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【論文紹介】寄付者が知りたいNPOの財務情報って?|非営利組織の財務情報に対する寄付者の選好分析(2013)

本日ご紹介する論文は、寄付者が知りたいNPOの財務情報は何なのかを探る研究をした論文です。

この論文では、寄付者等が重視する情報項目をアンケート調査で明らかにするとともに、模擬的な財務データを示して寄付者等が指向する財務情報の傾向を分析しました。

結果を以下に引用します。(太字は私によるもの)

その結果、寄付者等は主観的には財務情報よりも活動目的や成果等の非財務情報に対する関心が高いこと、また財務情報の中では収入構造や資産構成よりも支出構造に対する関心が比較的高く、特に事業に使われた資金の割合や人件費等の資金使途を重視していることが明らかになった。さらに,財務データを示して潜在的な選好を探ったところ、寄付者等は収入構造について、認定 NPO 法人では寄付金収入を選択し,NPO 法人では事業収入を選択する傾向が比較的高かった。


(つまり、認定 NPO 法人へ寄付をする人は、その法人の寄付金収入がどれくらいか、NPO 法人へ寄付をする人は事業収入がどれくらいかが気になるということです。)

ただし、両団体ともに寄付金収入よりも収入源のバランスが重視され、収入
源のバランスよりも事業収入が重視されており、寄付者等の事業収入に対する指向性は根強いものがあると考えられる。
また,支出構造については人件費や役員報酬が高いことは好まれず、事業費割合が高いことが強く好まれることが判明した。

(寄付したお金が法人の事業に使われることを望むのは、寄付者心理としてはよく分かります。)

そして、寄付者等の主観的選好と潜在的選好について、統計的に相関関係を検定した結果、主観的には寄付金収入が重要であると考えていても、実際には事業収入が大きい財務データを選択しているという矛盾した傾向が表れた。さらに、潜在的には給与手当や役員報酬が少なく、管理費よりも事業費が大きな団体を明確に選好しているにもかかわらず、寄付者等が自らの指向性を主観的にあまり意識していない可能性が示唆された。


従って、寄付者等が明示的に重視していると意識する財務情報と、実際に選別している財務情報との間には差異がある可能性があり、非営利組織のディスクロージャー(情報開示)ではこの点に配慮する必要がある。

すなわち、寄付金収入への依存度が高い場合はその安定性や今後の見通しを説明する。人件費や管理費の水準が高い場合は客観的な根拠や理由を示す。収支差額及び内部留保の必要性や将来的な使途を丁寧に説明することにより理解してもらう。といった努力が必要になると考えられる。

(とはいえ、調査サンプル数が少ないことから一般的な寄付者等の財務情報に対する指向性を論じることは尚早な部分もあると、論文では述べられています。)


論文はこちらのリンクからご覧になれます

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