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【書籍】他人のせいにせずに問題を解決する道ー岸良裕司の哲学と実践

 『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)のp251「8月2日:岸良裕司( ゴールドラット・コンサルティング日本代表)」を取り上げたいと思います。

 岸良氏は、問題解決において「人のせいにする」という考え方が非常に非生産的であると強調しています。彼は、このような考え方が問題の根本的な解決を妨げ、結果的に問題を放置する原因になると指摘しています。岸良氏は、自身の経験と他人の事例をもとに、問題を解決するためには個人が自己反省を行い、外部の人や環境を責めるのではなく、自らが解決策を見出す必要があると説いています。

 彼が京セラに在籍していた時期、稲盛和夫氏の「私にもできるのだから皆にもできる」という姿勢から大きな影響を受けました。初めのうちは、稲盛のような偉大な人物に自分がなれるとは思えず、達成不可能なことだと感じていました。しかし、ある時点で、稲盛氏のような人物が存在する以上、その背後には何らかの理由や方法があるはずだと考えるようになりました。この考え方の転換は、彼にとって大きな意味を持ち、「あの人だからできる」と限定することで学びの機会を自ら閉ざしてしまうことの危険性を認識するようになりました。

 岸良氏が43歳で京セラを去った後、彼は様々な赤字企業や問題を抱えた組織の経営コンサルティングを手掛けるようになりました。その経験を通じて、問題が継続して解決されない状況にある組織には、しばしば「人のせいにする」という共通の傾向があることに気づきました。例えば、「あそこの会社は力があるから成功するのだ」「うちにはそのような人材がいないから無理だ」という言説です。岸良氏は、このような言説が問題解決の妨げとなることを指摘し、「人のせいにして問題は解決しますか」という質問を通じて、問題解決において自己反省と自らの責任を認めることの重要性を説いています。

現在様々な赤字企業や問題を抱えた組織の経営コンサルティングをさせてもらって相談の中身はそれぞれに異なるが、何か問題があって、ずっと解決しない時には必ず一つの共通した症状がある。それは”人のせいにする"ということだ。「あそこの会社は力があるから」「うちには人材がいないから」いつも僕は同じ質問をする。「人のせいにして問題は解決しますか」世界中の誰に尋ねても「しない」と口を揃えて答える。にも拘らず、我われは人のせいにしがちで、その結果、問題を放置してしまう。見方を変えれば、その症状があったとしたら、そこに改善のチャンスがあるということだ。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)p251より引用

 稲盛氏からの影響は、岸良の考え方において根本的なものであり、稲盛が述べた「宇宙は常に進化している」という観点は、岸良氏にとっても重要な考え方です。稲盛氏の言葉を借りて、岸良氏は、世の中が常に良い方向へと進んでいるという信念を持ち、その進行を妨げる最大の障害が「人のせいにする」という考え方であると主張しています。この考え方は、個人が自分自身の能力や可能性を疑うことなく、前向きに問題に取り組み、解決策を見出すためのモチベーションを提供します。

 岸良氏は、仕事や人生において、自分が価値を提供し、問題解決に貢献することの大切さを強調しています。彼は、「自分がいたら助かる」という部分を見つけることが仕事の出発点であり、職場には常に解決すべき問題が存在すると述べています。また、会社が自分を雇う理由を自問自答することで、新たな可能性や機会が見えてくると説いています。このような自己発見と自己責任の精神は、個人が自身のキャリアや人生において積極的な役割を果たし、持続可能な成長と発展を遂げるための鍵となります。

だが仕事というものは「自分がいたら助かる」という部分を見つけるところから始まるのだと思う。そしてそれは必ず見つけられる。職場には必ず困っていることがあるからだ。会社が自分を雇ってくれた理由とは何か。それを自らに問うところにきっと新しい扉が開かれている。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)p251より引用

人事の視点から考えること

 岸良氏が提唱する、最も問題が解決しない考え方として、「他人のせいにする」態度を挙げています。この観点は、私も非常に共感するところが大きいです。組織内で問題が発生した際に、その原因を外部に求めることは、解決策を見出す機会を逃し、組織内の成長や進歩を妨げる要因になり得ます。

問題解決への姿勢

 人事の立場から問題解決にあたって重要なのは、組織や個人が直面する課題に対し、まずは自己反省から始めることです。外部の要因だけでなく、内部的な要因も深く掘り下げて理解する必要があります。問題の原因が組織内部にある場合も多く、そうした場合には、自らの行動や態度、組織文化などを見直すことが求められます。「人のせいにする」という態度は、このような自己反省や内省の機会を奪い、根本的な問題解決を困難にします。

個人の成長と組織の発展

 稲盛氏が示す「私にもできるのだから皆にもできる」というポジティブな姿勢は、組織内の個々のメンバーが自分自身の可能性を信じ、その能力を最大限に引き出すことの重要性を教えてくれます。人事の観点から見れば、このような姿勢は、個人の成長だけでなく、組織全体の発展に対しても非常に価値があります。組織が個々のメンバーの潜在能力を見出し、育成することで、全体としての競争力を高め、持続的な成長を実現することが可能になります。

問題を改善のチャンスと捉える

 岸良氏が言及するとおり、問題が発生した際に他人のせいにすることは、問題の本質を見落とし、組織や個人の成長機会を失わせます。逆に、問題を直面した時にそれを改善のチャンスと捉えることで、組織はより強固なものになり、個々のメンバーも成長することができます。問題に直面した際には、それをポジティブに捉え、組織や個人の成長に繋げる姿勢が求められます。

職場での役割と貢献

 岸良氏が触れる「自分がいたら助かる」という部分を見つけることの重要性は、個人が職場でどのようにして価値を提供できるかを考えることに他なりません。自分自身が組織内でどのように貢献できるかを常に考え、積極的にその役割を果たすことが、個人のキャリア成長にも、組織の発展にも寄与します。このような積極的な姿勢は、新しい機会を生み出し、組織内での自分の位置づけを高めることに繋がります。

まとめ

 組織や個人が直面する問題に対して「人のせいにする」という最も非生産的な考え方を避け、問題を改善のチャンスと捉えることが、組織の持続的な成長と個人のキャリア発展に不可欠です。人事の立場から、このような文化を育成し、維持することは、組織全体の成功に向けて極めて重要です。個々人が自己責任を持ち、積極的に行動することで、組織は常に前進し、進化し続けることができます。このような環境を作り出すことは、人事の重要な役割の一つであり、組織の持続的な成功への道を切り開く鍵となるでしょう。

チームが個人の責任感と積極的な成長に焦点を当てて解決策を話し合っている建設的な会議の様子を表しています。部屋は光で満たされ、楽観主義と協力的な精神を体現しています。壁には自己反省、責任感、そして誰もが意味のある貢献をできるという信念を強調するモチベーショナルポスターが掲げられています。さまざまな役割を持つプロフェッショナルなグループが、相互尊重と持続的な改善を目指す文化を示しながら、対話に積極的に参加しています。スタイルは柔らかく、温かみがあり、生産的でサポート性の高い職場の本質を捉えています。


1日1話、読めば思わず目頭が熱くなる感動ストーリーが、365篇収録されています。仕事にはもちろんですが、人生にもいろいろな気づきを与えてくれます。素晴らしい書籍です。




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