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【詩】夏の奴隷

彼女は岩の上から海に飛び込む
心にボブ・マーリーを流して
限りなく裸に近いオレンジのビキニで
熱帯魚と踊るように泳いでる
太陽で濡れた髪に
天使の輪がないのは不自然だ
クラゲの毒針は彼女には効かない
友達だものと日焼けした笑顔
人魚の生まれ変わりかもね
僕はアロハで刺青を隠してるし
潮風の生臭さは嫌いだ
生きてるものと死んでるものに
敏感になっているのだ
南国でも凍ったままの部分に触れる
その手は花のように柔らかい
ヤシの木のシャドウで
タオルで体を拭いてやると
くすぐったいと彼女は騒いだ
毛の長い犬が走っている
シルエットが海岸線を鋭くする
サーファーが不思議そうに眺めてる
錆びて廃墟になった観覧車
喋り方を忘れてしまった
カモメの唄で距離を思い出す
露店のクーラーボックスの中から
レモネードを一本買って
ふたりでそれを飲みながら
手足から解放されて
夏の奴隷になってキスをする

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