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待ち受け画面・今むかし

中学生の頃、持っていたのは折りたたみ式のケータイ電話。大人になったいまの自分に言わせてみれば、“ガラケー”だ。やたらと大きくて重たい、ぬいぐるみみたいなストラップをいくつも付け、ポケットからじゃらじゃらと垂らしているのがあの頃のカッコよさだった。少なくとも私はそう記憶している。

当時のケータイの待ち受け画面には、定番みたいなものがあった。たとえば、キラキラのギャル文字で書かれた、いま考えるとクサすぎるポエム画像だとか、好きなアイドルの写真がゴテゴテにデコられた画像とか、これを待ち受け画面にすると恋が叶うとかいう画像とか。あとは、近所のゲーセンで友達とPUMAのジャージ姿で撮ったプリクラとか。

他にも、自分の所属意識をアピールするような、部活関連の待ち受け画面も流行っていた。私は中学時代バレーボール部に所属していたから、「バレー部 命!」「I LOVE 排球部」「最高の仲間アリガトウ」みたいな、いわゆる“詩的な”フレーズが添えられたスポ根画像を待ち受けにするのが流行っていた。私も暇さえあれば集めたり、友達と赤外線通信で交換し合ったりていた。

待ち受けの画像を選ぶ時は、無意識だったがいま考えると周囲の目や反応は少なからず気にしていたかもしれない。パカっとケータイを開いたときに、かわいいキャラクターかっこいいアイドルや、イケてるギャル文字が並んでいる方が、なんだかカッコいい。友達と一緒にいる時、メールを着信して開いたケータイからかっこいい待ち受けがちらりと見えると、なんだかいけている感じがする。スマホに変わってからも、自分の好きな画像を選ぶのはもちろんだが、LINEを着信してスクリーンが起動した時にセンスのいい待ち受けだったら、もしかして人に褒められるかもしれない。と、そんなことを考えながら待ち受けを選んでいた.... 気がしないでもない。

ところがこのところ暫く、待ち受け画面を変えていない。いまの私の待ち受けは、海外に行ったときに撮影した友達の写真だ。すごく気に入っているのだ。海外旅行先で、久々に再会した異国の友達と一緒にレストランに行った。その際、目の前でご飯を美味しそうに食べている友達の姿を、何の気なしに撮った写真。スマホの画面を起動する束の間、あの日の情景がよみがえる。待ち受け画面を見ているあいだ、あの狭くて小汚い異国のレストランにタイムスリップし、大皿にがっつく友達が目の前に現れる。その短い時間だけ、懐かしく愛おしい気持ちになる。少し、元気が出る。

周りの人間が見ても、きっと何の気も留めないような他人の写真。イケてる雰囲気も自分の所属を主張するフレーズも詩も含まれていない。でも、自分が一番気に入っているからそれで良い。それが一番大事なのだ。いい意味で、人の目を気にせずに好きな選択ができている待ち受け画面。だから気に入っている。

ちなみにホーム画面のアプリ群の後ろ、ひっそりと身を潜めているのは、好きな酒の写真である。

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