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98 / コーヒー

コーヒーが嫌いだった。
ただの苦い黒い液体。でもコーラは好きだった。
甘いから。炭酸だって効いてて刺激的。


数年で変わった。
今はコーヒーが大好き。コーラは嫌い。
ただの甘い黒い液体。最後に口にしたのはいつか思い出せない。


高校3年生の時、ダイエットにいいと聞いたから毎朝ブラックコーヒーを飲んだんだ。苦いけど、痩せる為。毎朝飲み続けていたら、いつの間にか好きになった。


最近、「やりたい事をやる」「楽しむ」だけが先行して、人生においてそれ以外のことがダメだしされているかのような風潮を感じる。し、実際ぼくの中にも『人生は楽しむもの』だという価値観が強く根付いていた。


それがぼくを迷わせた。
甘さしか感じられないのであれば、ぼくはコーヒーを味わえず生きていた。勿体無いな。


楽しさを感じなくなったら辞めるのだろうか。
前向きでいられる時間は素晴らしくて、そうでない時間はダメなのだろうか。違うな。


苦さだって贅沢な味わいの一種類だ。
楽しさだけじゃない。悲しさも、寂しさも、苦しさも、ちゃんと味わうことができれば人生より贅沢に過ごすことができるんじゃないか。


そんなことを思うと、少し心に余裕が生まれた。
楽しさだけが歩み続ける理由なら、どこかでつまづくだろう。


イチロー選手も、「野球に対する子供の頃のような純粋な楽しさは0だった」と、現役時代を振り返って言っていた。もう、この言葉に答えがあるように思う。


あそこまでの偉業を成し遂げられた理由は、「好きだから」「楽しいから」だけでは説明がつかない。


積み重ねる小さな達成感。おれがやるしかないという使命感。思ったような結果が出ない苦しみ。孤独。


ぼくも、楽しさ以外のあらゆるものを感じ、味わって、原動力に変えることのできる人で在りたいと思う。



今日は、コーヒーの香り、苦み、時間を味わうことから一日を始めた。

なんだってできる気がした。











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