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ミリしら物理探査#12 順解析と逆解析

 物理的な現象(物理モデル)は複雑ですが、適切な仮定を設定すると、比較的きれいな数理モデルに落とし込むことができます。多くの場合、この数理モデルは微分方程式偏微分方程式になります。

 この微分方程式/偏微分方程式を、解析的に解けるのは、簡単なモデルに限定されます。「解析的に解ける」というのは、「数式で表せる」ということと同義です。解析的に解ける問題も重要ですが、もっと重要なのは解析的に解けない複雑な問題です。

 解析的に解けない数理モデルは、数値的に解く必要があります。これが、順解析またはシミュレーションと呼ばれます。数理モデルがわかっていて、境界条件や初期条件が与えられると、数値シミュレーションの技法を使って、数値的に解くことができます。このときに使われるメジャーな方法が、有限差分法(FDM) 、有限要素法(FEM)、境界要素法(BEM)などになります。

 有限差分法や有限要素法が、数値計算界の二大巨頭ですが、これらの方法も開発当初と比較にならないほど進化しています。有限差分法は、直交する格子に分割する必要があったため、複雑な形状のモデルが苦手でしたが、今では曲線状の境界が扱える有限差分法があります。また、有限要素法の計算では、要素分割が計算精度に大きく影響しますが、最近では要素分割を自動で行うような有限要素法も使われています。

 数理モデルが決まると、その数理モデルの理想的なデータがただ一つだけ決まります。離散化の程度による計算精度の差異はありますが、モデルが決まれば計算値はただ一つに決まります。これが、モデルからデータへの変換である順解析/シミュレーションです。

 しかし物理探査の究極の目的は、観測データから、未知の地下構造を推定すること、つまりデータからモデルへの変換です。この変換のことを逆解析またはインバージョンと言います。このインバージョンが曲者です。というのは、データからモデルへの変換は、一通りではないからです。実は、データからモデルへの変換は無数にあります。つまり、インバージョンでは無数の解の候補から、最適な解を選ばないといけません。これがインバージョンの難しさです。

 インバージョンの基本は最小二乗法ですが、最小二乗法を使わない発見的な方法(メタヒューリスティクス)もあります。遺伝的アルゴリズムや焼きなまし法は、この発見的な方法です。最近では、生物の群知能を模擬した粒子群最適化という手法も使われています。

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