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人様の新居で説教をされて就職一週間で退職した話(前編)

はじめに

雨が続いています。もう6月も終わりですが、今月になってようやく新年度感を強く感じています。そんな方おりませんか?
いらっしゃらない?

個人的にやり場のない新年感をどこかにぶつけたく、はるか昔に自分が学校を卒業してから初めて働き始めたときのことを綴ってみようかなと思います。

ぶっちゃけると職業名を言ってはいけない職業の方たち(ハリポタのヴォルデモートさんではありません)の定宿で働いた時のお話。昔から地味に書いている方のブログに投稿したものを再編集したものになります。それでは。

就職活動の失敗

就職活動の失敗当時の私は大学の卒業時に仕事が決まりませんでした。エントリーシートを書いて、自己分析して、SPIで理数系の問題に沈没しつつ面接も受けるも撃沈。

学校は片道2時間半かかるところにあり、馬鹿長い通学時間をひたすら読書にあてて過ごした4年間。とにかく正社員の仕事がなかったし、就職浪人できるような立場にもいない。

なんとか職業安定所で仕事を探し、無職からほうほうの体で入ったのが都心のど真ん中にあるホテルでした。

初めての職場は歩くにつれて風景が変わっていく土地にあった

当時はとにかく働き口を見つけることに必死。学校まで行かせてもらった申し訳なさもあり、働けるならなんでもいいというのが正直な気持ちだった。

入社試験においては学力試験のようなものはなく、面接のみでその後採用連絡をいただいた。ひとまず、食べていける手段ができた。うれしかった。

そして初出勤の日。面接の時もホテルに行ったので、職場にいくのは2回目だった。初めての時は気づかなかったけど、駅からホテルまで歩くにつれて土地柄はがらっと変わっていった。ひやっとするような、どこか荒んだ雰囲気がそこには流れていた。

初めての就職、同期の女性

中途採用なので、採用が決まってから、働き始めるまでに日数はかからない。研修期間ということで、同期に採用された女性とフロントに立つことから始まる。

同期の女性は同い年くらいの小柄の女性だった。Kさんというその女性は、地方の出で、東京で仕事が決まって収入の道がひらけたので嬉しい、と喜んでいた。給料を見込んで、すでに家賃ん万のところに住んでいるそうだ。働けることになってひと安心しているのはこちらも一緒。うれしかった。

業務説明を受けるものの、そもそも観光業界を志望していたわけではなかったので、サービス業のなんたるかも全くわかっていなかった。上司の男性は奥側にいて様子を見つつ、サポートするやり方をとっていた。

初日は男子風呂に突入から始まった

しかし、徐々に疑問符がたくさん付くようになった。お客様の面相が、見慣れているものと違うのだ。街中で向こうから歩いてきたら、さりげなく距離をとってすれ違うだろう雰囲気を醸し出している人しかこない。

なんかおかしい。

そう思いながら初日の勤務時間も終わりに近づいていたころ、フロントにクレームが入る。備品がないとのことで、バスタオル一式を届けて欲しいとのことだった。

そこで上司からいくように指示をもらう。届け先は男子浴場。脱衣所で◯◯号室の◯◯様と言えば本人がいるからと。今から考えればかなり異様だった。こちらは入社1日目の女性である。他に男性スタッフはいなかったのかと思う。

これが社会人ってやつなのかい?

とはいえ、こちらもすっとぼけているので、仕事の意欲に燃えていたので特に疑問も抱かずに男子風呂の脱衣場に突入した。

◯◯号室の◯◯様〜。
◯◯号室の◯◯様〜。

幾度も呼んだけど返事がない。

この時見た風景はお客様の頭から背中あたりくらいなら覚えているが、そこから下、いわゆる下半身あたりは思い出せない。脳みそが記憶するのを拒絶してる。人間の脳みそなんて都合がいいもんだ。

仕方ないので、浴場の扉をがらっと開けて名前を呼んだ。よくよく考えると私の行動ほうが異様だったと思う。声を張り出してお客様の名前を呼ぶ。

◯◯号室の◯◯様〜。
◯◯号室の◯◯様〜。

反応がない。

お客様から驚いたような、変態を見るような眼差しが私に注がれた。

彼らの背中には立派な模様が広がっている。その時の私はタオルセット一式を届けることしか頭になかった。けれど、端から見れば制服を着たホテルの女性スタッフが男子風呂に突入し、大声を出している構図である

◯◯だ、と後ろから声がかかった。

最初から答えてくれよと思いつつ、タオルセットを渡す。お客様の視線を背中に感じつつ、さっさと引き下がった。これが社会人というやつ、はたらくってことなのかい?と真面目に思った。かなり最初の認識を間違えていた、と今ならわかる。

そこは昼と夜の顔が違う土地だった

それにしてもだ。ここ、もしや普通と違うのでは???とさっき見た光景を思い出しつつ、頭に疑問符をたくさんつけながら夜道を帰っていった。

ホテルの周辺は昼間ですらどこかうすら寂れた雰囲気だけど、夜になるとはっきり治安が悪いところなのだとわかった。怖い。ものすごく怖い。早く立ち去らないと危険だ。非常にすっとんだ社会人認識をした脳みそが告げてきた。

早足で歩き、大きな商業施設のまばゆい光や交差点、せわしなく歩く人の群れが見えてきた時、初めて安堵した。こうして私の社会人1日目は男子風呂に突入して幕を開けた。

次は後編。未だに解けない謎と説教と退職した話です。

続く!!

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