やさしいひとがやさしいひとが
自転車を押しつつ呪文のように言うやさしいひとがやさしいひとが 東直子(『セレクション歌人』)
この世界にはやさしいひとが補充されてゆくシステムがあるって聞いたことがある。そのひとは私がもう眠ろうとしたときに話し始めたので、肝心なことは聞けていない。
私が聞きたかったのは、私もその補充されたやさしいひとなんですか、ということだった。でも優しさうんぬんの前に私は眠ってしまっていた。それはやさしいとかやさしくないとかでなく、ねむたいとかねむたくないとかの問題で、あと、素直だったと思う。
小鳥のように素直に私はことんと眠りに落ちた。かろうじて私が聞いたのは、
「この世界には呪文みたいに存在しているひとたちがいる」
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