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#5 すゑひろがりず小話

とくに、やることのない祝日の月曜日。
片田舎のちいさな平屋の庭には、お天道さまのあたたかい光が差しています。
ぶーんと遠くを飛ぶセスナの音。
近くの畑から流れてくる野焼きのにおい。
世界をふるわせている疫病の話も、ここでは遠い出来事のようです。

そういえば、羊羹を買ったんだ。
砂糖でしゃりしゃりにコーティングされた、昔風味の小城羊羹。
お茶にしよう。羊羹を切ってお湯を沸かしてティーパックのほうじ茶を淹れよう。

すこし薄暗い台所は、眠っているよう。
起こさないように、支度をする。しずかに。そして、いそいそと。

せっかくだから、縁側で食べよう。
食べたら、ざぶとんを半分に折ってまくらにして、そのまま昼寝をしよう。
やさしい甘さと、熱々の香ばしさと、やわらかな日差しを満喫して、そのあと、うーんと猫のように伸びをする。

そのままとろとろまどろんで、とろけるように夢を見た。
それはとても、とんちんかんな夢。
たくあん色の着物とよもぎ色の着物を着た、ずんぐりむっくりの二人組が、ぽぽぽぽん、と小鼓を打ち、扇子を構え、イヨォ、ホォ、と丹田から声を出しながら、とんだり、跳ねたり、ぱたぱた走ったり、屏風の前に座ってバイオハザードをプレイしたり、金木犀の庭で惑星ループを踊ったり。
とんちんかんな夢だけど、なんだか妙にかわいらしく、可笑しくて、いとおしい。
ゆるんだ口元で、ふふっと笑ってしまう。
そんな感じで、すゑひろがりずが好きです。

ではでは、また明日。

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