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『アースダイバー』とイメージスケッチ


今日初めて読む方もいるので、その都度書きますが、
亡くなった松井守男さんに会うために東京・御茶ノ水で下車し、まずは神田明神を目指したり、葬儀用の会館の帰りに見て体感した神田川周辺の地形や空気から受けた印象が忘れられず、それが何だったのか解明したくて、『アースダイバー』を読むことにした。
その日に歩いていた時から「このタイミングで『アースダイバー』を読もう」と決めていた。

胸が揺さぶられるような地形やゴチャゴチャ感
魑魅魍魎を感じざるを得ない深い緑がいっぱいあった

『アースダイバー』は、2005年に最初の本が出て、その時から知っていたけれど、植島啓司さんが大好きな私としては、中沢新一かぁ、みたいに思ってしまい(優れたお方だし二人は東京大学時代からのお友達)、手には取らずにいた。
でも、感性を信頼し、私のこともよくわかっている東京の建築家の男友達からも「『アースダイバー』いいよ!」と勧められ、読みたいと思っていた。

出費が続いてお金がないので、とりあえず図書館にある3冊を借りた。
増補改訂版はどういうことだろう?と思ったら、2005年の最初の本に、作者本人が欠陥を感じ、特に下町部分を加えたとのことで、2019年に出されている。その間に起こった重大なこととしては、東日本大震災があった。
まだ読み始めだけれど、フィールドワークや旅を感じておもしろい。

具体的に御茶ノ水が取り上げられているわけではないけれど、私があの日、東京で感じた胸騒ぎの、何らかのヒントが得られそう。

元々、漫画家の江川達也さんがたまに触れる東京の地形の話も好きで、彼は渋谷区松濤といった高級住宅地に住んでいるけど、同じ渋谷の円山町(ラブホ街)と松濤を照らし合わせたり(自分をハイソと扱うのではなく猥雑さを愛する感じに)、女体を地形にたとえる話も好きだった。

そんな意味でも、読みたかった本を地形への体感とともに読めるのは良い気がする。
昔々、早稲田大学の近くに住んでいた時に、箱根山とか戸山の側から降りていく時に、どうにもこうにも気持ちの悪い場所があり(やはり緑が濃い坂道の途中)、後になって細菌兵器の開発や研究をしていた部隊があったとか、多数の人骨が埋まっていたと知り、その時の自分の感覚が間違いではなかったと納得した。

そんなような、何かを感じたのだ。

松井守男さんのことは、昨年の4月に、首の手術跡をきっかけとして肖像画を描いてくれた時の体験を小説にしたいと思っていて、そのイメージは(詳細は控えるけど)オレンジ色だった。

今回、神田明神付近で深緑の光景に触れ、守男さんと交わしたたくさんの楽しいメールの絵画的なイメージのように、時空を超えた絵画のような小説を書いてみたい。

プリミティヴで幻想的な、ミロとかシャガールとか、魑魅魍魎と言えば水木しげるとか、もちろん守男さん本人の作品も参考に・・・

構想は全くまとまってなくて、「書ける!」って確信するくらいに要素が整わないと書けないので、その要素を探るためにも、読書から始めています。

あの日、いいなあと思った、神田明神の文化交流会館に展示されている作品より。


私は守男さんとは、彼曰くの「ともだち」だと思うので、彼を画伯や巨匠と表現する人もいるけど、正直その価値がどのくらい高いのかはわからない。

ただ、言えるのは、過去にダリやピカソに関しての評価で目にした、
「天才は、まずは量」
という言葉で言うのなら、まさに、すごい量の絵を描いている方だった。
コロナで日本にとどまったこともあって(私にとってはそのおかげもあって親しくなれて)この2年ほどの画業に触れる機会に恵まれたけれど、78歳、79歳には思えなかった。

師匠のピカソが91歳まで生きたので、人生の終わりは100を超える想定でいた。

私は書くことが好きで、確かにあちこちに振り撒いている量はすごいけど、作品となると難しい。
手法の違いもあるけれど、私はそこまで小説に関しては熱意を持てないので、膨大な量の絵を描き続けていた時点で、守男さんを尊敬する。

亡くなった寂しさは当然まだ続いているけど、私なりのやり方で、守男さんとの対話を続けていきたい。


追記: facebookでのコメントのやり取りより抜粋(記録)

■私
アニメ映画の『君の名は。』の「前前前世」の、
<心が身体を追い越してきたんだよ>
という歌詞が当時から印象的だったけど(自分もそういうところあるので)、
松井さんの場合も、心が身体を引っ張ってる感じで、無理も全く感じなかったけど、本人もびっくりの追い越され方だったのかなあと思います。

■Mさん
君のいない世界にも なにかの意味はきっとあって です。


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