2019年に読んだ本のベスト5
2019年も残りわずかです。今年は流し読みも含め、累計105冊の本を読みました。まだあと1週間程度あるので、今後も増えるかと思いますが、とりあえず私の独断と偏見で今年読んだ本のベスト5を発表します。
ちなみに昨年のベスト5はこちら。
【第5位】
『クラウドガール』(朝日新聞出版)金原ひとみ
2016年に朝日新聞で連載されていた小説。金原ひとみさんは『蛇にピアス』や『アッシュベイビー』をはじめ、エログロでエグい作品が定着しているように思いますが、ここ10年ほどで「家族」を描く作品が増えてきました。そしてこの作品は姉妹の絆の物語なのですが、どこか恐ろしい。分かりあえているようで分かりあえていない。最後、背筋がぞっとします。
【第4位】
『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)高橋ユキ
裁判傍聴ライターの高橋ユキさんによる、山口県連続殺人放火事件のルポ。当初、noteでバズり、一気読みしました。高橋さん曰く、noteに書く前にいろんな出版社に持ち込みしたのに「事件から日が経っているから」と取り上げてもらえず、noteで100円で公開→バズる→書籍化とのこと。
追加取材の描き下ろし部分がハラハラものです。こういう閉鎖的な村の秘密ってヌシがなかなか口を割らないもの。それを引き出せるのが高橋さんの取材力の高さです。noteでの公開も一気読みしたけど、書籍でも一気読みしました。こんなことを書くとなんだか上から目線のようですが、莫大な経費をかけているはずなので、きちんと日の目を浴びられて良かったなぁと。
【第3位】
『安楽死を遂げるまで』(小学館)宮下洋一
日本では安楽死は禁じられていますが、スイスやオランダ、ベルギー、ルクセンブルク、アメリカの一部の州では認められています。それでも簡単に死ねるわけではなく、回復の見込みのない難病患者や病気による耐えられない痛みを患っている患者のみに施されます。安楽死を行う団体も主に2つあり、自殺幇助を行う方法(医師が点滴に毒薬を入れて準備し、患者本人がストッパーを外す)と、毒薬を患者自ら飲む方法があります。
著者は目の前で安楽死を見届けます。安楽死の前に患者にインタビューも行っているので、先程まで話していた人が死ぬとはどんな心境なのだろう……。そして著者は安楽死を行う医師と考えの違いで衝突するシーンも。著者の宮下さんは「まだ生きられる可能性のある人を死に導く必要はあるのか」と疑問を持ちます。
この本は安楽死を勧めるものではありません。しかし改めて死とは何か、いつ死ぬかを自分で決められてもいいのではないか、と考えさせられます。
【第2位】
『超孤独死社会 特殊清掃現場をたどる』(毎日新聞出版)菅野久美子
孤独死の特殊清掃現場を追ったルポ。現代の日本では年間孤独死3万人。著者の菅野久美子さんは私と同郷なので親近感を抱いています。いつかお会いしてみたいなぁ。
さて、内容ですが特殊清掃現場とは孤独死や自殺の発見が遅れ、腐敗が始まって腐敗臭と体液で汚れた部屋を掃除する、その名の通り特殊な清掃です。オゾンなどを利用して汚れを除去する場合が多いようです。また、布団の上で亡くなっている場合、体液が布団→畳→畳の下まで染み込んでいるケースもあり、そうなると畳の下の板まで外して作業しないとなりません。
菅野さん、こんな凄まじい現場をよく取材できたなと精神的にも体力的にも尊敬します……。
セルフネグレクトから孤独死へつながるケースも多いそうで、人とのかかわりが希薄となっている現代、他人事ではないと思わされました。
【第1位】
『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)宮口幸治
今までこんなにもショックを受けた作品はないと断言していいほど、初めて知ることばかりで頭がクラクラしました。タイトルには一切発達障害や軽度知的障害の単語は入っていませんが、中身は非小少年たちの一部は発達障害や軽度知的障害により認知能力が弱く、問題行動を起こしてしまうことが書かれています。
不良少年を多く取材してきたルポライターの鈴木大介さんも「不良少年たちは発達障害傾向のある子が多かった」とおっしゃっていました。
彼らは認知、つまり見えている世界が違うのです。それをできるだけ問題行動をおこさないための養育も一部紹介されていて興味深いです。
こないだ書店で見たら、私が買った1刷り目とはデザインが代わり、この帯のケーキの図が本全体のデザインに変更されていて、既に16刷りでした。
非行少年を頭ごなしに怒るのではなく、こうやって専門家が分析をしてそれを世間に伝え、誤解を解くための重要な一冊です。
以上、私の独断と偏見による2019年に読んだ本のランキングでした。
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