それが僕でないこと
どの虹にも第一発見した者がゐることそれが僕でないこと 光森裕樹(『鈴を産むひばり』)
ケーキを買うために並んでいたら、前のひとたちが一気に買い占めてしまい、自分の買うぶんがなくなってしまった。
算数の問題でもよくりんごやみかんを配っているけれど、きっと自分は算数の問題の外にいて、そのりんごやみかんをもらえないひとなのかもな、と思うことがけっこうあった。
でも、おんなじように算数の問題の外にいるひとと、このまま長く生きていたら、出会えるかもしれない、そうして、「あああなたも算数の外でしたか、りんごやみかんをもらえなかったたぐいのひとでしたか」と笑いあえる未来があるかも、とぼんやり思ったりもしたけれど、買えなかったケーキのことを考えると、ただたんにひとりでこのまま果てのない広野を巨大なフォークを持ってひとり歩いてゆくのかも、とも思った。
「なんのためにそんなに大きなフォークを持っているの?」と私は聞かれる。それはさんすうのもんだいなんかじゃぜんぜんない。
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