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拝啓、すてきなつくり手さま。

今年の誕生日、独立のお祝いにもと天然石の指輪をプレゼントしてもらいました。

この指輪は、ずいぶんと探しまわったのです。

長いこと大切にできて、唯一無になもの。そんなぼんやりとしたイメージだもんだから、何日も何日も、いろいろな百貨店やお店をまわる日々でした。

天然石のアクセサリーは、手作りで作家さんがつくっていることが多く、お店で作家さんとお話できるのがとても楽しくもありました。石の仕入れからデザインまで、誇りある手仕事で仕上げた、奥から輝く作品を見て回るのは、エネルギーをもらえるような気すらしました。

何日目かのある日、新宿伊勢丹のアクセサリー売り場にて。

多く並ぶ宝石の中でもひときわ、静かにおだやかに、でもどこか力強く光っている指輪に出会いました。作家さんの名前はanima uniさん。ご本人も、優しい光の中に芯のある、魅力的な方でした。

あまりにお値段がいいものは、さすがに手が出せない( というより、買って欲しいと言うのは申し訳ない) と思いつつ、その指輪をはめてみることに。

心を何かでぐっとつかまれたような、でも優しく包まれているかのような、不思議な感覚。好きな人に出会ったときの気持ちでした。

けれどもお値段を見て、その指輪が好きだと口に出すこともできず、お店を去りました。

帰り道。どうしても忘れられず、せめてanimauniさんにお会いしたいと思い、Instagramでメッセージをしました。

そして3月のはじめ、ふたたびお会いすることが叶いました。

そのときは、まだアクセサリーになっていない、石だけの状態の輝きたちを見せてくださいました。どれも美しい。

けれど、オーダーで作ってもらいたいと思いつつも、決め手がない。どれも、ビビッとは来なかったのです。

そのとき。

一緒に来てくれた彼が言いました。

「あの指輪、つけさせてもらえば」

えっ。

一瞬で、あの指輪をつけたときのことを思い出しました。

ぜひ、とanimauniさんからも言われ、はめてみる。

そのとき、あの時と同じようなどきどきを感じました。あぁ、この指輪が欲しい、心から欲しいと思ってしまったのです。

あきらかに顔に出ていたのか、彼はうなずき、animauniさんも微笑んでいました。

どうしてか、顔がほころんでしまう私。この指輪に出会いたかったのだと、こんなにも強く感じるのかと、驚きでした。

あの日から、毎日わたしの左手の中指で輝く、大切なお守りになりました。animauniさんがpomumと名付けていたので、わたしもそう呼んでいます。

あの日から咲く花

それからはや2ヶ月。

animauniさんにお会いしたあの日、わたしはマトリカリアの花束を持って行きました。駅でふと欲しくなり、単にかわいいと思ってマトリカリアを選んだのです。花の名前も意味も知らずに。
(白くて小さなお花がマトリカリア。鮮やかな青のお花はブルースター )

お渡しした時、「マトリカリアは、集う喜び、という花言葉があるすてきなお花ですよね。」と言われたのを覚えています。

あの日からわたしの記憶の中にもずっとマトリカリアは咲いています。

animauniさんのお家でも、いまだに咲いているのだと、知りました。

そのことを知らせるInstagramの投稿。読んで、泣きたくなってしまいました。
https://www.instagram.com/p/BwgFcvJnO39/?utm_source=ig_share_sheet&igshid=1m10rwxac2yju

元気に、力強くやっていますと、お返事したい。でも最近の私は、どこか泣きそうな毎日でした。

animauniさんの指輪は、どこまでも私を優しくつつみ、ときに勇気付けてくれます。指輪を買ったあの日、私もanimauniさんのような、人の心に残る仕事がしたい、そのためにフリーランスになったのだと違いました。でも、そんな姿とはほぼ遠い自分が嫌で嫌で仕方なかったのです。

animauniさんに渡したマトリカリアは、まだ元気に、力強く咲いている。

あぁ、強く生きたい。柔軟でありながらも、芯があって人に優しくできる人になりたい。

だれかひとりでもいい。私がいたことで幸せを感じる瞬間が生まれる、そんな生き方をしたい。

必ずや、と自分に言い聞かせながら。元気にやっていますと、大きく手を振るのです。

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言葉で、日々に小さな実りを。そんな気持ちで文章を綴っています。