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Vita Sexualis(性の目覚め) @Detective boy(少年探偵)

Episode α  父と母の謎

 良雄くんが10歳のお誕生日を終えた日のことでした。
良雄くんはお父様とお母様に、10歳の誕生日を祝ってもらい、
初めて本格的な「地球儀」というものをプレゼントされたのです。

  良雄くんは、うれしくってたまらず、
しばらくそれを眺めて過ごしていたのです。
良雄くんの夢は、いつしか「兼高かおる」さんのような、
いつも飛行機に乗れて、
世界中を旅してそこの紀行を紹介するというお仕事に就くことでした。
ですから、無理もありません。

 あまりにも夢中になっていましたので、
すっかり夜も更けてしまっても、自分のお部屋の机の上においた、
プレゼントの地球儀を飽きることなく眺めていました。

 いつまでも寝ずに夢中になっていた良雄くんは、
とうとうお母様に叱られてしまいました。

「良雄さん!いつまで起きてるの?あまり夜更かししていると、
鬼が出てきますよ。」

それは大変です。良雄くんはすぐさまお部屋のベッドに潜り込みました。

「さあ、電灯を消しますから、すぐにお休みなさいね。」

お母様はそう言って、良雄くんの部屋の電灯のスイッチを切ったのです。

真っ暗になりました。ですが、鬼が来てはたまったものではありません、
良雄くんは布団をかぶって、ひたすら目をつむり、
鬼が出ないうちに眠りにつこうと一生懸命頑張ったのです。

 でも、そういうときって、なかなか眠れないものです。
良雄くんは、鬼が怖いので目をつむって
一生懸命羊を数えることにしました。

・・・羊がいっぴき・・にひき・・・

 だけど、眠られません・・・。どれくらい時間がたったでしょう。

寝静まったはずの向こうのお部屋から、
妙な物音とうめき声が聞こえるのです。
そして、時折悲鳴のような声も聞こえてくるのです。

・・・鬼が来たのか・・・?

良雄くんは、とっさにそう思いました。
なんせ、初めて聞く物音や声です。
しかも、両親のお部屋から聞こえてくるのです。
もしや、お父様やお母様が鬼に食べられているのかも知れません・・。

時折激しい息づかいが聞こえたと思ったら、
大きな叫び声のようなものが聞こえてくるのです。

 良雄くんは怖くてたまりませんでした。

 明日になったら、ひょっとしたら、
隣の部屋は凄惨な殺人事件の現場に
なっているんじゃないだろうか・・・。
 
良雄くんは探偵小説も好きでした、
特に明智小五郎やシャーロックホームズ。
明智小五郎の助手の「小林少年」は小林芳雄という名前でしたので、
とても親近感があったのです。

 「ただごとではないぞ・・」

良雄くんは、様子を見ようとは思いましたが、
それよりも「怖さ」が先に立ってしまって、
どうしようもありませんでした。

小一時間ほどその物音はつづきましたが、
やがて静かにになり、お父様のいびきが聞こえてきましたので、
ああ、鬼はどこかに行ってしまったのかな。
と、そんなことを思いつつ、
明日の朝には凄惨な事になっているかも知れないと、
なんとなく怖い思いをしながら、
良雄くんはいつしか寝入ってしまったのです。

翌朝、、良雄くんはお母様の声で目が覚めました。
いつものやさしいお母様です。

なぁんだ、昨夜鬼に食べられていたのは、お母様じゃぁなかったんだ。
居間に行くとお父様もいつものように座っていましたので、
昨夜の物音は、おそらく別の次元のできごとか、
良雄くんが夢でも見ていたのだろうと思いました。

でも、夢にしてはものすごく現実的でした。
良雄くんにとっては、とても納得は出来ませんでした。
学校に行くと、良雄くんは、クラスのお友達に、
昨夜の自分のような物音を聞いたことがないか尋ねてみました。

すると、かなりの数のお友達が、
良雄くんと同じような声を聞いたり、
物音を聞いたりしたと言うことがわかったのです。
しかも、それは決まって、
お父様やお母様の寝ているお部屋から聞こえたり、
時々、お兄様やお姉様のお部屋から聞こえることもあったというのです。

 良雄くんの「少年探偵」の血が騒ぎました。


良雄くんが調べてみると、その物音が聞こえるのは、
決まって土曜日の夜が多いことに気づきました。
決まって、土曜の夜とか、
お父様が酔っ払って帰ってきた日に物音がしました。
その度に悲鳴のような声が聞こえてくるのです。

 お友達に聞き込みをしたところ、同じような結果が得られました。
お姉様を調査したお友達は
理由もなくひっぱたかれたと教えてくれました。

 見つかるとひっぱたかれるかも知れない、危険な調査なんだな。
良雄くんは、チョットした覚悟で、
「土曜日の夜」の調査を突っ込んですることにしました。

そして、わかったのでした。
土曜の夜には、お父様とお母様は、
決まって「レスリング」をしていたのです。

それも、ユニフォームも着けずに裸でです。

観察するとお母様がフォールしたり、
お父様がバックをとったり、さらにはフォールしたりと、
まるで乱取り練習のようでした。

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「イク!」というのが「参った」の合図なのだということは、
その言葉で対戦が終わるからです。

良雄くんは、その理由を、いつか確かめようと心に決めました。


To be CONTINUE

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