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ハイモジモジ10周年ふり返り(1期目の前半)

ハイモジモジ代表の松岡です。

2010年4月28日に創業し、間もなく10周年を迎えます。そこで、この10年の歩みをふり返っていきます。今回は1期目の前半をお伝えしていきます。


株式会社ハイモジモジ誕生


2010年4月28日。晴れてハイモジモジを設立することができました。

法務局で登記完了が認められたのは5月の半ばでしたが、完了した時点で登記の申請日が「会社設立日」となったのでした。

登記が完了したのがたまたま自分の誕生日だったのですが、Facebookで友達みんなに「誕生日に会社を作りました」と報告すると「誕生日狙ってたでしょ」とつっこまれることに。いやいや、本当に偶然なのでした。

そしてまずはロゴを作りました。グラフィックデザイナーである妻にお願いしたところ、30分とかからずにできました。


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今のロゴと違って「J」の下がはみ出ています。「どうせ会社はそんなに続かないだろう」と思った妻が、本人曰く「適当に」作ったロゴでした。

続いて、名刺を作りました。


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ハイモジモジの「モジ」は「文字」の意味が込められていて、名刺のオモテ面を文字だけで構成してみました。今はシンプルなデザインになってしまったのですが、当時のものが実は一番気に入ってます。


文字の企画を始めよう


さて、名刺はできましたが、これから何の事業をやっていきましょう。

もともとフリーライターでしたので「文字」に関する企画をやりたいということだけは決まっていました。

そこでまず初めに考えたのは「実況タオル」という企画でした。スポーツの名場面の実況をテキストにしてプリントしたタオル。このタオルを使うたびに、あの感動の場面がよみがえる、そんなコンセプトでした。


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当時、普及し始めたばかりのTwitterでラジオ局の社員さんのアカウントを見つけてDMを送り、企画を直接売り込む機会をもらったのですが、実況の著作権の問題があり実現には至りませんでした。

その後もあれこれ企画を考えては、一緒に取り組んでくれそうな会社にコンタクトを取ったり、友達に相談したりしました。けれど、どれも形になりませんでした。

どうしよう。

そんなときに思い出したのが「リストイット」という商品でした。



文具メーカーとして出発


つい手にメモしてしまう習慣がある人に向けて、メモを書いた紙をリストバンドのように手首に巻けるものがあったら、うっかりを防止できるしアクセサリーにもなりそうだし「一石二鳥じゃないか」ということで発案し、近くの文房具屋さんで買った色画用紙をハサミで切って手作りしたことがあるんです。

そうして2008年だったか、東京ビッグサイトで年に2回開催される「デザイン・フェスタ」に出展してみたところ、10本100円セットが見事に完売。お客さんから「これ絶対に商品化したほうがいいよ」と、熱いラブコールを受けたこともありました。

「そうだ、あのリストイットを売ろう」
「ああいう商品を企画して売るメーカーになろう」

そこからハイモジモジは、文具メーカーとしての一歩を踏み出し始めます。


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▲第一弾商品としてデザインしたアソートパック


当時、会社勤めをしていた妻が、日ごろからお付き合いのある印刷会社さんにお願いして作ってもらいました。さすがに今回は手作りではなく、型を起こして断裁したもの。パッケージもきちんと作り込んでのスタートです。

袋への封入作業は妻に手伝ってもらって、自宅でふたりでやりました。

色ごと紙で束ねて、それを少しずつ色が見えるように重ねて袋に入れるのですが、これがまた大変で。作業が細かすぎて、1時間作業しては頭痛でダウン、また1時間作業しては頭痛でダウンする始末。なぜこんな仕様にしてしまったのか。


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ともあれ、製品は完成しました。あとは取り扱ってくださるお店を探すだけ。


初めての営業と挫折


そこで100均で買ってきたプラケースに商品と資料をつめた「行商セット」をこしらえて、近所の文房具店に売り込みに出かけました。かつてリストイットを手作りするため画用紙を買った文房具店に、今度は紙製品を売りこみに行くという不思議。

人生初の訪問営業です。


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「すみません、ちょっとお話聞いていただけませんか」

ちょっと待っててと言われ、店内で待つこと10分。話を聞いていただけることに。

そこで行商セットとともに持参していた、当時発売されたばかりのiPad初号機を取り出しました。華麗に指でスライドしながら店員さんにプレゼンしたのですが、話題はすべて未来のデバイスに持っていかれました。「おー、これがアイパッドってやつか」と言って、商品を全然見てもらえませんでした。

今度は場所を変えて、かつて住んでいた街の雑貨店を訪れることに。

以前、そこの常連客でもあり、よくお買いものをしていたので店員さんも顔なじみだと思っていたのですが、どうやら思い込みだったようで。「新しく商品を作ったので取り扱っていただけないでしょうか」と声をかけても、商品には目もくれず「間に合ってます」と一蹴されてしました。

(その数年後、別の商品ですが、そのお店で正式に取り扱っていただけることになるんですけどね)

もう1軒、同じ街の文具店を訪れたのですが、今度はようやく初めて商品を手に取ってみてもらえました。ところが、こんな言葉をいただきました。

「こういう風に直接お店に持ってこられても困るんです。私たちは問屋さんを通じて商品を仕入れてるので」

トンヤ、サン?

あの「そうは問屋が卸さない」の問屋さん? そうなんです、そのとき初めて、メーカーと小売店をつなぐ「問屋」の存在を知ることになったのでした。

話しかけてもろくに相手にされず、下代だとか掛け率だとか、よく知らない業界用語も出てきて、しょんぼりぼ帰宅。なにせそれまで「断られる」という経験がまったくなかった人生です。ひどく落ち込んでしまいました。

「あかん、営業に向いてない」


Twitter営業をスタート


そこで発想を切り替えました。仮に3軒まわった営業がすべて上手くいったとしても、社員が自分ひとりなのだから、同じやり方で全国をまわるのは難しい。これは別のやり方を模索する必要がある、と。

そうして目をつけたのがTwitterでした。

まだまだ普及し始めたばかりで、こちらからフォローすれば必ずフォローを返してもらえる、そんな牧歌的なムードがあった頃。プロフィールに「文房具」と入れているアカウントを片っ端からフォローしていく「Twitter営業」を開始したのです。

まずはネットでの存在感を高めていくのが狙いでした。


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▲同時にウェブサイトもオープン


そして1,000件ほどフォローしていった人の中に、たまたま文具や雑貨を扱う「問屋さん」がいらっしゃり、サイトに掲載していた番号に電話がかかってきたのです。


初めて出会った問屋さん


「このリストイットって商品、面白いすね。今から会いに行っていいすか」

かなりフランクな口調の男性でした。声から察するに、歳も自分に近い世代か。でも、いきなり会いに行くと言われても、こちらのオフィスは自宅だし、いきなり見ず知らずの人を家にあげるのはちょっと。

そこで駅前の喫茶店で落ち合うことになりました。

その男性は目新しいもの、これから流行りそうなものを見つけるのが得意な方で、リストイットの現物を見るなり「うちで扱わせてもらいますわ」と一言。あっさり商談がまとまりました。ほんまかいな。

その間、趣味で鍛えたウェブ制作のスキルを活かして直販サイト「SHOP MOJIMOJI」を自前でこしらえ、商品を入れる封筒に押すスタンプを作ったりして時間を過ごしました。


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商品は3つほど売れましたが、その後は鳴かず飛ばず。

どうしたものかなあと頭を抱えながら、その日は在宅勤務していた妻と駅前のルノアールに行きました。のんびりコーヒーを飲んでいたところ、先日お会いした問屋さんから電話がかかってきました。

「導入、決まりましたよー」

えっ?

「夏に京都で、ロフトが新店をオープンするんすわ。そこで販売することになりましたから」

暑さも本番の2010年8月。関西の実家への帰省も兼ねて、かつて高校時代を過ごした京都を訪れました。


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本当に商品が並んでいました。

妻とふたりで企画し、デザインし、頭痛になりながら封入作業を行ったあのわが子のような商品が、雑貨チェーンの雄であるロフトさんの店頭で販売されていたのです。

嗚呼、生きててよかった。


ハイモジモジ10周年まで、あと25日。

(つづく)


【ハイモジモジ PROFILE】
2010年創業。「Kneepon from Nippon!」を合言葉に、思わず膝を打つアイデア・プロダクトを日本から発信している。キーボードに立てる伝言メモ「Deng On」、耐洗紙のメモ「TAGGED MEMO PAD」でグッドデザイン賞を受賞。人気シリーズ「WORKERS'BOX」好評発売中。

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