10月HILLOCK ART LABO
◎振り返り。失敗を科学する。
◎何があったらルーブゴールドバーグマシンか?お友達に伝えるために。
◎誰かの真似→自分でつくる→そして概念へ
◎アッセンブリーな熱狂
◎注意深く「評価」を入れない「すごいね!上手だね!が邪魔するもの」
◎片付けもしたいを実現させる
◎幸せになる学びしましたか?
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◎振り返り。失敗を科学する。
10月のHILLOCK ART LABは前回の続き、ルーブゴールドバーグマシン。
1ヶ月前のセッションの最後に置いた礎石の場所をみんなで再度確認するところから。
「今日もう1回ピタゴラやろうって決めたのってどういうところからだったっけ?」と問うと
「ミロちゃん、ピタゴラじゃなくてルーブゴールドバーグマシンでしょ〜」
と眩しい笑顔に乗ってアート文脈での名称が返ってきます。小さいひとたち、よく覚えている。
「もういっかいやりたいのは、楽しかったから!」
「うん。楽しかったんだね!他には?」
「失敗したところを工夫したい」
「前回うまくいかないってわかったところを変えたい」
(具体的にどこをどうしたいかまで伝えてくれる)
「他にはある?」
「またチームでやりたい!楽しかったから!」
「ひとりも良かったけど、他の人が来てくれて3人になったらそれも楽しかった」
「そっか。3人になって楽しかったのはどんなところ?」
「えー。なんか自分が思ってなかったコースができた」
そいうひともいれば
「今日もひとりでやりたい。この前失敗したところ、うちで考えてきた!」
というひとも。
「他にはある?」さらに聞く。
「片付けもしたい。この前は片付けができなくてミロさんたちにやらせちゃったから」
「そっか。じゃあ今日は片付ける時間もつくろう!」
それぞれが、前回の取り組みで『失敗』『うまくいかなかったところ』をどうしてだろうと考えて分析して、そこを工夫して再度取り組もうとしていることがわかります。仲間と共有してオープンイノヴェーションな活動となっています。この過程にすでに成長が見て取れます。
ヒロックの小さなそうぞうびとがしていること、それは「失敗を科学する」行為です。
この日、奇しくもミロのリュックの中に入っていた一冊の本、それは「失敗の科学」。それを取り出して、失敗を共に称え合い学びとするヒロックのみんなの素晴らしさをお伝えせずにはいられませんでした。
それは、この日ヒロックにくる前の週に訪れていた、日本海にポツンと浮かぶ隠岐島は海士町での体験から。海士町には高校がひとつあります。隠岐島前高校と言います。とてもユニークな取り組みをたくさんしている高校です。同校では今年、「失敗を共に称え合い、未来に踏み込みを宣言する1日」として、10月13日に第一回「失敗の日」が実施されたばかりでした。失敗の日というのは元々はフィンランド共和国で、同日を失敗を称え合う日として制定されていたものだそうです。それを島前本校で、「失敗を共に称え合う学校」を学校経営スローガンに掲げ、フィンランドにならって10月13日を「失敗の日」として制定したのだそうです。
島前高校の取組が、ここヒロックでも日常で行われているのです。
(同校の失敗の日のレポートはこちらです。https://www.dozen.ed.jp/local/7386/)
ミロのリュックに入っている本を知っていた!?かと思うようなヒロックのそうぞうびとたちとのイントロダクションに驚きながら、今月のヒロックアートラボがはじまりました。
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◎何があったらルーブゴールドバーグマシンか?お友達に伝えるために。
先月からの続きをどんどん試していくヒロックのそうぞうびとたち。
その中に2人、今日初めてこのアートラボを体験するひとがいました。あたらしいクラスメイトです。そのあたらしいクラスメイトが聞いてくれました。
「それで、今は、何をすればいいんですかー」
「ルーブゴールドバーグマシンっていう、ピタゴラスイッチみたいなのを作るんだよ」
お友達が応えます。
「そうそう、出来事があると物事が面白く感じるの。何か物事が起きる仕掛けを作るの」と別の子も応えます。
ふ〜んと頭をかしげるあたらしい女の子。
そこでみんなに問いました。
「ねぇ、どんな要素、要素ってわかるかな?どんなことがあったら、ルーブゴールドバーグマシンになるのかな?」
◎誰かの真似→自分でつくる→そして概念へ
前回はみんなと、ピタゴラの話、ルーブゴールドバーグの話をして、フィッシュリ&ヴァイスの作品を見ました。見たことがあるピタゴラやフィッシュリ&ヴァイスの作品を真似して、みんなは自分(自分達)なりの作品をつくりました。自分の頭と手を動かしてつくってみたからこそ、わかったこと、理解しかけたものがあるはずです。
それを要素として出し合ってルーブゴールドマシンとは?を定義していきます。
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「仕掛けがあること」と元気な声が自信をまとって飛んできます。
「転がして真っ直ぐいくんじゃなくて、曲がったりする仕掛け」とさらに詳しい説明が、援護射撃のごとく加えられていきます。
「カタカタもあるし、穴があってどこに入るかわからないとかも面白いよ」
「うん、なるほど、仕掛けね。他にはある?」
「転がすもの!ボールとか、ビー玉とか」
「自分で粘土で作ってもいいよ!」
「うん。仕掛けと、転がるものね。他にはある?」
実際にお友達の仕掛けと、ボールを手にして見せると
「あ!きっかけ!」と驚いたような声が飛んできました。
「きっかけ?」
「うん!最初のスタートだけ、何か押したりしてボールを動かすきっかけがいる」
「それがないと、スタートしないから!きっかけは、エネルギーとか?」
「最初だけでいい。押したりするの。あとは重力があるから下に転がっていくから」
「そう!だからスタートは上の方で、ゴールは下の方」
「なるほど、スタートのきっかけのエネルギーに、途中の仕掛けと、転がるボールと、あと重力ね。それだけでルーブゴールドバーグマシンになる?」
少し考えていた男の子が言いました。
「ゴールもいるよ。スタートとゴール。スタートがあるとゴールができる」
「ゴールは、点数とかついても面白いんだよ」
「ゴールは、ゲームとかにしてもいいしね」
ここまできて、新しいクラスメイトの女の子が口を開きます。
「きっかけの仕組み思いついた!それ作る!」
ヒロックの小さいそうぞうびとのルーブゴールドバーグマシン定義が
「きっかけになるスタート+最初にボールを動かすエネルギー+重力+面白いさまざまな仕組み+ゴールがある仕掛け」と定まりまったところで、
さらに手を動かす速度は加速していきました。
あちらでもこちらでも、失敗して工夫して、思った通りに行くと大きな歓声が上がります。
あっという間に発表の時間。
順番に今日の取り組みと工夫をプレゼンテーションしてから、いざ本番!
ボールを転がします。
順番が来て次はAさん。タワーの上から転がしたピンポン玉が、最後は立てて置いたトイレットペーパーの芯の上の穴にぽこんっと入る仕掛けです。
「絶対成功するから!動画撮って!」
と歓声のような声へとカメラを向け、
お友達がその周りを囲みます。
◎アッセンブリーな熱狂
いざカメラを構えると、10回やってもうまくいかない。この前は、地団駄踏んでいたAさんですが、今日は失敗にめげません。さもありなんという顔で、微調整を繰り返しています。ひと月でこんなにも逞しく成長するのかと、その健やかさと瑞々しさに圧倒されます。
みているお友達が「ここで曲がったね」「ボールが当たって、ここがちょっとずれたんだよ」と起きていることを具体的に伝えます。
ちょっとずつの工夫を重ね、もうかれこれ20回目ぐらい。
次回でいったん終わりにして、次の人と決めた時でした。
誰からともなく、
「入れー」という声が上がりました。すると「入れ!入れ!」と次々に「入ってほしい!」願いが伝播して手拍子と共にヒロックの空間を埋め尽くしていきました。
「入れ入れ!」の大合唱。場と体験を共にした共同体の仲間を応援したい気持ちが溢れてアッセンブリーな熱狂が起きています。
そして、奇跡が起こりました。
大歓声とたくさんの視線に導かれるように、ピンポン玉がトイレットペーパーの芯の穴の上に、「僕の居場所はここなんでしょ」と言わんとばかりに、ぽこん!と乗ったのです。
「やったーーーー!!!」と大歓声と共に一同飛び跳ねます。
目の前で起きている事実に対して全身が反応して動く。知覚と身体が切り離されていない小さいひとたち。
◎注意深く「評価」を入れない「すごいね!上手だね!が邪魔するもの」
大騒ぎの室内。繰り返される失敗と工夫と、その先にあるかもしれない表現。表現以前の行為の中にある豊かさ。
その豊かさはいわゆる「すごいね!上手だね」というような評価とは無縁の世界がひろがります。
誰の取り組みが上手だとか優劣がないのです。どの取り組みもが互いに尊重され賞賛されていきます。この形になる以前の傍目からは生産的とは見えにくい過程こそが豊かだなと思います。
◎片付けもしたいを実現させる
全員のプレゼンのあとは、お片付け。もう毎回、時間ギリギリでこの日も片付けの時間はなかったものの、最初に「片付けまで自分達でしたい」といったk君の言葉をみんなが覚えていて、目にも止まらぬ早業で凄まじい勢いで片付けを進めてくれました。
みんなでやると早い。ものの5分で片付いて、サークルタイムに。
◎幸せになる学びしましたか?
毎日の終わりに円座になって目を閉じて心を落ち着かせる時間がヒロックにはあります。ミロも毎回ご一緒させてもらいます。
ワッサワサだった今日が、静寂に包まれます。
目を開けるといつも蓑さんがこう問いかけます。
「今日も幸せになる学びできましたか?」
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今日も、大変幸せでした。ありがとうございました。
レポートが散漫になりましたがお許しください。
次回もまた楽しみです。
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