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電脳虚構#6|守られた世界

僕はエリートだ。
このシェルターの中で、最高の環境で最高の教育をうけている。

そとの世界は、むかし怖い疫病がはやり、人が住める世界ではなくなったらしい。
その後、隕石の落下や異常気象でこの星のほとんどが壊滅したという。

この安全なシェルターの中の【 特別居住区 】に暮らす僕は、この世に残された数少ない選ばれた人間だ。

毎日、栄養バランスのとれた最上級の食事が黙っていても出てくる。
専属の医療チームが常にそばにいて、健康管理もじゅうぶんだ。

勉強も運動も、最高の指導者がマンツーマンで教えてくれる。

プライベートルームは、毎日せいけつに管理がされ、きれいな衣服も毎日支給される。

生まれたときから、15歳のいままでずっとエリート教育をうけ、生活をしている。
基本的にこの居住区から出ることはゆるされていなかったが、なに不自由のない暮らしだった。
エリートなんだから仕方ない。僕は特別なんだ、守られて当然だ。

16歳になると官僚になるため、居住区からでることになる。
この特別居住区の外へでるのは初めてだから、いまから楽しみでしかたがない。

これまでもエリートクラスの先輩たちを、何人も何人もみおくってきた。
特に仲のよかった先輩たちには連絡をこころみたが、返信は誰からも一度もなかった。

官僚というのはよっぽど忙しいらしい。

プライベートルームの壁は厚い透明なガラスになっていて、シェルターの外の世界をみることができる。

外の世界にも、生物は存在している。
【 かつて人間のカタチをしていた者たち 】だ。

放射能や異常気象、疫病の影響をうけ、身体がカエルのように縮こまり、皮膚がただれ、目玉がギョロっと横についている。

僕の部屋のカベに顔をつけ、ものほしそうにこちらをのぞいている。

15歳になったころから、そんな怪物たちがひんぱんにくるようになった。
最初はきもちわるく感じていたが、だんだん慣れてきて

「ごめんな、こっちのエリートの世界がうらやましいんだよな。
 選ばれた人類と、見放された人類。これは仕方のないことなんだ。」

そう、怪物たちをあわれむようになった。


そしてまもなく16歳をむかえる。


 ★  ☆  ★  ☆  ★


「・・・という風に、シェルターの中、、
 いや【 養殖場 】の中の個体にはそう思わせているんですよ」

「この個体は15歳のときから目をつけていたが、少し性格に難がありそうだ。少しまけられないか?5000ゴルドは高すぎるだろう」

「問題ないですよ。
 お客様の生体データが転送されれば、性格は消えてしまうんで。
 必要なのは【 イレモノ 】として価値。それだけですから」



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