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【映画ベスト10】2019年新作映画ベスト10

 2019年に公開され、映画館で鑑賞した映画から渾身の力をこめて選出し、自信を持ってお勧めするベスト10です。

 2019年を振り返って、まず取り上げたいのは『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』だ。ユン・ジョンビン監督の作品を観たのは初めてであるが、観る者を圧倒する傑作だ。大胆かつ細かいカット割が、スパイ映画としての強度を揺るぎないものにしている。ラストシーンの感動的な切り返しショットまでこの男たちの行く末を見届けてほしい。
 『ワイルドツアー』は三宅唱がインディペンデントなスピリッツを存分に発揮した、瑞々しくも、文字どおりの青い春が溢れる青春映画の傑作だ。迸る生のフローを自らの片腕を掴むことで何とか制御しようする告白シーンは必見だ!
 『火口のふたり』は脚本家荒井晴彦の3作品目にして最高傑作だ。モノクロ写真のアルバムがめくられて行く場面が、タイトルバックとなり、そこに、伊東ゆかりの歌声が流れてくる冒頭から引きこまれる。ここにも互いの身体を駆使した迸る生のフローを認めることができる。
 『運び屋』は御年88歳のクリント・イーストウッドの10年ぶりの監督・主演作品であり、スクリーンに映る彼の軽やかな足取りと歌声を聞くだけでも、一見の価値がある。もちろん、一級のエンターメント作品に仕上がっている。
 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は歴史的な事件を舞台に借りながらも、ブラピの周辺には常に不穏な空気が流れ、ディカプリオがクレイジーなオーラを醸し出す、タランティーノの作家性がしっかりと叩き込まれた超娯楽作だ。『デス・プルーフ』もそうだったが、タランティーノは女性の足の裏を撮るのが本当に好きなようだ(笑)。
 『半世界』は阪本順治が相変わらずの安定感を発揮し、世界と拮抗しながら生きる人々の生活を丹念に描ききった秀作だ。役者たちの顔には、実人生の年輪が刻み込まれている。
 『アマンダと僕』はフランスの新鋭ミカエル・アースの新作だ。エルヴィス・プレスリーの曲で母子が楽しそうに踊る素晴らしい場面は観る者にも至福の時間をもたらしてくれる。テロ事件によりランドスケープが一転しながらも、パリの街を歩き、自転車で駆けめくり、泣き笑う「アマンダと僕」に魅了された。
 『ハロウィン』はジョン・カーペンターの伝説的な同名作をデヴィッド・ゴードン・グリーンが40年ぶりにリバイバルさせた、正当な続編だ。ブギーマンのモンスターぶりを不穏で滑らかなキャメラワークが凄まじいまでに引き立たせてくれる。
 『マリッジ・ストーリー』は、近年益々目が離せなっているノア・バームバックの会心の1作だ。スカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバーの非対称性が冒頭から際立つが、彼らの清く正しい生き方がこの映画の輝きを担保してくれる。
 『帰れない二人』は、ジャ・ジャンクーの近年最高の1本。帰れない二人はそれでも帰ろうとする。喧噪の中、チャオ・タオがピストルを夜空にぶっ放すシーンがとてつもなくクールだ!

1.工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男 (ユン・ジョンビン/2018)

2.ワイルドツアー(三宅唱/2018)

3.火口のふたり(荒井晴彦/2019)

4.運び屋(The Mule クリント・イーストウッド/2018)

5.ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(Once Upon a Time...in Hollywood クエンティン・タランティーノ/2019)

6.半世界(阪本順治/2019)

7.アマンダと僕(Amanda ミカエル・アース/2018)

8.ハロウィン(Halloween デビッド・ゴードン・グリーン/2018)

9.マリッジ・ストーリー(ノア・バームバック/2019)

10.帰れない二人(江湖儿女 Ash Is Purest White ジャ・ジャンクー/2018)

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