民主主義って何だ、これだ

本当に民主主義って何なんだろうって事件が起こりました。というか、少し前から起きていました。


■できごと

神奈川県議会で野党の日本共産党神奈川県議会議員団(共産党と略す)の代表質問を制限しようという動議が、議会運営委員会にかけられていました。

詳しくは、神奈川新聞が報道していますので、そちらで確認をお願いします。すんでのところで、代表発言の制限を回避することができました。

今回の件で民主主義って何だって思ったのは、単純な「多数決」じゃないよってことです。というのは、議会運営委員会には5人以上議員のいる交渉会派のみが参加できるのですが、共産党の1人以外は皆与党側でした。議論するまでもなく、そのまま投票にかければ、多数の合意≒民意として発言権を制限できます。

しかし、今回はそのような展開になりませんでした。投票を促す与党議員の声に対して、自由民主党神奈川県議会議員団(自民党と略す)出身で県議会議長である土井りゅうすけ氏が、合意形成のために議論を1日延長することを説き、代表質問の権利を剥奪することに反対する人々の傍聴による圧力のもと結局は投票にかけませんでした。


■民主主義は「理性」だということ

正しい判断というのは「数の暴力」ではなく「理性」だってことを、今回、強く感じました。議長の土井氏はあらかた与党側の意見に同意でした。でも、議論の延長を促しました。

メディアによる土井氏のインタビューなどはなく正直どう考えていたかわかりませんが、多数決ではなくて「理性」のもとでの議論による合意形成こそ民主主義だと、議員としての長いキャリアからわかっていたからできた行動だと思います。


■少数派の意見でも真っ当であれば賛同が広がるということ

共産党という少数会派の主張であっても、内容が真っ当であれば賛同が広がるということを今回再確認したと思います。

共産党の代表質問の制限に反対した人にはもちろん共産党員もいましたが、中心的であったのは国政での野党共闘を呼びかける革新系無党派の人々であり、ネット上の賛同者には「反共」を掲げ日頃は共産党を批判しているような保守派も多くいました。

選挙では大雑把に民意を反映できることができます。しかしながら正確には何らかの方法で有権者の声を確認することも必要であり、正義に則らなければ、選挙で支持を受けた議会の多数派も反対されるということを改めて認識しました。


■終わりに

世の中には、民主主義とは多数決原理であり、多数派によって物事が決定されるのは当然であると考える人がいます。多数決原理であることを前提に、有権者数が少なく投票率の高くない若い世代に子供の人数分だけ投票権を渡すことで公平を実現しようという論者(リビジョン代表 斎木陽平氏など)もいます。

けれども、たとえ多数派・少数派に分かれたとしても、たとえ基本的な主義主張が違ったとしても、違いを乗り越えて正義に基づいて民意を形成する方法はあるし、むしろ、それを諦めずに対話をしていくことこそ真の民主主義だと今回の出来事で再確認しました。

私は、今回の件が特殊な事例だとは思っていません。例えば、名古屋市の藤前干潟の埋立が、反対派が議会少数派にも関わらず、反対運動が国の環境庁を動かし、市長が埋立中止を決断したように。

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