見出し画像

【画材エッセイ】複製画は救世主?

(1)つけペンが好き!

わたしはペン画が好きだ。小学4年生の時に、おこづかいで買ったペン軸をまだ持っている。
漫画や絵ばかり描いてる子どもだったので、高校一年生の時、勧められて美大受験の予備校に行くことになった。

画像1

(2)美大受験とコンクール

しかし、美大にペン画科はない。
日本画・油彩・デザイン科から選ばなくてはならない。

いろいろあって、油絵科に進学した。
デッサンや美学、画材研究は面白かったが、肝心の油絵制作がツラい。
A4くらいのペン画が一番好きだったわたしに、大きい絵を描こうという欲求が全くなかった。
しかし画家になるには、公募やコンクールに出さなければならない。
応募するには100号を描かなくてはならない。
160㎝×130㎝の壁。もう本当に壁だった。

丸ペンは楽しかった。線はインクの黒が好きだ。
ペン画の魅力は細い線の集積だと思う。
丸ペンの細い硬い線がカリカリいいながら刻みだすと、ワクワクする。

しかし、大きな油絵を描くとき、丸ペンは必要ない。
ペンの線をいくら集積させても、大きな画面は埋まらない。
いくら時間をかけても、油彩を一筆塗れば消えてしまう。意味のない作業。

ペン画が描きたい。たくさん描きたい。
油彩を辞めても、ペン画を描きたい。
しかし、油絵を描かないなら画家になるどころか、今ある発表する場所を失い、油絵講師としての仕事も失う。

…困ったな。

画像2

※2017年制作。F4サイズ(約30×24㎝)。ペン素描と超うす塗りの油彩がうまく行った稀有な作品。気に入ってるが、公募に出すには小さすぎる。

(3)美術館の小さな版画

そんなとき、2017年練馬区美術館で「パリの時間旅行」展を見た。
有名なミュージカル『レ・ミゼラブル』のポスターになった、ほうきを持った女の子。銅版画。こういうのも原画…って言うのかな?

最初の印象は、「なんて小さな絵なんだろう!」

美術館で、お客さんは壁にはりつくようにして見る。
油彩画は必ず、少し離れて見るものだ。こんな見方があるなんて。
そして、ミュージカルのポスターは、布に印刷されて、なんて大きいんだろう。100号よりもっと大きい。
キャッチ―で、強い赤を置いてもまだ線が映える。
こんな小さな絵をあそこまで拡大しても、画面が持つなんて!!

驚きだった。

原画の大きさはリアルだと気になるが、本や印刷物を見る時、原画の大きさなんてどうでもいい。特に本は、物語世界にのめりこむから、小さいなんて全然感じない。

拡大印刷と本…。これはいいな。

(4)セブンイレブンで拡大コピー

とにかく自分のペン画を拡大して見たかった。一番簡単なのはコンビニコピー。試しに高解像度でスキャンしたデータを、拡大印刷してみた。
この頃から油絵と並行して水彩コミックを描いている。

画像4

原画はB5以下。それをA3まで拡大する。
あれ、いい感じじゃね?(*‘∀‘)

ペン画を拡大すると線が太くなる。
が、わたしの細すぎる線画は、少し太くした方が迫力出てちょうどいい。
最初から太い線で描けばいいのだろうが、そうはうまくいかない。
油彩の時に何度も試してる。太い線は描けない。だから制作はこれでいい。

拡大複製画を、もう少し作ってみたいと思った。

(5)デジタル版画ジークレー

web20200408ジークレー_002

デジタル版画と呼ばれるジークレー。
美術館でよく、複製画として数万円~で売られている。
印刷としてはポスターより品質が良く、リトグラフやシルクスクリーンに代わる版画スタイル。内容は高品質インクジェットプリンタらしい。

他の印刷物と同様、データで入稿し、印刷所がプリントする。
6月企画展に参加表明した時に、試してみた。

24×32㎝の原画を高解像度でスキャン。
B3サイズ(36.4×51.5㎝)に拡大した。
油彩サイズで言うと、P10号サイズ。展示会ならこれくらいは最低欲しい。

ジークレーもコピーと同じように、拡大すれば原画の細い線が太くなり、色も少し濃くなる。しかし色の発色はバランスよく綺麗。部屋にある他の大きな油彩作品と比べても負けない、強い存在感を放つ。

ジークレー、いいじゃん(*‘∀‘)
気に入った。

(6)ジークレーとポスターの比較

web20200408ジークレー_003

お値段的にはお高いので、ジークレーを一度に何枚も作るのは躊躇する。
デジタル印刷するだけなら、ポスターもありでは?

試しに同じ印刷所に同じデータを入稿し、作ってもらった。
B3ポスター印刷代は約1500円。

ポスターだけ見ると色も綺麗で、充分な気もする。
でもジークレーと比べると色が浅いかな。
値段の差は4倍。
また、ジークレーは100年持つと謳っている。
ポスターは早く色あせるかもしれない。
使った印刷所は、同人誌業界で、色が綺麗と評判のグラフィック社。

(7)ジークレーを活用する場合

展覧会に額装して出品する場合、今までそれ用に大きな絵を描いていたが、小さい絵を拡大印刷して展示はありかもしれない。
コンクールはダメだろうけど、販売できる企画展や個展なら…。

たとえばこの、アーティチョークの絵。
板に石膏地、ペン素描に油彩、テンペラ、金箔という、なかなか凝った技法なのですが…。

画像7

フツーの状態で展示すると、これはただの小さな花の絵。
技法なんか気にならない。細部を見るまでもない。
その絵を高解像度でスキャンしたら、こんな状態だったんですよ。

画像7

こんな小さな面積に、こんなに密集した線を描いていたのか。
自分でもびっくり!
そんな絵を拡大複製画にするのは、もう、ありありかもしれない。

ジークレーなら複製画の販売としても有効。原画販売より単価を下げられるし、もしかしたら原画を一枚売るより、収入は増えるかもしれない。

複数の人に買ってもらえれば、徒労感なんて吹っ飛んでしまう!
時給ぐらいの収入があったらいいな。可能性。
なんだか楽しくなってきた。

(8)まとめ

今の時代に求められるスキルは、イラスト・マンガならデジタル作画。
自分もちょろちょろデジタル試してるけど、デジタルの均一さ、それによる線の綺麗さ、修正の容易さ、これはスゴク利点だと思う。

でもペンで線を引いた時の高揚感!
この喜びがあるうちは、アナログペンを使い続けると思います。
が、最近知った新しい技術、ジークレーと本作り、デジタル作画と編集、組み合わせて、なんとか新しい仕事に繋げて行きたいです。

ちょこっと裏話を描くつもりが、超長文になってしまいました。
どんだけ言いたいことがたまってたのだろう!!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
次回はもう少しコンパクトに書こうと思います。

この記事が参加している募集

自己紹介

よろしければサポートお願いします!