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音楽からゲームを知る

 テレビゲームを構成するいくつかの要素のひとつがサウンド(音楽や効果音)です。ゲームサウンドが幸運だったのは、最初のゲームミュージック・アルバムが1984年4月という早い段階でリリースされていたことでしょう。早い段階でゲームサウンドがゲーム自体から独立した存在として人に触れられる状態にあったのです。ゼビウスを筆頭とした当時のナムコのゲームサウンドが細野晴臣プロデュースの元、アルバム化されました。名前は『ビデオ・ゲーム・ミュージック』。

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 わたしは当時、このレコードの存在を知っていましたが入手する機会はなく。翌年に発売された2枚目『ザ・リターン・オブ・ビデオ・ゲーム・ミュージック』が最初に手に入れたゲームサントラでした。その後、1枚目と2枚目の間に発売された12インチシングル盤の『スーパーゼビウス』を入手。1枚目についても持っていた友人からカセットテープに録音させてもらって後日手元に置くことができたのでした。余談ですが2枚目のリターンオブVGMはジャケットがゲーム画像がひとつも使われていないシャレオツなもので、子ども心に本当にゲームのレコードなんだろうかと不安にさせられたのでした。

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 このナムコの3枚のアルバムがヒットしたからなのか、これらをリリースしたアルファレコードはG.M.O.レコードというゲームミュージック専門のレーベルを立ち上げます。セガ、タイトー、コナミといったナムコ以外のアーケードメーカーのほか、任天堂やハドソンといったファミコンを手掛けるメーカーの音楽もアルバム化していきます。ナムコはいったんビクター音産からアルバムがリリースされますが、遅れてG.M.O.レーベルからも発売されます。

 わたしがよく聴いたものだと、他にアポロン音楽工業からリリースされていたサントラ群があります。初期はコナミに力を入れていて、G.M.O.レーベルに先駆けて沙羅曼蛇のサントラを出していたり、SCC音源を使ったMSX版のアルバムもここから出ていました。そしてアポロンと言えばファミコン時代のドラクエのアルバムですね。G.M.O.レーベルというより、細野晴臣プロデュースの最初のアルバムの時点から実際のゲーム音源のみならずアレンジバージョンが収録されていましたが、ドラクエも実際のオーケストラを使ったアレンジ(というよりすぎやまこういち氏が思い描いていた本来の構成と言えるのかも)と実際のゲーム機が鳴らす音源の両方が収録されていました。

 先日、「当時我々はどのようにゲームと出会っていたか」という記事を書きました。文字どおり、当時我々はどのように「最初に」ゲームと接していたかについて書いたものですが、ここで触れなかったことがあります。それは上記のとおりゲームミュージックのアルバム化が普遍化したことで、最初に音楽からゲームに触れる機会が生まれたこと。

 例えば、わたしが最初に入手した「リターンオブVGM」の場合だと、収録されているグロブダー、ディグダグ2、ドラゴンバスター、メトロクロス、ギャプラス、ドルアーガの塔のうち、アルバムを聴く前に実際にプレイしていたのはギャプラスのみ。ドルアーガも存在は知ってましたが、まだ本格的にプレイしていませんでした。ドラゴンバスターも未プレイでしたがルームガーダーの曲はやたらゲーセンで鳴り響いていたのでこれだけ知ってるという。こんな状態でアルバムに触れました。その後、ドルアーガを本格的にプレイし始めたときに、あの音楽はここで使われていたのかという発見と共にプレイすることになったのです。

 その後、ゲーム自体は元よりゲーム音楽にもわたしは強い関心を持つようになり、元のゲームに触れていなくてもアルバムを買うようになります。グラディウスやアウトラン辺りは実際のゲーム中よりサントラで聴いたのが先でした。G.M.O.レーベルのグラディウスはステージ5~6~7が1ループずつフェードアウト無しで繋がれれているので、最初はこれでひとつの曲だと思ってたのが、はじめて実際にプレイしたときに別々の曲だったのを知り、とても違和感を感じたのを覚えてます。

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 それと忘れちゃならないのがゲーム総合誌「Beep」にたまに付録で付いていたソノシート。ファンタジーゾーンやカルテットは、このソノシートではじめて聴きました。ライフフォースの4面もソノシートが初だったな。

 こんな感じでゲームミュージックに触れてきたので、実際のゲームは全くやっていない、あるいは触りくらいしかやっていないのに音楽は好きというタイトルがいくつかあります。コナミのA-JAXやフラックアタック、恋のホットロック、WECル・マン24。タイトーのニンジャウォーリアーズやナイトストライカー。データーイーストの空牙。UPLの忍者くん阿修羅ノ章。ナムコのサンダーセプター、アサルト等々。

 同じく先日アップした「マイ・ベスト・アーケードゲーム」で紹介したタイトルはハマってゲーセンに通い詰めたゲーム群なので、その大半は先にゲーム中でサウンドを聴き、後からサントラでじっくり聴くパターンが多かった。グラディウスII、ベラボーマン、パワードリフト、ダライアスII、ダライアス外伝といった辺りはこのパターンで、ゲームをしながらメロディが頭に刻み込まれたあと、サントラ化されるのを待ちわびるという順番でした。

 G.M.O.レーベルはその後、サイトロンレーベルとなり、メーカーごとにアルバム化という形は同じのまま、メーカーのサウンドチームがバンドを組み、自らアレンジを手掛けつつライブも行なうというのが主流になっていきます。コナミや日本ファルコムが独自にレーベルを立ち上げるという動きがあったり、ゲーム攻略ビデオという形で映像商品がリリースされ始めたりもします。この辺りはアーケードゲーム専門誌「ゲーメスト」が力を入れていました。その後、VHSからDVDと媒体が変わり、今はネットの動画配信を個人レベルで行なうという時代になっています。

 2021年、小樽文学館で開催予定の『小樽・札幌ゲーセン物語』展はゲーセンがメインテーマとなっていますが、アーケードゲームに付随するゲームサウンドも無視できない要素と考え、上に挙げたゲーム音楽関連のアイテムも可能な範囲で展示する予定です。

■ 地方の文学館でテレビゲーム展を開催する・バックナンバー
https://note.com/hilow_zero/m/m535d51202b05

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