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Funny when you're dead how people start listenin' -- 彼の死に想う

エイプリルフールの冗談にしては、あまりにも遅すぎると思った。ジョークニュースにしても、何だかセンスが悪すぎる。

ああ。できれば信じたくない。

でも、そうなのかもしれない。

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2018年4月20日、若い才能の輝きがひとつ、この世界からぽっと消えた。誰が予測できただろうか、こんな出来事が起こるなんて。きっと誰も、1ミリも考えやしなかっただろう。

「Aviciiが逝った。」

彼の類い稀なる才能に世界中が圧倒され、影響を受け、夢中になって体を揺らした。その若い才能がこれからも放ち続けるだろう新しい音楽に、世界中がじっと耳を澄ませていた。それなのに。静けさから聞こえてきたのは、あまりにも辛すぎる知らせだった。

私は、彼の楽曲や彼自身についてあまり詳しくはなかった。それでも、代表的な曲はもちろん知っていたし、私が親しんできた音楽シーンの中でも印象的な人物だった。高校時代の友人と、"Wake Me Up"を大きな声で歌いながら笑った思い出もある。だから、たとえ大ファンとは呼べなかった私でさえ、彼の訃報には堪えるものがあった。何よりも、同じ20代という若さが悔やまれてならない。

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訃報を知った翌日、私は出かけるために電車に乗っていた。移動するときはいつでもイヤフォンが手離せない私は、その日も電車に揺られながら音楽を聴いていた。追悼のつもりで、彼の曲を聴いてみようと思った。

久々に耳にする彼の音楽は、あまりにも陽気で、明るくて、皮肉なほどに軽快だった。なんだか胸が痛くなって、一、二曲聴くのが精一杯だった。彼の作品をこれから開拓していったとしても、今日からは全部が「彼が生きていた頃の作品」であり、新しく増えていくことはない。そう考えるとなんだか耐えられなくて、聴くのを止めてしまった。こんなきっかけで「彼の音楽を聴いてみよう」と思いたくはなかった。

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私が大好きな曲に、The Band Perryの"If I Die Young"という曲がある。

2011年のグラミー賞で"Best New Artist(最優秀新人賞)"にノミネートされて知ったときから、私は自分の葬式では絶対にこの曲をかけてほしいと心に決めている(Original ver.もいいが、私はPop ver.の方が好きだ)。

"If I Die Young"の一節がとても好きだ。

A penny for my thoughts, oh no I'll sell them for a dollar
They're worth so much more after I'm a goner
And maybe then you'll hear the words I been singin'
Funny when you're dead how people start listenin'

何を考えているか教えてって?お金じゃ簡単に教えられないよ
帰らぬ人となった後には もっと価値がつくはずだもの
そしてきっと 私が今まで歌ってきた言葉も聴くのでしょう
可笑しいよね いなくなってから初めて 人々は耳を傾けてくれるの

マイケル・ジャクソンが2009年に亡くなったニュースを見て、私は初めてマイケルの歌をちゃんと聴いた。彼の黄金時代を知らなかった私には、皮肉にもその出来事が「彼の歌を聴いてみよう」と思う唯一のきっかけになってしまった。

エイミー・ワインハウスが亡くなったあとも、ゴッホが自ら命を絶ったあとも、同じだったのかもしれない。その人がいなくなってから、初めてその人の価値の大きさを思い知らされ、想いを馳せる。でもその頃にはもう、その想いが彼らに届くことはない。

だからこそ、その人が生きている間に価値に気付きたいし、まだ私が知らないだけで世界のどこかで輝いている才能に、できるだけ早く、多く触れたいと思う。悲しいニュースが何かを知るための起爆剤になるのは心苦しい。でも、それを完璧に避けることはきっとこれからも難しいのだろう。今回の訃報を聞いて、私が強く感じたことだった。

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The sharp knife of a short life,
Well I've had just enough time

鋭く尖ったナイフのように 短い人生だった
でもいいさ 充分な時間を過ごしたから

彼の音楽を聴くには、まだ少し時間が要りそうだ。

でも、世界中を熱狂させてくれた彼に、いまは「ありがとう」「安らかに」と言いたい。

Rest in peace, Avicii.

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※ 本記事中の引用部分はすべてThe Band Perry "If I Die Young"の歌詞抜粋です。日本語訳は他の和訳サイトを参考にしながら自分なりに解釈・和訳しました。和訳する人によって解釈も微妙に違うので、気になる方は以下もぜひどうぞ。

【和訳参考サイト】

・およげ!対訳くん

・Someone's blog

・VOICE 心に響く洋楽

・ENCHANTED

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