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#2【ふとした瞬間に】

”2020.5.16”

Key : 恋愛・ヒューマン・淡い恋・コーヒー

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「あ、これ好きかもしれない。」

キャニスターにおさまったコーヒーを見て、ふと思う。
普段は容器とコーヒーは別々に販売されているけれど
出会ったソレは異なる。


コーヒーの香りがクスッと鼻を撫でる。


休日の14時を少し過ぎた頃。
何気なく入った、青い外装の大きく猫の描かれたお店。
なんとなく入った、その中で偶然出会った。
カフェに並んである、小さな小さなキャニスター。
その中に入っていたコーヒーはケニア。
酸味がある少し癖の強いもの。

「あの人が好きなコーヒーだ。」


一際(ひときわ)、私の目を引いたのはきっと彼の面影が見えたからなんだろう。


会えない時間こそが、いっそう恋焦がれるその影を濃くさせていく。


気がつけば手にとって眺めている。

”何気なく出会った”
なんてきっと嘘だ。

私はずっとあの人の背中を見つめている。


”今日はカフェオレにしようか。”


脳内でハウリングする落ち着いたゆらぎのある声。
いつも淹れてくれるペーパーフィルター式のコーヒー。

鼻で
耳で
頭で
舌で

ぜんぶでぜんぶ。
すべて覚えている。


キャニスターにおさまったコーヒーを見て思う。


ふとした瞬間に、あの人のことを思うのは、まだ好きなんだろうか。


私から振ったくせに。

私から逃げたくせに。


気付いたら考えてしまう。


あぁ。きっとわたしはまだあなたに恋してるんだね。


ごめんね。
ワガママすぎたんだね。



キャニスターに入ったあなたの好きなコーヒー。
わたしが好きなコーヒーでもあるんだよ。


”ふとした瞬間に”

またあなたを思い出せるように、
棚の上に置いてあります。


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ことばクリエイター:高縞 ひな


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