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お給料は我慢料じゃなかった

新卒で会社員として働いていたとき、2年目だったか3年目だったかに後輩社員が入ってきた。歓迎会か何かで(会社員時代の記憶が記憶喪失レベルであやふや)後輩社員へ先輩社員からのアドバイスを寄せ書きする際「お給料は我慢料」と大きく書いた。

私にとって、拘束されてダサい事務員の制服を着て事務仕事をすることは、苦痛以外の何物でもなかったからだ。仕事で充実感を得た経験はなく、ただただ疲労していた。我慢をすることで額面23万円、手取り17万円が毎月25日に振り込まれる。大真面目に書いたそのメッセージに、他の社員たちは爆笑していた。



「嫌なことがあってもね、ぐっと我慢すると胸の痛みがすうっと引いていくの」

昨年亡くなった父方の祖母は生前、そう母に言ったという。祖母は60代で精神を病んだ。いつも「胸が痛い」と訴え、肺や心臓がどうかあるのか、肋骨がどうかあるのかと、いろんな病院で検査をするも異常なし。精神的なものだと言われ、最後にかかった病院では統合失調症と診断された。


フリーライターとして働いている今、私の収入は我慢料ではない。取材や打ち合わせなどで出かけることがなければ好きな時間に起きるし、好きなときに原稿を書く。髪色は緑にしちゃうし、恐竜のTシャツを着ちゃうし、好きなときに食べたいものを食べる。お酒だって飲みたいときに飲む。

ずっと、我慢をしないと何かを得られないと思っていた。我慢と引き換えだと思っていた。

でも、実際は我慢をしていると得られないもののほうが多いと最近気づいた。

祖母は我慢をしたことで自分の意思を失った。我慢をすると周りから「それでいい人」と思われる。嫌がっているだなんて思われない。だから「この人はどんなことでも受け入れてくれる」と、さらに負荷をかけられ、我慢を積み重ね続けることになる。

やがて、麻痺して痛みも感じなくなり、壊れる。

私は一度完全に壊れたので、もう我慢をしないと決めた。我慢をしないと言っても、ワガママやりたい放題やるわけではない。嫌なことや自分に不利なこと、できないことはNoと伝えるという意味。

その方が人に信頼もされるし、何より自分の心がすり減らない。

我慢をしない我慢をする。


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