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【超ショートショート】(126)~地下に響く音色~☆CHAGE&ASKAライブアルバム『MTV UNPLUGGED LIVE』☆

恐れていた富士山が噴火。
噴火予測通りに、
東京の街にも積灰3センチの火山灰が降り注いだ。

噴火から1日が過ぎると、
火山灰の影響で電化製品すべてが機能を停止。
パソコン、テレビ、スマホ・・・
そして、
電車や車、船、飛行機・・・
すべての電気が止まった。

人々がこれまでのように、
情報にたどり着けず途方にくれる
そんな日々に、
ある希望が持たされる。

「ねぇねぇ聞いた?」

「何?」

「原宿にある明治神宮の地下に、
コンサートホールがあるって(笑)。」

「へぇ~知らない!本当?(笑)」

そんな会話が都民から出始めると、
人々は明治神宮を目指して歩いた。

明治神宮にたどり着くと、
隣の代々木公園まで長蛇の列。

その行列を見た人々は、
噂が本当なのだと確信すると、
列の最後尾に並んだ。

約半日、最後尾から先頭にたどり着くまで。

待ち疲れていた人々は、
明治神宮の鳥居をくぐり、
砂利道の参道を奥まで歩くと、
原宿駅の表参道改札に到着。
すると案内人が、特別な扉を開け、
人々を手招きした。

入場時には、
コンサートチケットは無い代わりに、
案内人から入場日時が書かれた、
リボンを手渡された。

「この会場にいる間は、
必ずお好きな手首に巻いていてください!」

人々が手首にリボンを巻き終えると、
案内人が先頭になり、
緩やかな下り坂の螺旋(らせん)の道を歩いていく。

「皆さんの会場はこちらです!」

案内人が会場の扉を開くと、
同じ黄色いのリボンを巻いた人々が
順番に前側から着席していく。

会場の客席が満席になると、
案内人が扉と閉じた。

そして暗転し、
コンサートの開演となる。

ステージにぞろぞろと人影が見えると
拍手が起こり、
主役のミュージシャンの登場で、
より盛大な拍手が生まれた。

人々は久しぶりの音楽と、
電気による照明、スピーカーからの爆音に、
ただただ感動していた。

コンサートが終演すると、
また案内人が扉を開いて、
人々を案内する。

「皆さん、どうでしたか?
約2時間のコンサートは?」

そんな案内人の質問に、
人々は堰(せき)を切ったように
あちらかもこちらかも会話が生まれた。

「それにしても、
どうしてこの地下には
富士山の火山灰の影響がないんですか?」

すると案内人はこう答えた。

「それは、昔から富士山の噴火は
予測されておりました。
その時に、その時代時代の権力者を、
どのように守るかということが
話し合われてきました。
そして、この明治神宮を人工の森にする際、
もしもの避難場所として、
この地下が作られたと言われています。」

「じゃあ、
今ここに天皇陛下が避難してるんですか?」

「いいえ、天皇陛下は別の安全な場所に
避難なさっていらっしゃいます。」

「そうですか・・・御目にかかれず残念です。」

「そうですよね!でもですね、
今回の皆さんのコンサート観覧は、
天皇陛下からご好意であります。
火山灰で困っている国民に喜ぶをと。」

コンサートのあとは、
食事や入浴、配給の衣服の支給と、
たくさんのお手当てをもらうと、
案内人に再び出口へと案内された。

「あの今の時間は何時ですか?」

「あっ!はい!
今はお昼前の午前11時です。」

「10月1日の?」

「いいえ、10月7日ですよ!今日は!(笑)」

「では、今年は何年ですか?」

「はい!今年は2025年でございます。」

人々が地下の出口から出ると、
目の前に富士山が見えた。

そして、東京の街は、
いつもと同じ渋滞する車、
歩きスマホをする人、
空には飛行機。

「あの、僕らは一体?
富士山の噴火は?」

その質問に案内人は、
「富士山は噴火しておりません。
皆様がここに入らしたのは、
これまでの生活を改めたいと、
自らデジタルデトックスがしたいと、
ご自身のすべてを捨てて、
この地下へと入場なさいました。」

「そんな約束はしていないぞ!(怒)」

「いいえ、皆様は約束しています。
いつも、どんなときも、なんどきも。」

「なら、その証拠を見せてみろ!
無いなら警察に監禁容疑で訴えてやるぞ!(怒)」

その質問に案内人は余裕の笑みを浮かべて、

「皆様の手首にあるじゃないですか!(笑)
皆様が地下で思ったことすべてが、
そのリボンに記録されています。
ぜひ、ご確認ください。」

誰もが、自分のリボンを見返すと、
肩を落としたように、
放心状態になった。

そして、それから何も話す者もなく、
人々は自分が住んでいたはずの街へと
歩いて行った。

☆☆☆☆☆

2021年の今日、
そんな富士山噴火にまつわる、
予言のような古い本が、
原宿を流れる渋谷川から、
発見された。

書かれたのは、1000年代頃。
まだ電気もない時代に、
電気の存在を予言し、
それが人々を苦しめる日常が生まれるとある。
だが、もし富士山のように大きな山が噴火して、
すべての機能を人々が失ったならば、
人々は本当の幸福を思い出すだろうと。

その幸福とは・・・
思いやりと協力、
そして音楽の素晴らしさ。

その古い本の最後にこう書いてある。

~~~~~
人々を救うものは、
いつも、どんなときも、なんどきも、
音楽である。

音楽は、
リズムであり、癒しであり、
人類共通の言語である。
~~~~~

と。

(制作日 2021.10.7(木))
※この物語はフィクションです。

今日は、
1996年10月7日発売
ライブアルバム(CD)
CHAGE&ASKA『MTV UNPLUGGED LIVE』
発売から今日で「25周年」になります。

『アンプラグド ライブ』とは、
プラグを外してのアコースティックライブ。
電球楽器を一切使わず、
生楽器のみの演奏形態を
コンセプトとしているライブ。

CHAGE&ASKAは、
1996年6月9日にロンドンの会場で、
このステージにアジア人として、
初めて立った。

今日のお話は、
その電気をなくした人々を、
予測される富士山の噴火で起きる
火山灰とあわせて、
書いてみました。

地下の設定は、
この『アンプラグド ライブ』が、
観覧者以外には、
確か会場が非公開ということを
参考にしています。

ぜひ、こちらのアルバムを、
どこかで聴いてみてください!
いつもと違うCHAGE&ASKAの
アコースティックな歌声をお楽しみください!

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~

参考にしたライブアルバム
CHAGE&ASKA
『MTV UNPLUGGED LIVE』
(1996.10.7発売)

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