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母のこと

私の母は波瀾万丈人生の人だ。結婚前は裕福な家庭の長女として過ごしていた。私の父の家も昔は資産家だったので、家庭環境など恵まれていた。が、私の父がだめんずで💦会社の金を使い込み、その返済のために都心の邸宅を売却した。戦後の改革で唯一残っていた邸宅すら手放すことになり、残ったのは谷中霊園の大きなお墓のみ。そのお墓すら、両親の離婚により相続人がいなくなり、私の叔母が数年前に墓じまいをして、全て無くなった。

お嬢様育ちの母は、結婚してしばらくは安定した生活だったが、父が会社の金を使い込んだため退職。そして父はそのまま蒸発した。大学まで卒業していた母は教員免許、栄養士免許、調理師免許などを持っていたが、手っ取り早く稼ぐためには全く使えないものだった。彼女が私たち姉妹を養うために選んだ仕事は、宅配便の仕事だった。それだけでは食べていけず、数年間は昼は宅配便、夜は料亭の仲居やスナックのホステス、夜中にお弁当屋さんで働きながら私達を育ててくれた。

お嬢様育ちの母は、それまで専業主婦だった。テニスクラブの会員だった母は、毎日テニス三昧の生活だった。それが一転、宅配便のドライバーだ。夜中によく泣いている声が聞こえた。

父がいなくなってから、母はもう40年以上ひとりで生きている。母が女であることを良しとしなかった私たち姉妹だったが、申し訳ないことをしたなとずっと思っていた。母がガンに罹り、余命宣告をされた時は私が申し訳なくて泣いた。こんな子供のためだけの人生で終わらせてしまうなんて。幸い妹がナースなので、結果の数値などを見て診断に疑問を持ち、かつて勤務していた大学病院でのセカンドオピニオンに踏み切った。そこで手術をし、今も元気に過ごしている。もう余命幾ばくもないと思っていた時に、母といろんな話をした。その時に聞いた衝撃の事実。

え?男は切れずにずっといたわよ。私、良い女だったからモテたのよね。お店に勤めていた時なんて、店出ると何人もの男が待っていたりしてね………初めて聞いたわ、そんな話。

え?お母さん、マジですかっ!最後に男性とセックスしたのは70歳近かったあの頃、30歳以上年下の男とですって⁉️

母には敵わない。

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