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ピンチピンチ、チャンスチャンス、ラン、ラン、ラン♪

今日は、コーチングやNLPで使われるテクニックのひとつ、
リフレーミング(Reframing)についてのお話です。

~ リフレーミングとは? ~

タイトルは、みなさんよくご存じの大正時代から歌われている代表的な童謡、あめふり(♪雨あめ降れふれ母さんが~♪)の最後の歌詞を替え歌にしたものです。

ビジネスの状況が上手くいっていない時、トラブルに巻き込まれた時、よく頭の中で歌っていました(笑)

リフレーミングとは、単なる「前向き思考」とは違います。
「前向きに行こうよ!」
「前向きに考えないと!」
等、激励の言葉としてよく使われます。
これ自体、決して無意味なことではないのですが、リフレーミングとは目的が少し異なるものです。

コーチング技術の中に、「クライアントの視点を変える」というものがあります。問いかけによって、クライアントが見ている視点について、

  • 視点の移動 ⇒ 別の角度から見てみる、他人の視点で見てみる

  • 視点の拡大・縮小 ⇒ より大きく俯瞰してみる、詳細に拘ってみる

  • 視点の時間の変化 ⇒ 過去を振り返ってみる、未来からの視点で今を見てみる

等を起こし、新たな発見やヒントを促すものです。

この視点を変えるために、あるイメージや体験の枠組みを新しくする、あるいは変えるのが、リフレーミングです。
心理学的に言えば、
「異なる枠組みや状況(コンテクスト)を当てはめることで、
それまでの物事の見方や視点変える」という意味になります。

~ かじったリンゴがどう見えるか ~

ある状況の見方を「枠組みを変える」ことによって変化させることができる。と、言うより自然と見方に変化が起きてしまう一例として、
以下の様な例があげられます。

ここに一口かじった、食べかけのリンゴがあるとイメージしてみてください。

それが、ダイニングテーブルに置かれている姿(フレーム)を見れば
「誰かが食べかけたリンゴ」

それが、レストランの裏のポリバケツの中にあれば、
「残飯となって廃棄されるリンゴ」

綺麗なクリスタルガラスのキューブの中に鎮座し、美術館に展示されていたら、
「新進気鋭芸術家の作品」

シリコンバレーのIT企業の受付に置かれていたら
「会社のシンボル」

いかがでしょうか?

~ 出来事をどう解釈するか ~

視点の対象は、もちろんリンゴの様な単純なものではありません。
日々の生活、人生の中で遭遇する様々な出来事です。

同じ出来事でも、自らの認識や状況によってその解釈が変わります。
出来事そのものは、事実としてそこに存在するだけであって、良いとか悪いとかの差はなく、それに意味付けをしているのは「人間」だからです。

例えば、「高い確率で大雨が降るという予報」は、日照り続きに悩む農家の人達や、週末の会社行事に参加したくない人達にとって、正に朗報でしょう。

一方、仲間とのゴルフを楽しみにしていた人達、週末に家族でバーベキューを計画していた人達にとって心配で落ち着かないニュースになります。

そこで、タイトルの童謡替え歌です。
♪ピンチ、ピンチ、チャンス、チャンス、ラン、ラン、ラン♪

ピンチをチャンスに変える、ってよく聞かれるフレーズですが、
正にリフレームを起こそうという、応援歌ですね。

私のキャリアは全てIT業界なのですが、昔、営業部長が放った暴論とも言える訓示は、
「トラブルの無いシステムなど世の中には無い!トラブルを理由にして、売れない、というなら、営業など辞めてしまえ!」というものです。

しかし、リフレーミング観点では、的を射た発言です。

例えば・・・・
《出来事の事実》
システム納入時に初期トラブルが多発。エンジニアも営業も総出で現場に張り付いてバグ修復作業、スケジュール立て直しに尽力し、全体のコントロールと逐一状況報告し、客先の信頼回復に全力を尽くした。

《ある視点(リフレーミング前)》
エンジニア、営業とも現場に張り付いたメンバーは疲労困憊。
想定外のコスト発生で、プロジェクトが赤字化することは必至。

《別の視点(リフレーミング ー1)》
一緒に現場に張り付いた客先の担当者と、毎日夜遅くまで同じ時間を過ごし、親密になった。
トラブル原因の一部は客先にあることも認識頂いているので、この総力を挙げての対応に感謝の言葉と頂いた。

《別の視点(リフレーミング ー2)》
このトラブル対応のリーダーに任命したA君が発揮したリーダーシップは期待以上のものだった。ひとりの若手リーダーを発掘する機会となった。

という実例がありました。

つまり、
リフレーミング ー1は、お客様との関係性観点で
リフレーミング ー2は、人材育成の観点で、
視点の変化を起こし、
この「システム納入時のトラブル」という出来事に対して、新たな価値が生み出されたということになります。

~ ひと言リフレーミングの効果 ~

リフレーミングのきっかけを短い言葉によって起こすのが、「ひと言リフレーミング」です。
これは、コーチがクライアントとの会話中(コーチングセッション)に使うものですが、あるアイデアや概念を別の言葉で表現することによって、その概念に異なる視点をもたらすことです。

例えば、「頑固である」という概念は、
⇒ 責任感が強い、信頼できる、と、ひと言リフレーミングすることができます。
同様に、
「ケチな」 ⇒ 質素な、倹約意識が高い。
「気が弱い」 ⇒ 心が優しい、慎重だ。

と一言リフレーミングできます。

これは、必ずしもネガティブな概念をポジティブなものにすることが
目的ではなく、異なる視点を生み出すヒントになることが目的ですので、
「礼儀正しい」 ⇒ 妥協的な、慇懃(いんぎん)な。
「友好的な」 ⇒ 無警戒な、八方美人な。
と、プラスの概念からマイナス概念に変化させることも状況に応じて有りうるでしょう。

そして、ひと言リフレーミングは、異なる視点を生み出すことで、過去の経験によって醸成された制約や限界から人を解放してくれます。

コーチングでは、クライアントが自らが作り出した自分の限界や制約を
話す時、そのキーワードを拾って、ひと言リフレーミングすることで、
別の視点を提供することを試みます。

例えば・・・
クライアント ⇒ 「私が一歩踏み出せないのは、他人に批判されるが怖いからだ。」
『批判』を『フィードバック』にリフレーミングして、
コーチ ⇒ 「フィードバックには何らかの価値が含まれているものです。」

クライアント ⇒ 「私が一歩踏み出せないのは、何かを失うことが心配だから。」
失う』を『これまでのものを手放す』にリフレーミングして、
コーチ ⇒ これまでのものを手放すことで、はじめて変化が起きることもありますね。

という対話になります。

~ 魔法の特効薬ではありませんが・・・ ~

リフレーミングが働いたからといって、特効薬の様にその人が急に自信を取り戻すとか、速攻でエネルギーが満たされるとか、行動が劇的に急変するわけではありません。
少なくとも私のコーチングセッションでは、そんな魔法の瞬間は起きていません。(クライアントの表情が変わることはありますが)

しかし、人は毎日毎日、自分の考えや行動に自分自身で問いかけています。
その問いかけの言葉を別の表現に変えることが、今まで気づかなかった自分の価値の発見、願望の発見、リソースの発見、などにつながるヒントとなれば、コーチングの効果は発揮されたと言っていいでしょう。

「あ~、失敗しちゃったよ。こんなことじゃダメだなぁ。」という独り言は、失敗した自分を、ダメという言葉と共に無意識の中に焼き付ける働きしかありません。
そうではなく、「またひとつ学んだな。 同じことは繰り返さないぞ」 と、「失敗」を「学び」とリフレーミングする習慣を身につけていれば、長い目でみればその人の人生、気持ち、人間関係は豊かなものになるのではないかと思うのです。

安藤秀樹
株式会社ドリームパイプライン代表

公式ホームページ: https://dreampipeline.com
お問い合わせ先: hideki.ando@dreampl.com

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