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店を始めたい人へのメッセージその2:「1にお金、2にお金、3,4がなくて、5にお金」

時折、珈琲店開業希望の方が来店されます。

すでに準備に着手している方もいらっしゃれば、まだ、珈琲店もひとつの選択肢としてふわりとゆるく、の段階の方もいらっしゃいます。

何故私なの?とは思いますが、せっかくいらっしゃったのですからお話を聞くことにしています。

皆さん真剣な面持ちです。

開業希望者の方全員に、私が愛を込めて贈る言葉が

「1にお金、2にお金、3,4がなくて、5にお金」

です。

もちろん、お金以外にも大切なものは山ほどあります。

しかし他の何があっても、「お金」が底を突いてしまえばビジネスはジ・エンドです。

どれほど意欲があっても未練があってもジ・エンドです。

運転資金のショートという現実の前では、愛も友情も夢も希望も無力です。

閉店する理由は様々あるとは思いますが、開店後数年経たずして閉店する店の多くは「運転資金のショート」が原因のように思います。

事業は立ち上げてからが勝負です。
事業は継続してナンボです。
そして事業を継続することにこそ、難しさと楽しさと喜びがあります。

目論見通りにばかり行かないのが事業です。想定外のことが次から次へと起こります。特に開業当初はそうです。

そんな時、いかに潤沢な運転資金をストック出来ているか否かが、運命の分かれ道になると言っても過言ではないと思います。

実際、経営者が抱える悩みは「お金」さえあれば解決できるものがほとんどです。

開業コンサル的なホームページなどでは「半年分ほどの運転資金を用意」と書かれていることが多いですが、経験上全く足りません少なくとも精神安定剤としての効果は期待できません。

仮に来客がずっと0人でも(実際にそんなことはあり得ませんが)最低1年、出来れば2年間は固定費その他がまかなえ、かつ細々とでも生活を維持してゆけるだけの運転資金があると、リスク回避的にも精神衛生上的にも安心です。

「貧すれば鈍する」

経営者は、想定していた売り上げに届かず、資金繰りに窮し始めると、焦りと不安から間違った判断をし易くなり、破綻へのスピードを加速させることになります。

例えば、
値引きやクーポンなどを乱発したり、
営業時間を延ばしたり、
定休日を減らしたり、
客の要望のままにメニューを増やしたり・・・

→これらはすべて逆効果になります。あなたの有限の気力と体力、そして運転資金はますます消耗してゆきます。

はたまたハイリスクな資産運用や、
詐欺まがいのビジネスに手を染めてしまったり、
挙句は怪しい宗教に入信してしまったり・・・

→弱みにつけ込む悪い人たちの養分となり、店だけでなく人生の破滅に向かって一直線となります。

これから店を持とうと武者震いしている皆さん、事業を成功させたいのなら、まずは少しでも多くの資金を貯蓄することに注力してください。

事業の立ち上げに勢いは大切ですが、慎重さもまた同じくらい大切です。

運転資金の余裕は心の余裕

そのために
まずは自己資金を増やす努力をした上で、
①限られたパイである自己資金のうちの開業資金を可能な限り圧縮して、運転資金に充ててください。
②かといって、本当に必要な部分への投資が疎かになってしまっては本末転倒です。必要な場所に必要なだけの投資をするための方法として、日本政策金融公庫などからの融資も視野に入れるのはありだと思います。
ただし、身の丈に合った金額にとどめること。もちろんこの返済額も運転資金に反映させてください。
個人の小さなお店なら500万円、返済期間5年以内が無理なく返済できる目安と私は教わりました。

私はその言葉通り、日本政策金融公庫から500万円を返済期間5年(半年の返済開始猶予つき)で融資を受けました。月の返済額にすると8万円程度です。

余談ですが、その支払いもあと3ヶ月で終わります。

・・・・長かったです。

うまく出来たもので、開店から5年もするとメンテナンスが必要な箇所がぽつぽつ出てきたり、想定外の設備の故障が発生したりし始めます。
また、新たな投資がしたくなったりもします。

借金が終わっていて良かったな、と思う瞬間です。
それが「返済期間5年以内」の理由なのかなと思います。実感です。

自己資金を沢山用意すると他にも良いことがあります。

件の事業資金の融資を申請する際に、金融機関の審査担当者があなたに融資をするか否か、また融資の上限を幾らにするかを決定するための重要な判断材料の一つになります。

自己資金の多さ=本気度を表す判断材料のひとつだからです。

「クラウドファンディング」という選択肢

近年クラウドファンディングを使っての資金調達も盛んですが、クラウドファンディングにはメリットもある代わりに、多くのデメリットもあります。
安易に手を出さず、デメリットについてもよくよく調べた上で利用するか決めて下さい。

これはあくまで私の考えですが、私はできる限りクラウドファンディングは使いたくないと思っています。

なぜなら「小さな借り」を沢山作ることになるからです。

「借り」は、少し風向きが変われば経営の逆風になります。

「今日のシンパは、明日のアンチ」かも知れません。
その点は心して掛かった方が良いと思います。

私は、借りを作っていいのは金融機関だけだと思っています。
借りた金額とその利息の返済以上のものを要求されることがないからです。
そして、借りて、きっちり返済すればそれが実績になるからです。

そうはいっても、無借金で経営が出来ればそれに越したことはないですね。

開業希望者の皆さん、良いスタートを切って下さい。

「1にお金、2にお金、3,4がなくて、5にお金」ですよ。


サポートは謹んで辞退させて頂きます。お気持ちだけで十分幸せです。