人や開拓者に向けてのメッセージに溢れた言葉を音に乗せて伝えていくAZKiの姿は綺麗で目に焼き付いた。

最後の曲を前にして、2ndフルアルバム『Re:Creating world』制作決定と新衣装プロジェクトが発表され、これからのAZKiとAZKiチームのこの先を期待も膨らんだ瞬間だった。

そしてラスト、「Creating world 2020ver.」を優しく、そして力強く歌い上げた。今までを創り、これからを創っていくこの曲でこの日の時間を締めくくり、”AZKi”を感じられる時間のままフィナーレを締めくくった。

様々な情勢が絡むこの現状で、限られた今だからこそできること、表現できること、そのすべてを詰め込んだような時間だったと感じられたこのライブ。全体を通して「AZKiというアーティストの幅の広さ」「AZKiが歌に込める感情」を痛いほど感じられたように思うし。実際、配信だからこそのカメラワーク、見ている存在全員が同じアングルからAZKiの姿を目に収められるという、時間や経験の共有があったように思う。AZKiの歌のパフォーマンス、表現力に加わって、さらに印象に残っているのが「画面上の演出」だった。曲の雰囲気や空気感に合わせての背景や光の加減、曲中に浮かび上がる歌唱中の楽曲のタイトルの表現の多彩さ、AZKi本人に重なるVJの世界観など、随所に敷き詰められた「AZKiの歌の創る世界」が心から魅力的だった。

この様々な敷き詰められた”こだわり”がAZKiがAZKiたらしめる舞台を支えるものになっていること、そしてそれらがあるからこそのAZKiの血の通った歌がより魅力的になっていることを改めて実感した、素晴らしい時間だった。

これからも彼女と、彼女を取り巻く存在の創り上げる世界を観測していきたいと切に願う。

文・スクリーンショット：日向キタロー

・セットリスト
1.Overture(SE)
2.ちいさな心が決めたこと
3.虹を駆け抜けて
4.さよならヒーロー
5.フェリシア
6.猫ならばいける
7.Midnight Song
8.Take me to Heaven
9.Reflection
10.のんびりと、
11.リアルメランコリー
12.mirror
13.いのち Acoustic ver
14.青い夢
15.世界は巡り、やがて君のものになる
16.Eternity Bright
17.Intersection
18.ERROR
19.I can’t control myself
20.ひかりのまち
21.フロンティアローカス
22.from A to Z
EN1.Fake.Fake.Fake
EN2.嘘嘘嘘嘘
EN3.自己アレルギー
EN4.without U
EN5.Creating world 2020ver.