目は口ほどにものをいう

「視線」というのはよく曲のタイトルや歌詞の中にも出てくる言葉だ。

僕は今「だいじょうぶ、父さんも生まれたて」という育児ノートを連載しているのだけれど、抱っこ紐やおんぶについて考え(過ぎ)ていた中で偶然出会った「共視論」という本を読んだことで、人間の目というのは動物の中では極めて特徴的な進化をしたものであるという説を知った。そしてこの本の編者は北山修さんという精神科医であり、誰もが知る名曲「あの素晴らしい愛をもう一度」「さらば恋人」などの作者でもあるミュージシャンだ。

動物の目は自分の視線をなるべく探られないように進化しているそうだ。なぜなら競合する相手や自分を狙う天敵に視線を悟られてしまうと、自分が見つけた食糧を横取りされたり、もしくは自分が捕まえられて食べられてしまうリスクが高いからだ。これは動物としては当然の進化だと考えられる。しかし、人間だけは黒目に対する白目の割合が多く、視線や目の動きが他者に非常にわかりやすいように進化している。これはそのリスクよりも「視線」によってコミュニケーションをとることのメリットを優先した結果ではないか、という考え方だ。

人間はお互いに目と目でコミュニケーションをとることによって、気持ちを伝えることが出来る生き物なのだ。たまに動物みたいな人もいて、人の見つけたものを横取りしたり、隙を見て悪さをしたりするけれど、それはあまり前向きに進化した人間の姿とは言えないのかもしれない。

視線で語る、という表現では、「目と目で通じ合う そういう仲になりたいわ」と、工藤静香さんが歌った「MUGO・ん...色っぽい」などは僕たちの世代にはその代表選手みたいなものだろう。女の子が(色っぽいことだから)言葉に出来ない気持ちを目で伝えたい、という思いを表現したこの曲の作者は中島みゆきさんで、さすがとしか言いようがない。

そのことを知って、自分の作った曲の中にも無意識に「視線」というもので表現をしている曲があるのではないか、と思いを巡らせてみると、「大事なこと」という曲の中にそういう部分がある事に気がついた。

大事なこと

今は自分でも調べないとわからない諸々の都合でリリースした音源は配信されていないのだけれど、この曲の入っているミニアルバム「winter」のデモバージョンと書いてある音源を見つけた。青山の外れにあった事務所の小さなスタジオで制作したもので。ほぼアレンジはそのまま。メンバーはドラムス棚沢雅樹さん、ベースは小山晃一くん、その他、ギター、ボーカル、録音、ミックスまで全て自分でやったものだと思うが、この頃の自分は本番とほぼ変わらない状態までアレンジを詰めてデモを作り、それを元にしてレコーディングしていた記憶がある。実際他の曲のテイクやミックスなどかなり違うものもあるが、よくここまでやっていたものだと自分で感心する。寸分違わぬ演奏をしてくれたミュージシャンに心から感謝している。別バージョンなどが他にもあるので、こんなコラムと合わせて聴いてもらえる機会があればと思う。

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