マガジンのカバー画像

感想

9
運営しているクリエイター

記事一覧

本:豊饒の海-天人五衰-

この本は、三島由紀夫が人生の終わりに書き残した長編小説、全4巻のうちの4巻、最終巻だ。

1、2、3巻と転生を見守り続けた本多は76歳となり、隠居生活を送っている。
たまたま立ち寄った場所で生まれ変わりの印である、脇の下に三つのホクロをもった少年、安永透と出会う。これまでの2巻、3巻と大きく違うのは、透が生まれ変りの存在なのか、最後まで確信が持てないところにある。実際物語の最後までそれははっきり

もっとみる

本:豊饒の海-暁の寺-

※この記事ははてなブログにて、2020年10月9日に投稿した記事の再掲です。

この本は、三島由紀夫が人生の終わりに書き残した長編小説、全4巻のうちの3巻だ。

内容が濃くなってゆくので先に言っておくと、僕は信じている宗教はなく、輪廻転生も信じていない。今回はこれまで転生してきた主人公を見届けてきた本多が中心となって物語が展開される。

ここにきて、本多自身が押さえつけてきた欲望、変態性が花開いて

もっとみる

本:豊饒の海-奔馬-

※この記事ははてなブログにて、2020年10月3日に投稿した記事の再掲です。

この本は、三島由紀夫が人生の終わりに書き残した長編小説、全4巻のうちの第2巻だ。

第2巻は第1巻の18年後が舞台。第1巻で壮絶に若さと命を燃やし、死へ向かった清顕は、第2巻で10代の若者、飯沼勲へ転生する。

当の本人は前世の記憶はなく、その事実に気がついているわけではないが清顕と行動を共にした本多(第2巻では38歳

もっとみる

本:豊饒の海-春の雪-

※この記事ははてなブログにて、2020年9月25日に投稿した記事の再掲です。

この本は、三島由紀夫が人生の終わりに書き残した長編小説、全4巻のうちの第1巻だ。

この話は、松枝清顕と聡子の恋愛が中心であるが、決して美しい恋愛話とは言えない。美しい点があるとすれば、若くて世間をしらず、利己的な、清顕の命のエネルギーの燃焼により放たれる生命の輝きだろう。

はっきりいって清顕は自分の事しか考えていな

もっとみる

映画:ゴジラ対へドラ

※この記事ははてなブログにて、2020年7月6日に投稿した記事の再掲です。

1971年公開、ゴジラシリーズ第11作目。

当時問題となっていた大気汚染や水質汚染を取り上げたゴジラ作品。

汚染により発生したヘドロの中から生まれた怪獣としてヘドラが描かれる。

ヘドラのデザインは奇妙で不気味。成長により姿が変化する上、飛行形態から歩行形態に変身もするのでバリエーションが豊か。興味を引くインパクトの

もっとみる

映画:JOKER

※この記事ははてなブログにて、2019年11月16日に投稿した記事の再掲です。

ジョーカーをみた。
久々に鑑賞中に身体がこわばる映画だった。
非常に個人的な、社会、他人への憎しみが社会情勢とうまく(逆に言えば不幸にも)噛み合った結果生まれた物語だ。

個人的な社会や他人への憎しみは、遺憾無く爆発されたまま物語は終わる。ただ僕はそれに何か気持ちの悪いもの、賞賛できない気持ちを抱えた。

なぜか考え

もっとみる

ミロコマチコさんの絵について

※この記事ははてなブログにて、2019年1月24日に投稿した記事の再掲です。

今回はミロコマチコさんという画家、絵本作家について話したい。

僕がミロコさんの絵を初めて真正面から体験したのは、去年の春くらいだと思う。世田谷文学館という施設で企画展があり、それを観に行ったのだ。

以前から家がそう遠くない事もあり、世田谷文学館には気になる展示があれば通っていた。その時もチラシをみて "おもしろそう

もっとみる

漫画:人造人間キカイダー

※この記事ははてなブログにて、2018年9月24日に投稿した記事の再掲です。

今回は石ノ森章太郎が描いた人造人間キカイダーについて書く。多少ネタバレを含むので、読む予定がある方は自己責任で。

特撮作品としてのキカイダーの方が世間一般的には有名なのかもしれないが、今回はあくまで漫画版原作について書く。

まず興味を引くのがキカイダーのデザインだ。特徴的で、奇妙で、個人的には好きだが、はっきり言っ

もっとみる

本:長距離走者の孤独

※この記事ははてなブログにて、2018年7月17日に投稿した記事の再掲です。

今回は本について書いてみる。

イギリスの作家、アランシリトー作の長距離ランナーの孤独という本である。この本はいつも弾き語りをやっている下北沢ARTISTのコニシさんから借りたものである。

この本に興味を持つきっかけというのがそのコニシさんとの会話であった。僕はThe Jamというバンドが好きなのだが、そのフロントマ

もっとみる