猫の日暮れ

人間というのは億劫だ。

毎朝ほとんど決まった時間に起きて、ご飯を食べ、学校や会社に行き、くたくたになって家に帰り、布団に沈むように寝て、また次の日に目を覚ます。

仕事や勉強でなくても、家に残って、掃除や洗濯、料理をして、誰かの帰りを待ち、ときに叱って、叱られて、誰かを傷つけ、誰かに傷つけられて。

有意義なようで無意味な、そんな日々の繰り返し。

決められたレールを走る列車のように、人間というものはとにかくルールに縛られていることが好きなようにしか見えないね。

時間に縛られ、会社や学校に縛られ、友人に縛られ、家族に縛られ、果ては自分自身で縛って…

自由なんて言葉だけで存在していないようだ。


猫は、自由だ。
好きな時間に起きて、散歩をして、遊んで、ご飯を食べて、好きな時間に寝て、また起きる。

何にも縛られない。誰にも縛ることは出来ない。
そんな猫が、僕は好きだ。


生まれ変わっても猫になりたい。


また、朝が来た。
みんなの足音で少し目を覚ました。
何だか騒々しいな…。どうしたんだろう。


…ああ、だめだ。今日はまた眠くなってきた。
僕は寝るよ…ねえ。


静かに寝たいのに、なんで皆で僕を見るの。


…ほら、早く会社に行かなきゃ、大事な会議があるんだよね。

…ほら、学校は?今日テストだよね、早く行って勉強しないと。

…ほら、洗濯物溜まってるよ。急いでしないと後で大変だよ?また、僕が汚しちゃうからね。


…なんで泣いてるの?
服が汚れちゃって余計に洗濯物ができちゃうよ。

ルールを守るのが、人間じゃなかったの?

僕のためにルールを変えたらダメだよ。
猫の特権が無くなっちゃうからそんなのダメだよ。

人間が、少しだけ羨ましく思えちゃうじゃないか。
僕だって本当は好きだったりするんだよ。
人間のこと。

みんなこと。


…もうねむくてこえもでないや。
もうねるね。また、あしただね。

おやすみ。




日向

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