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霧になる

十人のひとり残らず霧になる  小久保佳世子(『アングル』)

すごく悲しい日でも、すごく嬉しい日でも、話すことのできる量が最初から決まっている俳句って羨ましいなと思うことがある。

みんな霧になってしまった後も、私は長く、こんなことがあったよ、と話すことはできない。私が悲しかったか、苦しかったかも。
ただこんな風に言う。

みんな残らず霧になってしまいました。

そうして後はずうっとあなたからの返事を待つ。

前も、後ろも、消えてしまう、俳句って霧の言葉なのかなと思う。

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