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僕とアジサイ


雨が降り続く朝

びしょぬれのアジサイを目にする

こんなに濡れてかわいそうに

そう思うけれど

アジサイはきっと

何とも思ってはいないだろう



同情される

その気持ちは

アジサイにとっては無意味なのだ



嘆いているのは

アジサイではなく僕



その事実に気づかないふりをして

アジサイをいたわっても

アジサイは僕に感謝などしてくれない



自分の命を全うする

それは

与えられた場所で

懸命に生きること


運命を受け入れ

自分の使命をなしとげること



もがきながら
自分の生きる場所や役割を
必死で探す人間の姿は

アジサイにどう映っているのだろうか



雨に打たれ続けるアジサイの花の根は

地面にしっかりと定着している

こうして地球の大地に根を張り

来年も再来年も

みごとな花を咲かせるのだろう




自由という価値観を知った僕は

不安定な二本の足で

ふらふらと動き回る


しまいには横たわり

これまでの過去を振り返っては

自分の命のはかなさに涙をこぼすのだ




アジサイが僕に
同情してくれないことをわかっていても

いつの日か

僕はアジサイを自分のかたわらに置き

その美しさに心を打たれながら

最期の時を迎えるに違いない

















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