蟻
巷では 夢が歩かなくなった
まめを潰し 皮はめくれ
それでも歩く理由が道端には溢れていた
夏が暑く、冬が寒かった そんな時代
どこへでも行きやすくなった今
目的地は
それがどこであろうと、目と鼻の先
きらびやかな色たちは
精確に調合された人工のリズム
拍子さえわからないまま 踊らされる日常
見る 嗅ぐ 触れる 聞く
人間の性能の発揮は未だ乏しく
虚ろな夢の名残りに帆を立てては
小銭ばかり掻き集めている
お前と意志疎通を図ろうにも
私にはお前ほどの意志なんてない
お前の歩む大地の温度を
いつか正しく伝える手だては
残されているのだろうか
地平線さえ見たこともない 子供たちに
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