見出し画像

【経済のおはなし】2020年〜の経済はどうなる?竹中平蔵さん講演まとめ。

 私は毎年恒例のイベントの司会を担当させていただいていて、そのイベントでは毎年恒例で竹中平蔵さんが講演されます。わかりやすいのはもちろん、1分1秒狂うことなく正確に完璧にエネルギッシュに講演されるので、毎回毎回圧倒されてます(!)今年(2020年1月19日開催)のお話も司会という立場を忘れそうになるくらい引き込まれて、控え室で夢中にメモを取りました。

「2020年は背中合わせの経済」「2020年代がどんな時代になるか」という2つのテーマでのお話。

〜「2020年は背中合わせの経済」〜

 「今年景気は良くなると思いますか」と会場へ質問した結果、
「良くなる:悪くなる」=「3:7」の結果だったことを受けて、
竹中さんによると「全体の基調は弱くなっている」ことは認めるべきだそうです。
 ただ2008年9月のリーマンショック以降、着実に景気回復はしてきたこと、景気は循環するので良くなったり悪くなったりを必ず繰り返すことは確かなので、良くなるか悪くなるかどちらに運ぶかは「背中合わせ」の状態とのこと。

 アメリカ中国の対立、アメリカイランの対立など悪い要因があるのが確かな反面、米エコノミストは楽観的な見通しを立てているとのことでした。
理由は、名目金利より名目成長率の方がかなり高いこと。
現在、名目金利<名目成長率・・・通常は、名目金利=名目成長率)
・名目金利=投資のコスト
・名目成長率=投資の収益率
つまりコストより収益率の方が高い(コスト<収益率)ので、アメリカのエコノミストは楽観的な見方をしているそう。

 また、トランプ大統領は財政赤字にしてでも、大幅な減税を行っていくだろうとの予想。なぜなら金利は低いままなので、減税の効果が現れるから。

 IMFの世界全体の経済見通しは2019年の経済成長率(3.0%)より2020年の方が良くなる(3.3%予想)とされている。

 日本もよく似た状況。内閣府の「景気動向指数」は悪化しているが、「月例経済報告」では「緩やかに回復してきている」という表現が使われている。政府の経済予想では2019年の経済成長率0.9%に対して2020年の予想は1.4%と成長が高まると予想されている。

 トランプ大統領が大幅な減税を実施しているが、安倍内閣も大盤振る舞いをしている。2020年度の予算は102兆7,000億円+補正予算5兆円なので、「107兆円予算」と言われている。小泉内閣時代は82〜83兆円。名目GDPは1割しか増えていないのに、かなり予算は大きくなっていることがわかる。

 〜ここまでをまとめると・・・
 悲観的な見通しもあるが、楽観的な予想もあちこちに立っている。今年の経済はとにかく「背中合わせ」。特にアメリカ VS 中国の流れで上下するだろう。とのことでした。

続いて中長期の観点でのお話に移りました。

〜「2020年以降、2020年代はどんな時代になる?」〜

 去年は「平成」から「令和」へ変わり、節目となったが、「元号」は時代認識にとても便利なもの。(以前は日本以外に中国、ベトナム、朝鮮半島にも元号はあったが、今は日本のみ。)
 これまでで世界一長期にわたった元号は実は「昭和」の64年間。
2番目に長かったのは「明治」、3番目は「応永」で
4番目に長かったのが「平成」の30年。
戦争、高度成長期、バブル、バブル崩壊など、たくさんの経験をした「昭和」に比べると、「平成」は、サッと通り過ぎたイメージかもしれないが、意外と長いし大きな変化があった、重要な時代だった。

〜平成時代の変化〜
法律の数が2倍になった。1000→2000以上になった。(「立法爆発」と言われるらしい。)ストーカー、セクハラ、パワハラなど新しい概念が生まれたことによる法律整備の結果。
日本人の平均労働時間が約20%短くなった。ドイツや北欧よりはまだ労働時間が長いが、アメリカより短い。韓国より20%短い。(日本はもう長時間労働国ではなくなった。)
日本が高貯蓄国ではなくなった。昔は高かったが貯蓄率が低くなり現在は4%程度。スペインと並ぶもっとも低い貯蓄率の国になっている。これは高齢化によるもの。貯蓄を取り崩して生活している人数が増えているから。
日本の人口は、平成の初めと令和の初めではほとんど同じ。平成の間にちょっと増えてちょっと減って、結果同じくらいの人口。一方でその間アメリカは30%増えて、イギリスは15%増えた。これは(一部移民の影響もあるが)優秀な人勢の受け入れ競争が起こっていたから。日本は乗り遅れている。
・今までアベノミクスで日経平均は3倍近くにもなった。失業率も2.2~2.5%の推移、有効求人倍率も0.6倍→1.6倍になり、人手不足にまでなっている。インバウンドも1000万人→4000万人に。とても良い結果が出ている。
・しかし、2020年以降のこれから先のことはほとんど手がついていない。私たちが、これからちゃんとやっていける企業かやれない企業か、やれる政治かやれない政治かをしっかり見極めていかないといけない。

 現在第4次産業革命が起こっている。インターネットに対する世代間の感性の違いは、ものすごく大きい。インターネットが初めて日本に開通したのは1990年4月1日。(慶應大学藤沢キャンパス村井純さん研究室にて)その後家庭でインターネットが引かれたのは1995年。その時のWindows95を知らないような世代が成人している。竹中さんは管理層の方々に「若い世代の発想がもし理解できなくても認めなさい」と言っているそう。自分の感性だけで判断してはいけないそう。
 人工知能によるディープランニング(自分で自分を賢くしていくこと)が進んでいて、今はAIは出入国管理でも顔認証が使われている。国家権力の最前線でも使われるようになっていて時代は確実に進んでいる。

 20世紀はいつから始まったか?実は本当の意味での20世紀は1920年からと言われている。(ということは本当の意味で21世紀は2020年以降のこれから。)
 1910年代は第一次世界大戦がありそれ以降アメリカの時代に。労働組合や女性の権利が叫ばれるようになった。1918年にパナソニックが生まれて1923年に関東大震災、その後20世紀型ライフスタイルとして都心から郊外に住む場所がうつり、鉄道会社が生まれた。地下鉄が開通し、山手線が繋がり、東京〜大阪間につばめ特急が走った。ダットサン(現日産)やNHKが放送開始したのもその頃・・・。

 チャンスと危機感を感じること。オックスフォード大学のマイケル・オズボーン博士は、AIの発展により今ある仕事の47%は今後十数年でなくなると言っている。銀行の貸付係や公認会計士も。一方で、とあるシンクタンクは、AIに作業的な仕事をさせることにより、人間はクリエイティビティに専念できるチャンスだと唱えている。それが実現できれば、一気に2035年までに成長率は40%アップすると言われる。

 21世紀もいよいよこれから。うまくいく企業とそうではない企業は、大きく開いていく。
 現在の第4次産業革命は、アメリカだけが特殊な動きをして突出して上がってきている(GAFA)。そういうアメリカの企業は、圧倒的に「無形資産」に投資している。土地建物などの有形資産ではなく、「無形資産」に投資している企業がうまくいっている。データベース、研究開発、人材開発、組織開発のための投資。これが日本ではあまり今できていない。「無形資産」への投資ができているかどうかで企業を見極めることもできる。

〜〜以上〜〜〜

 ここまで聞いて私は次の司会準備に入りましたので途中までしか集中して聞けませんでしたが、例年通りグッと引き込まれるお話でした。備忘録として&みなさんにシェアがしたくて、この記事を書きました。

 2020年、これからの時代は、うまくいくかどうかが「背中合わせ」ということで少し緊張感がありますが、ポジティブな未来に視点を合わせて一歩ずつ前進していきたいですね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?