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AT1債は株と債券のハイブリッド証券

AT1債は株と債券のハイブリッド証券

今回はAT1債についてお伝えします。
聞きなれないこの言葉ですが、正直なところ、3月の私もクレディ・スイスの破綻危機が報じられるまで、聞いたことがありませんでした。
ですので、一緒に学んでいけたらと思います。

AT1債とは

まず、AT1債は、「Additional Tier 1債券」の略で、株式と債券の中間の性質を持ったハイブリッド証券の1つです。
別名「永久劣後債」といいます。
Tier1とは「中核的自己資本」という意味で、AT1債は国際的な資本規制で、資本とみなしてもよいということになっています。
欧州の大手行では、「普通株等自己資本(CET1)」に対するAT1債の比率は10~30%で、クレディ・スイスを救済買収したUBSは28%ほどといわれています。

前述の「劣後債」とは、他の一般社債などに比べて元本と利息の支払いが後回しにされてしまう社債のことを指して、こう呼ばれます。
例えば、今回のようにクレディ・スイスが破綻しかけた時や、実際に企業が破綻してしまった時、企業の残余財産はまず一般無担保社債や優先社債(シニア債)が先に支払われます。
その後に、劣後債(AT1債)に残余財産が支払われます。

AT1債の実情

ところで破綻時にお金が戻る順位というものがあり、上から「預金」、「普通社債」、「劣後債」、「AT1債」、「株式」となります。
つまり、他の劣後債よりは下だけど、株式よりもお金が戻る順番が上なのがAT1債なのです。
ちなみに、金利はこの逆で、株式が一番高く、預金が一番低いということになります。
ここでは余談になりますが、預金ではお金は増えないということですね。

で、今回何が問題になったかというと、破綻危機に陥ったクレディ・スイスが発行したAT1債総額約160億スイスフラン(約2.4兆円)の価値を「ゼロ」にするとスイス政府が発表したことです。
文字通りゼロです。
クレディの株価はゼロにはなっていないのに、その上の順位のAT1債がゼロになってしまったことにより、「どうなっているんだ!?」と金融市場に激震が走りました。
破綻が確定になったわけでもないのに、株より先にAT1債が無価値になってしまったのが、今回の「クレディショック」でありました。
おそらくスイス政府がそう決めていたのではないかと考えられます。

日本のAT1債

日本の個人投資家も、クレディ発行のAT1債を保有しており、その額950億円分です。

このAT1債は、日本でも発行されており、日本3大メガバンクで約3.6兆円は発行されています。
ちなみにわが国では、株式が無価値にならない限り、金融機関は実質破綻したとみなされません。
つまり先に無価値になるのは株式ということになります。

AT1債の元本を削減する条件としては、金融機関の実質破綻がありますが、日本の場合は、自己資本が回復すればAT1債の元本も戻るという特約をつけるケースもあるということで、国によってルールは違います。

ということで今回は、昨日に続くゴールデンウィーク企画第2弾として、ニュースの疑問「AT1債」についてお伝えしました。
それでは、また。
Have a Good GW!

5/4付 日本経済新聞 「株式より損、市場戸惑う」参照
#経済 #投資 #株式投資 #投資信託

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