Green Lies

□タイトル『Green Lies』

登場人物

浜田 千晶(17) 高校三年A組
佐藤 真由(17) 高校三年A組
千田 美紗(17) 高校三年A組
石川優里子(17) 高校三年B組
木島 加奈(17) 高校三年B組

○都立青島高校・A組教室

夏服姿の浜田千晶(17)が、四葉のクローバーが押し花された、しおりを見詰めている。
千晶「……」
佐藤真由(17)、千田美紗(17)と共に、居残り掃除をさせられている。
真由が歩み寄って千晶に、
真由「まだ、電話してないんだ」
千晶「……やっぱり、別にいいかなって」
真由「ホントに? 自分に嘘ついてない?」
千晶「うん……」
離れて掃除していた美紗が、
美紗「ねえ! もう、終わりで良くない? アイス食べ行こ?」
千晶「あ、いいねえ」
掃除用具を片付け始める。
真由「……(心配そうに千晶を見ている)」
廊下で足音がする。
「居たァ! 千晶!」
石川優里子(17) が、木島加奈(17) の手を引いて、勢い良く駆け込んで来る。
優里子「ねえねえねえねえ、千晶、協力してよ」
千晶「なによ? 急に」
優里子「題してダブルデート計画! 私ね、裕介先輩と花火行きたくてさ、考えたの。綱川先輩が行くなら、来るんじゃないかって。そしたら、加奈ちん誘ってくれるって!」
千晶「綱川先輩!? 加奈が?」
加奈「……(頷く)」
優里子「で、千晶、先輩と仲いいじゃん? 夏、帰って来るか聞いてみてくんない?」
千晶「私が? 無理、無理、無理、無理。絶対無理!」
優里子「えー。なんでよ? 協力してよ」
千晶「いや、だって……連絡先、知らないし。第一、そんな仲良くないし」
優里子「え、そうなの?」
真由「……(千晶を伺う)」
千晶「うん……」
美紗「あれ、加奈ちんもテニス部だったじゃん。連絡先、知らないの?」
加奈「知ってる……」
千晶「……え?」
美紗「何だ、知ってんじゃん」
優里子「知ってるならしようよ。今しよう!」
加奈「今……?」
真由「今じゃなくても」
優里子「何言ってんの! 今しよ、今しよ。今しないと、いつまで経っても出来ないよ? お婆ちゃんになっちゃうよ?そしたら一生後悔するよ、ね?」
加奈「……(戸惑う)」
優里子「あー。もう、私打ってあげる。スマホ貸して。こういうのはね、勢いなんだから」
加奈が取り出したスマホを奪う。
千晶「……(不安気に眺めている)」
優里子がメールを打ち始める。
千晶「……」
しおりを握り締める。
その時、スマホのバイブ音が、どこからか聞こえる。
皆が顔を見合わせ、音の所在を伺う。
千晶が気付いて、スマホを取り出す。
千晶「(見て)……」
優里子「出れば?」
千晶「……大丈夫。ママからだから」
優里子「(見て)ちょっと、網川先輩じゃん!」
加奈「……」
着信が途絶える。
優里子「どういうこと。知らないって言ってたよね?」
千晶「え、あの、それは……」
真由「千晶ね。先輩、花火に誘いたくてズッと悩んでたの」
加奈「え……(涙ぐむ)」
逡巡する、千晶。
千晶「ごめん! 嘘って反則だよね。でもさ、やっぱり私、先輩と花火行きたい」
加奈が泣き出す。
千晶「加奈、ごめんね。ごめん」
加奈「(首を振って)謝らないで」
自分に言い聞かせる様に、頷く。
千晶「私、網川先輩が好き」
一同が、千晶を見詰める。
優里子「じゃあさ。千晶、裕介先輩も誘ってよ」
美紗「(制して)ねえ。アイス食べ行こう」
真由「そだね。行こう行こう」
優里子の手を引く。
優里子「あ、ちょっと……」
美紗「(加奈に)行こ」
加奈「……(頷く)」
一同が教室を出て行く。
千晶「真由! ありがと」
真由「頑張って」
独り残された、千晶がしおりを見詰める。
思いが高じて、涙が込み上げる。
しおりを仕舞う、千晶。
意を決して、電話を掛ける。
千晶「もしもし、先輩?」
笑顔が咲いて、

□エンドロール

                   〔 了 〕

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