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【転職】商社マンが持つ、4つのポータブル・スキルとは

最近よく聞く言葉の一つが、「ポータブル・スキル」。業種や業界を超えた転職が一般的になってきた昨今、重要視されるようになった考え方です。

今回、業種も業界も完全に変える転職をした(してしまった)私が、「商社マンの持つポータブルスキル」について考察してみました。

少しばかり手前味噌な内容になっておりますが、是非最後までご一読ください。

ポータブル・スキルとは

日本語訳はそのまま「持ち運び可能なスキル」。これだけだとよく分かりませんので、各々の定義を見てみましょう。

例えば、GLOBISは「①思考力、②課題解決スキル、③人を巻き込む力」の3つを挙げています。また、厚生労働省は「①専門知識/技術、②仕事のし方、③人とのかかわり方」としています。

厚生労働省は専門知識・技術をポータブル・スキルに入れていますが、多くのサイトではそれは「テクニカル・スキル」に分類し、「①対自分力、②対課題力、③対人力」の3つをポータブル・スキルとしていました。

しかし夫々の見出しからもお分かりの通り、ふわっとした表現が多く、「自分にポータブル・スキルがあるのか、あるとしてその程度がどうなのか」というのは非常に判断しづらく、真に気付けるのは「自分が転職した時」でしょう。

業種も業界も完全に変えてしまった私

一切勘の働かない自分に愕然とする

私は住友商事時代、農業分野におけるグローバルM&Aを主な舞台とし、ブラジル・ウクライナでは計5年駐在していました。他にもスタートアップ投資などを手掛け、ファイナンスやアカウンティングに強みを持ちます。

一方、今の私の業務範囲は以下の通り。

①経営戦略、②人事戦略、③デジタルマーケティング、④PR、⑤コーポレートDX、⑥スポーツチーム連携
(8月1日より⑦海外事業、⑧新規事業が加わる予定)

この中で私が経験があったり、テクニカル・スキルが使えるものはほぼ無く、①の一部と、⑦くらいです。後は完全に一見さん状態。

更に、業界も「農業⇒医療」と完全に変えてしまったことで、業界知識も完全にイチから学ばなくてはなりません。

最初の頃の「勘の働かなさ」、「覚えなくてはならない知識の多さ」には愕然とし、直感で転職した自分を一瞬恨んだりもしました。

意外とGive出来ることに気付き始める

勝負できるカードが全くない中で日々藻掻き苦しんでいましたが、意外と周囲に貢献出来ている瞬間があることに気付きます。

具体的には、議題に上がっている要素を100%理解していない状態でも意義のあるアドバイスが出来たり、各メンバーのポテンシャルを引き出すことが出来たり、といった具合です。

勿論まだまだ未熟ですが、転職後に呆然としていた頃に想像したよりは早くメンバーに貢献出来ている気がして、それは私のどんな「ポータブル・スキル」が援けてくれているのか、を考えてみるきっかけとなりました。

私の考える、商社マンのポータブル・スキルたち

今の私を首の皮一枚で生き永らえさせてくれている、転職後に気付いたポータブル・スキルは以下の通りです。そして、これらは多くの商社マンが共通して有するものだと思います。

①多様な価値観・考えを受け入れられる(≒受容力)

約30ヶ国の方々と仕事をし、2ヶ国に駐在すると、「自分の価値観が如何に当たり前ではないか」を骨髄レベルで認識しますし、世の中に存在する価値観の多様さには、日々打ちのめされます。

その結果、自分とどれだけ意見が食い違ったとしても、「自分が正しい、相手が間違っている」という発想にはならず、「何故その差異が生まれるのか」だけをゼロベースで考えるようになります。

言い換えると、メタ認知が出来ている、ともいえるかもしれません。

そのため、あまり他者とコンフリクトを起こすこと無く、議論を建設的な形でリードすることが可能になります。

②相手の理解レベル・心理状態に合わせた展開が出来る(≒説得力?)

相手に何かを理解してもらいたい、若しくは納得してもらいたい場面において、「自分の価値観」を極力殺した展開が出来ているように思います。

人間が二人いれば、必ず「認知のズレ」が生まれます。数人集まれば、もうズレだらけ、歪みまくり。この「とてつもないズレがある」という前提でプレゼン・説明をするかどうかによって、その説得力は大きく変わります。

事前に相手の理解レベルと心理状態を想定して準備し、説明しながら相手の状態を見極め、修正する。①の受容力を攻めに転じると、大きな武器になると感じています。

③マクロとミクロを常に往復している(≒俯瞰力?)

総合商社はすぐに「社員一人ひとりが経営人材を目指す」とか「経営人材を1,000人育てる」とか嘯きますが、誇大広告にも甚だしい。総合商社の中に「真の経営者」など殆どいません。いても、大半は「なんちゃって経営者」です。

ですが、「社員の大半がファイナンスとアカウンティングの基本知識を有している」「ローテーションによって2部署・3部署を早期に経験している」、この2点は経営に繋がる大きな強みです。

経理や審査部隊のみならず、営業部門も常に財務諸表を意識します。事業会社が多いこともあり、財務諸表が読めなければそもそも仕事になりません。

また早期に2部署・3部署を経験することで、各部署がタテ・ヨコどのように繋がっているかを認識する機会を得るので、タコツボにならず俯瞰で組織を見れるようになります。

この2点により「個」と「集」、「マクロ」と「ミクロ」をいつでも往復できることは、提案や判断のクオリティを自然と引き上げると思います。

④他者の力を使って当たり前だと思っている(≒?)

商社は本当に自社だけでは何も出来ないですし、社内もかなり分業制になっているので、「すぐに人の力を頼る癖」がついています。

人の力を上手く頼ると、結果的にそれは「人を巻き込む」ことにもなり、「人を頼ってるだけなのに、社内の繋がりを生む」なんてこともあります。

変に自分で抱え込まずに結果を重視し、他者の力を積極的に借りることが出来る。これは意外と大きなポータブル・スキルに感じています。

採用した商社マンに絶望しないために

n数は多くないですが、時に「商社マン採用したけど、全然使えない」という声をいただきます。

事案は夫々にユニークなので一概には言えませんが、話を伺うと、多くのケースで「期待設定とポジショニングが間違っている」と感じます。

以下が、上記のポータブル・スキルに鑑みて、私が独断と偏見で作成した「商社マンを上手く使うためのTips」です。

①0⇒1を期待しすぎない
・商社において「ゼロイチ」を求められる部署は非常に少ないです。総合商社の生業であるM&Aは勿論違いますし、それ以外の仕事も「100⇒1,000」や「1,000⇒10,000」を目指すものが多い。
・そのため、新規事業発掘を任せるのもいいですが、「それだけ」にしてしまうと結果が出ず、互いに不幸になるかもしれません。

②素人集団のリーダーとか適任
・会社として「これをやりたいけど、経験者がいない・・」といった時に、社内の素人たちを集め、そこのリーダーにしてみるといいかもしれません。
・自分の人脈や柔軟性を活かし、いろんなアプローチをトライしつつ、メンバーを鼓舞して結果を出してくれそうです。
・なお、これは「ゼロイチ」とは似て非なるものです。何が違うか。「何をやるか」が決まっていることです。いうなれば「0.1⇒100」であり、これは得意な人が多いです。

③社長に近い所の「よろず相談窓口」にも
・視野が広く、また他者の力を使うことへの外連味も無いので、よろず相談窓口はかなり適任です。
・相談を受けたら、「きっとそれ〇〇部署の△△さんが知ってそうだから、一緒に聞きに行こう」といった動きをしてくれますし、社長に言いづらいこともうまーく伝えてくれます。
・これが上手く機能すると、社内の不平不満を吸い上げやすくなる効果もありそうです。

おわりに

最後の部分は、かなり独断と偏見に満ちています。何人かのリファレンスを取ったものでもないので、きっと歪んだ認知の影響を受けているでしょう。

ですが、かなり特異な業界である「商社マン」の理解深化に少しでも貢献出来ていれば幸いです。

次回は久々に子育てについて書いてみたいと思います。

では、また来週。

細田 薫


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