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ふたり目が欲しい妻とそれはちょっと不安だったぼくの10年後。

それはもう「すぽぽん」と。
イカした男子が生まれてから、あっという間に3年が経っていた。その間、息子はすっくすくと育ち『侍戦隊シンケンジャー』の“殿”こと松坂桃李君に夢中だった。

そんなある日の夕食時。
妻からの衝撃的な発言。

「そろそろふたり目はどうかしらん?」


ん?どしたのとつぜん。いやほらだってこいつもろくすっぽあれだし。おれもまあなんていうの?まだそんなに大金を稼いでいるわけでもないし。それにそうだここのローンだってまだ10年もあるんだから。もちろんいろんな可能性はあるけどさ。うん。そういうのはどうだろうね。

と、想定外の発言にありえないほど狼狽しつつ考えてみたが、やっぱり「イイネ!」とは即答できなかった。
だって、いろいろいっぱいいっぱいだったから。
しかし、一人っ子だった妻の「息子の兄弟(兄妹?)が欲しい」はなかなかの本気度で、とても強い希望だった。

まぁ、金のことはなんとでもなるだろうし(←適当)、二人いたらそれはそれで楽しいかもな…。
そう思ったぼくは2〜3日後、妻にこう伝えた。

僕「女の子の扱いがよくわかんないから、男の子だったらいいよ」
妻「オッケー。じゃ、男の子にしよう」


その1年後の冬。
雪が降りしきるある日の早朝、またしても「すぽぽん」と、そして「ぶりんぶりん」したかわいい女の子がうまれた。

新生児室の彼女を見つめていると、だんだんと嬉しい気持ちがこみ上げてくる。そして、それと同時に、自分の家に女の子がいるという状態がなんとも不思議だなぁと思っていた。
それはきっと、ぼくが男3人兄弟だったからだろう。

やがてぼくの思考はエスカレートしていく。
いくつまで一緒に風呂に入るべきか。
年頃になった娘が彼氏でも連れて来た日にゃどうすりゃいいのか。
そいつがポンコツだったら嫌だし、逆に清潔感を絵に描いたような優男だったらもっとムカつくし…
などと、勝手に10年以上も先のことを考えたりしては、悶々としたりしていた。

そんなこんなで、彼女も息子と同じようにすっくすくと育ってくれた。
息子も「妹」ができたことを理解しはじめ、どうでもいいことでケンカをしたり、いっぱしの世話を焼いたりしながら一緒に成長していった。

「うんうん。いいじゃんふたり目」

…ん?
…待てよ。

そうだ。確か、ぼくは妻に「男の子だったら…」と言ったはずだ。
かわいい娘がいることにとても満足しながらも、妻にそのことを告げた。

妻「わたしは最初から『あ、女の子だなー』ってわかってたよ。もともと女の子が欲しかったしね」
僕「あ、そうなの。へぇ〜(…このうそつきめ)」

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という娘もすでに10歳。
焼き肉では「上」がついているお肉のほうがおいしいこと、マックよりもファーストキッチンのポテトの方が塩味が強いことなどにも気づきだしたようだ。

娘「たかひろ君はクォーターでイケメンなんだけど、ちょっと器が小さいんだよねー」
妻「わかるー」
娘「うけるー」


などと、楽しそうに妻と話している彼女は最近、ぼくの洗濯物を汚物扱いしはじめたという。
すべてはきわめて順調である。

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