パトロン12

無料塾の挑戦|第5章-3|皐月秀起

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13.実際、学習会を本当に利用してほしい家庭に利用してもらうことは、さまざまな理由から難しいと思われますが、その点についてはどう考えていますか。

さまざまな理由とは、例えばどんな理由でしょうか? 本当に困っている貧困家庭は情報弱者なので存在に気づかないとか? 広報たからづか、宝塚てくてくなら目にするかも。新聞なども本人は読んでなくても、例えばおじいちゃんやおばあちゃんが読んでいて、切り抜きを渡してあげて...などはあると聞きます。

14.ボランティアとして参加する学生には、どのような学生がいますか。また、そのような学生の共通点はありますか。

私が関学生だった25年前と違って、今の学生たちはボランティアに対する意識がとても高いです。何か人の役に立ちたいというやさしい気持ちを持った学生が多く、本当に感心しています。春のボランティアEXPOに2日間で400人近い動員がありましたが、25年前やったら何人集まっていただろう...と思います。

学生の思いなどはリーダーズカフェのHPの「講師の声」に掲載していますので、ご覧になってください。同世代のみなさんなら当たり前かもしれないけど、私とかは読んだら涙が出てきそうになります。

共通点などですが、まず「(問題が解ける、解けないといった)頭がいい悪いは、あまり関係ない」ということです。例えば、塾講師などの経験がある学生は、教え方も上手だし、見ていて頼もしく、欲しい人材ではありますが、「何で分からないの?」と少し当たりがきつくなったり、教えている自分に酔ってしまい生徒さんがちょっと置いてきぼりになってしまうケースは目にします(苦笑)。

それよりも、子どもをよく観察しながら、距離感やタイミングを測って応対している学生は、生徒にとても信頼されています。だいたいそういう学生は、決まって「いやあ、教えるのは難しいわ...」と言っています。こう言っている学生は、生徒に対して手を替え品を替え、工夫をしている証拠なので、この言葉が聞えたら私はニンマリしています(笑)。

15.ボランティアとして活動する学生に期待することはありますか。

自分自身を成長させるために、宝塚つばめ学習会という機会を思う存分使ってほしいと思います。「学習支援をしてあげる」「ボランティアをしてあげる」という、「善意を押しつけ、自己満足に浸る」ような学生はうちにはいませんが、そうではなく、「子どもが好きだからやる」「何か楽しいからやる」というように、「つばめをやりたいからやる。それがたまたまボランティアだった」という学生が集まってくれたらいいなと楽しみにしています。
「やりたい」から始めても、うまくいかないことも多いし、生徒への責任が多いわりに無報酬だし、壁にぶつかることもありますが、それもすべて自分の成長に繋がりますし、「社会の縮図」を実際に見られる機会はそうないので、必ず社会に出てからこの経験は活きていきます。あまりいい言葉ではないかもしれませんが、この機会をうまく使って欲しいと思います。私は応援します。

16.これまで学習会を退会した生徒はいますか?

2017年1月30日のスタートから約1年で、延べ27人の生徒さんが入会し、12人が退会しています。内1人は中学を卒業しての退会なので、実質11人です。どうでしょう? 多いですか、少ないですか? 「結構多いかも」と思われる方が多いかもしれません。退会した理由は、「有料塾に行く」がほとんどです。退会した11人のうち、9人が中学生です。私たちは、入会の条件に「有料塾や家庭教師に習っていないこと」があるため、「塾に行く=つばめはやめる」になり、これはかなり厳格に守っていただいています。「有料塾に行く」と一言で言っても、その裏にはいろいろなドラマ(事情)があります。「塾とつばめの併用もケースバイケースで...」と、考えてしまうこともごくたまにありますが、本来の主旨(経済的に困難なご家庭の子どものために)との整合性が取れなくなりますので、今後もこの方針は変わりませんね。

17.今までで、一番うれしかったことは何ですか?

たくさんありますし、小さいものを数えると毎週ありますが(笑)、参考までに二つだけ挙げます。

ひとつは、昨年の春に中学生に進級した子が、引き続きつばめで勉強してくれていることです。スタート当初から通っている3人のうちの1人ですが、最初に来たときはまだ小学5年生でした。中学に上がるときに「ひょっとしたら、これを機に有料塾に行く(退会する)かなあ」と思っていたのですが、続けると聞いたときは本当にうれしかったです。彼が私たちにとって初めての「内部進学組」でした。仁川教室は、小学生(~17時半)と中学生(17時半~)に時間帯を分けているのですが、4月になって中学が始まり、初めて制服で17時半に来たときは、「大きくなったなあ。成長したなあと」と講師のみんなで結構感激していました。

もう一つは、ある退会した子の話です。昨年の夏に初めてつばめに来た時は、口数が少ない(というかほとんどない)寡黙な子で、学校も不登校気味でした。でも勉強が嫌いなわけではなく、何かのきっかけになればと保護者さんがつばめを探してくださりました。私たちがどこまでフォローできるか心配ではありましたが、できるところまでやってみようと、最初の数か月は私も一緒に机に向かったりして、英語の復習を中心に毎週つばめには通ってくれました。半年以上通った今年の3月末に、仲が良くなったお友だちと塾に行くことにしたので、退会されました。いつもなら、退会のときはこの上なく寂しいのですが、今回ばかりは、何かこの子がつばめの巣から飛び立っていく感じがして、「良かったなあ、一歩踏み出したんやなあ」ととてもうれしい気持ちになりました。こんな役割も私たちにはあります。

18.今までで一番、悲しかったことは何ですか?

悲しかったことは、さすがに毎週はありませんが(苦笑)、やはり生徒さんが退会したときは辛いですね。

中でも、結果的に生徒と信頼関係が崩れてしまい、退会に至ったケースは今思い出しても胸が苦しくなります。ちょうど、私があまり広くないスペースに生徒と講師を10人以上詰め込んでしまい、落ち着いて勉強できる環境を壊してしまった結果、生徒の心が離れてしまいました。特に休みも少なく、1年以上も通ってくれていた生徒だっただけに、もっと早いうちから色んなサインに気づけるはずでしたが、できませんでした。

この頃ちょうど、講師同士も微妙に考えがずれ始めていました。「成績アップにもっと注力したら?」「いや、まずはしっかり勉強をさせる環境をつくろう」など、個人間で温度差も現れだし、話し合って解決するというより、個人プレーも少しずつ目につくようになりました。私も気づいてはいましたが、講師の学生が自分たちで気づいてゆっくりいい方向にいけばいいと悠長に構えていたら、生徒がやめることになってしまい、時すでに遅しになってしまいました。

一言で言うと、完全に私のオペレーションミスでした。今では、生徒の人数をキャパ以上に増やしすぎないように注意し、講師も全体の人数が増えたおかげで、教室(仁川小学生・仁川中学生・逆瀬川・宝塚)ごとにほぼ講師を固定し、ローテーションも組めるようになったので、集中して勉強ができる環境は作れるようになりました。

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