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CASE.02庭と暮らす家

第2第4土曜日に更新しています。『上田英和の住宅設計note』

このnoteは、今まで設計してきた住宅がどのようなストーリーで出来上がったのかを、設計士としての独自の視点で書いていく企画です。

写真とスケッチを元に、設計した当時にどのような思考でつくっていったかを振り返りながら、お届けしていけたらと思います。

主に、お施主さんのご要望から導き出すコンセプトや、こだわりのポイント、周辺環境との関係から生まれる住空間をどのように考えたかについて書いていきます。

第2回目は庭と暮らす家について書きたいと思います。


敷地条件:田畑に囲まれた周辺環境

まず敷地の周辺環境から説明すると、西面道路で、あとの3方は田畑に囲まれた非常にのどかな環境の中にある敷地です。

母屋が敷地の東奥に建っていて、その手前にあるスペースに新たに住宅を新築する計画でした。


ご要望:家庭菜園を楽しみたい

お施主さんのご要望はこの4つでした。

・家庭菜園を楽しみたい
・薪ストーブでピザを焼きたい
・お友達を読んでパーティもしたい
・落ち着いた環境で好きな読書を楽しみたい

プランを考えるのも楽しくなるようなご要望で、ワクワクしながら図面を描いたことを覚えています。

プランニング:3つのレイヤーをつなげる

この4つのご要望を聞いて、まず考えたことが、外部、内外部、内部と3種類のレイヤーに分けてゾーニングすることです。

家庭菜園をするお庭を外部、そこから汚れたままでもサッと上がれ、取れたての野菜ですぐ調理ができる場所としての内外部、ゆっくりと過ごせる落ち着いた場所としての内部の3つで構成することを考えました。


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3つにゾーニングを明確に分けることによって、空間にメリハリがつきます。

さらに、境界を曖昧(開放すれば繋がる)にしていますので、一体感も生まれ、面積以上の広がりも感じますし、多様な暮らし方に対応できる住空間を作ることができます。

さらに、2階は内部空間からアクセスできますが、空間的には内外部空間と繋がっていて、冬は薪ストーブの暖かさを2階にも届けることができるようにしました。

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庭と繋がる暮らし

さて、ゾーニングと大きな構成が固まったところで、ご要望に対する僕の回答を書いていきたいと思います。

まず・家庭菜園を楽しみたい・薪ストーブでピザを焼きたいについてです。

この2つのご要望を合わせて考えると、すごく楽しそうですよね。

つまり、家庭菜園で取れた野菜をすぐ調理して、薪ストーブでピザを作るです。この暮らしを生み出す為に考えたのが、土間キッチン&ダイニングです。そう、昔のおばあちゃんの家(古民家)などにあったあの土間空間です。少々汚れても気にせず使える土間の床のキッチンとダイニングに薪ストーブを入れて作りました。

庭にむけて大きな開口部を設けたので、開け放てば、庭と繋がり、家庭菜園をしながら、家族やお友達と過ごせる空間になってます。

次に、・お友達を読んでパーティもしたい・落ち着いた環境で好きな読書を楽しみたいの2つについても考えてみたいと思います。これは、パーティというパブリックスペースと、落ち着いた環境で読書というプライベートスペースのお話なので、いきなりごちゃ混ぜにすることはできないので、ちょっと丁寧にいきます。

まず、パーティをする場所として、土間キッチン+土間ダイニング+リビングと考え、落ち着いて読書をする場所として、リビングを設定します。

そう考えると、時にはお友達とパーティに使え、またある時は落ち着いて読書ができるようなリビングを考える必要がありそうです。

つまり、土間スペース(ダイニングキッチン)とリビングの関係を工夫することによって、パブリックとプライベートをシチュエーションによって変化させる仕掛けをどうするか。

で、考えたのが、次の2つです。

・土間スペースとリビングの床の高さと床の仕上げを変えること

・開放すれば一体となる引き戸を設置すること

まず、床の高さを変えることで、空間としては、別の空間の認識になります。さらに、リビングを土間スペースより床を高くし、床の素材を無垢の木の床にすることで、リビングに入る為には、靴を脱ぐという行為がワンクッションあるので、それだけでプライベート感が生まれます。

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近所の人や配達に来た人が玄関から中には入らないですよね。
それは、靴を脱いで入ることって日本人の生活様式からしてもパブリックからプライベートに入るって認識なんです。

その日本人特有の感覚を利用することで、土間スペースとリビングに目に見えない境界みたいなものを作りました。

さらに、引き戸を閉めれば完全なプライベート空間になり、開放することで、空間としては土間スペースとリビングが一体となるように考えました。

開け放つことで、リビングをパブリック空間に近づけるのです。

ここで、近づけると書いたのは、完全なパブリック空間にするのではないという意味です。さっき書いた日本人特有のあの感覚をさらに利用してみました。

どういうことかというと、家にお客さんが来た時に、玄関先で靴を脱がずにちょっと腰掛けて話すこともありますよね。あの感じです。腰掛けてちょうどいい高さにリビングの床を上げていますので、リビングの中にまでは入らず、腰掛けて使うことができます。全ての引き戸を開放すれば、それなりの人数は座ることができます。

こうして、友達を読んでパーティもでき、落ち着いて読書もできるLDK空間を作りあげたのでした。

庭と暮らす家で考えたこと

最後に整理すると、家庭菜園を楽しめる『庭と暮らす家』を設計する際に考えたポイントは次の3つでした。

・庭との一体感や繋がりを生む為の土間キッチン&ダイニング
・パブリックとプライベートをうまく変化させる段差と仕上げと引き戸
・庭を含めた暮らしの場を外部、内外部、内部の3つに分けてゾーニングし、それぞれの境界を操作すること



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最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。

次回は、6月13日土曜日に更新予定です。

お楽しみに!!



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