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「テーラーメイド・ドライビング・リリーフ」がなぜ感動的だったか?個人的感動ポイント紹介

日本時間5/17(月)未明に行われた「テーラーメイド・ドライビング・リリーフ」を見て感動したので、なぜ感動したのか、書き記しておきます。

それって何?

世界のトッププレーヤーである、ローリー・マキロイ、ダスティン・ジョンソン、リッキー・ファウラー、マシュー・ウルフの4選手が、米国フロリダ州にある、セミノールゴルフクラブで行ったチャリティーマッチです。3月中旬に開催されていた「The PLAYERS Championship」の第1日目以来、初めてPGAツアープレーヤーたちがライブ中継されたということになります。ローリー&ダスティンが、リッキー&マシュー組を相手にベストボールのスキンズゲームで戦いました。

日本ではGOLF NETWORKや、GOLF TVで生中継しました。サブスクしていれば、GOLF TVではアーカイブで全部観れます。

私的感動ポイント その1「歩きの担ぎに共感した」

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今大会が発表されたのは、数週間前だったと思います。当初は「まあ、4人くらいのテレビマッチで再開するのは良い方法だな」くらいに思っていました。ところが蓋を開けるとどっこい。日本でいうところの「新しい生活様式」を実現した大会でした。

4人ティーショットを放ち、スタートしていくと、全員自分でキャディーバッグを担ぎだしました

その姿は、僕たちと同じ、ただのゴルファー。

通常、プロゴルファーは、お世話をしてくれているキャディーを従え、プレーします。アメリカの一般的なゴルファーは、電動カート利用が主流です。歩きセルフのプレーは、素朴なゴルフコースか、学生ゴルフという印象です。欧州では、老若男女みんな自分でバッグ担いだりしてプレーしますが、アメリカだと社会的地位のある人ほど、電動カート利用か、キャディーを従えてのプレーが当たり前になってきます。おそらく、トッププロたちもそうでしょう。

「自分のバッグを担いで(まで)、ゴルフをプレーしたいか」

自分のバッグを担いでフェアウェーを歩く姿に、僕自身がプレーしてきた数々のゴルフを重ねて、共感を覚え、少し感動しました。
僕のような、どうしようもないゴルファーと、やっていることが一緒でした。

その2「ゴルフが超上手い、ただの地球人だと再認識した」

自分たちと変わらないゴルファーだという共感が、トッププレーヤーたちと同じ目線で見ることを可能にしてくれました。
普段の中継は、上位や有名選手が多くフォーカスされるので、選手たち全てのショットを追いかけることはありません。試合感が戻っていないためか、結構ティーショットも曲げていたし、ウエッジでグリーンを外したりもしていました。
普段の中継では、良いショットか、試合が動く瞬間しか見ることがないわけですが、今回は「なんだ、結構ミスるじゃん」と思う瞬間が多々ありました。
一方、選手たちと同じ人間だと共感するが故に、「今のショットは上手過ぎる」と思うケースも多かったです。わかっていますが、マシュー・ウルフが350ヤード飛ばすということを、自分の物差しとして理解できました。彼らは、特別な人間でもなければ、特殊能力も持っていない。ただ、超絶にゴルフが上手いだけなのだと。


その3「わかりやすいチャリティーの構造」

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今回は、マキロイとダスティン組が「American Nurses Foundation」、ファウラーとウルフ組が「CDC Foundation」を代表してプレー。獲得したスキンズ分の金額がそれぞれの団体に寄付される、というものでした。そのほかにも、Farmers Insuranceがバーディー数に応じたボーナスを用意するなど、「誰が何をしたらどんなことが起きるのか」がとても明確で応援しやすい座組みでした。
今回の中継には、大きく分けて、4通りの当事者がいます。それぞれの相関関係は、

選手:社会的責任のため自分たちの商品価値を提供し、観る人々を楽しませ、価値を生む
興行者(制作やツアーなど):選手たちの価値を最大限にするための興行を成功させる
スポンサー:興行価値及び、チャリティーのメッセージに対し合意。ブランドイメージや社会的責任を果たすための価値を見出し、投資する
視聴者:興行に共感。価値の分、社会的責任を果たすために募金。(選手、興行者、スポンサーにも感謝&イメージアップ)

日本と、文化、税制的な違いがありますが、この連鎖反応が起こり、550万ドル(約6億円)もの基金が集まり、関わる全ての当事者たちにとってwin/winの状態のイベントになったということです。
映画「ボヘミアンラプソディー」のLIVE AIDで、QUEEN登場で募金額が跳ね上がる時、みたいなことが、起こっている感覚でした。この構造が成立するのを見た時、感動しました。

その4「ゴルフコース設計」の魅力

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今回は、セミノールゴルフクラブがテレビ初登場しました。

「世界トップ100コース」の制覇を目指す人たちの話を聞く限りでは、サイプレスポイントやオーガスタナショナルの次くらいに「まだ回ってない」率が多いコースで、ある意味、「未知との遭遇」でした。

ゴルフ場設計の話になる時、たびたび「セミノールはプレーしたか?」と話題になるコースです。僕みたいな、どうしようもないゴルファーはまだ回ってないのですが、どんなコースなのか、とても楽しみにしていました。

テレビの中継だけでは当然伝わりきらない部分もありますが、第一印象は「グリーンへのアプローチがむずいコース」です。
「こんな広いフェアウェー外すかよ」と思うくらいフェアウェーは広いですが、グリーンへのセカンドショットがシビア。
ピンをオーバーすれば、即、奥のコレクションエリアに落ちてしまったり、そもそもバンカーで囲まれたグリーンだったり。
350ヤードを飛ばすマキロイやウルフが、ウェッジでグリーン外すシーンなんか、最高。グリーンブックも持っていないし、このために練習ラウンドだってしていないので、本来のポテンシャルは出せないのでしょうが、「ウエッジなら自動的にOKバーディーの距離」みたいなことはないわけです。トップ選手たちがコースを相手に苦戦する。ここも共感を呼ぶポイントになったんではないでしょうか。
4人のプレーを見ながら、じっくりコースを堪能する。そんなテレビ中継って、中々なかったのではないでしょうか。
コースが果たす役割の大切さと、さらに深まる憧れに感動しました。

まとめ:「プレーを見る」と「勝負の展開を追うこと」の違い

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今回改めて感じたのは、「トッププレーヤーのプレーは、見るだけで面白い」ということでした。
普段のテレビ中継では、ナイスショットや、試合展開の動きばかり映されるので、1選手の18ホールをリアルタイムで追うことなど、ほぼないです。それを可能にするのが、現場観戦の醍醐味、と説明することもありました。

その選手が、どのように18ホールを回ったのか。

これを見るだけで十分面白いということが、多くの視聴者に伝わったのだと思います。
一方、今回は、どのチームがスキンを獲得したとか、正直どうでもよかったです。いわゆる「勝負の展開を追うこと」というのは、全く重要ではなかったと思います。それでも、面白い。ゴルフ観戦の魅力が、この2パターンあるということが、広く伝わったことでしょう。


ライブゴルフに価値があることを示した

先日書いた記事に通じるところなんですが、「スポーツのマーケティング」と「スポーツを活用したマーケティング」の両輪が動いている瞬間を見た気がします。ゴルフファンが選手たちに憧れ、お金を払ってでも見る価値があることを、視聴者の募金が証明しましたし、その様子に対し、価値があることを、スポンサーたちの募金が証明しました。チャリティーイベントという特性があるにせよ、この4人が一緒にゴルフをすることは、6億円の価値を付けられる興行だということを証明しました。
そして、ゴルフが社会に必要とされていること社会に貢献していること「新しい生活様式」に沿って行えることそれでも、楽しいこと。それらを、ゴルファーや、全関係者、そして政府に証明しました。トランプ大統領は、電話生出演し、生でその価値を認めることになりました
ゴルフの本質的な楽しみを浮き彫りにしたことによる共感が感動につながったのだと思います。

長文読んでいただきありがとうございました!




ここからは、僕の私見マックスで、割と無責任に普段あまり言わないこと言ってます。読まなくてもこの記事の内容に支障ないので問題ないです。
有益性をあまり期待せず、僕にビール奢る感覚で、購読してください。

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